5 航空の一層の活性化のために


(1) 3大空港プロジェクト関連施設整備について

 (航空企業の収支構造の悪化に備えて)
  現在,我が国においては,航空輸送の抜本的拡充に対する国民の緊急の要望に応えるため,3大空港プロジェクトが同時並行的に進められているところであるが,その推進に当たっては,空港基幹施設の着実な整備のみならず完成後の3大空港が十分にその機能を発揮しうるよう格納庫,整備工場,貨物上屋等航空企業の関連施設が円滑に整備されることが不可欠である。
  このような関連施設の整備を図るためには,航空企業において今後数年間に約3,000億円もの設備投資が必要となる上,このような一時的かつ巨額な設備投資は,その後において減価償却費負担,金利負担等の急増を招き,航空企業の収支構造は急速に悪化することとなる。この結果,これらの設備投資は航空企業の安定的な経営を著しく害することとなり,航空運賃の上昇等サービスの悪化をもたらしかねない。したがって,運輸省としても,3大空港プロジェクトの公共性にもかんがみ,航空企業においてはこのような今後の負担の増大及び収支構造の悪化に備えて積極的に経費の削減,財務体質の改善等に努め,3大空港プロジェクトの円滑な推進とその完成後における航空企業の経営の安定及び航空輸送サービスの維持を図ることが,利用者利便の確保の観点からも必要であると考えている。

(2) 航空企業の経営体質強化のために

 (将来のし烈な競争時代の到来に備えて)

 (ア) 円高に伴う国際競争力の低下

      我が国航空企業と米国系航空企業との間においては,業務効率化の側面では既に格差を生じているが,円高・ドル安の傾向が今後さらに進行し,しかも定着する場合には,一般に我が国企業と外国企業との間における国際競争力(コスト競争力)に影響を与える要因となるものであり,航空事業の分野においては,現在の我が国企業と外国企業との間における国際競争力(コスト競争力)の格差は一層拡大することとなる。

 (イ) 空港制約の解消とその影響

      新東京国際空港の概成や関西国際空港の開港は,我が国発着の国際航空輸送力を飛躍的に増大させることとなるが,これに伴う外国航空企業の輸送力の拡大は,我が国企業を外国企業との厳しい競争下に置くこととなり,既に述べたような企業体質の格差を顕在化させるものと考えられる。
      また,国内航空の分野においても,羽田空港の沖合展開工事の完成や関西国際空港の開港は,我が国国内航空輸送について輸送力の制約を解消し,輸送力の大幅な拡大をもたらすこととなるが,このことは,ダブルトラック化及びトリプルトラック化の一層の推進を促すとともに,国内航空輸送分野において我が国航空企業間に一層の競争を強いることなる。

 (ウ) 経営体質の強化の必要性

      今後の航空事業をとりまく経営環境について以上に述べたような認識に立つならば,我が国航空企業は国際輸送の分野においては外国航空企業との厳しい競争下に置かれ,同時に国内輸送の分野においては他の我が国航空企業との一層の競争を強いられることとなる。この結果,採算性の高い路線においても,座席利用率の低下等に起因して収益性の低下が生じることが予想され,その場合には,採算性の低い路線の維持が問題となるおそれもある。
      また,航空企業は,昨今の円高・原油安による燃油費等の軽減に支えられて経営の維持を図ってきているが,今後はこのようなコストダウンのメリットは期待できない状況にある。
      以上のような状況下で経営の安定化を図っていくためには,我が国航空企業全体を通じて一層の,あるいは根本的な経営体質の強化を図っていくことが不可欠である。また,このことによって,我が国航空交通ネットワークの維持・発展が図られ,将来における利用者利便の一層の向上のための基盤整備が図られることとなるものである。
      このため,航空企業においては,安全の確保を基本としつつ,財務体質改善等によるコストの改善を図るとともに,関連事業の積極的な展開,創意工夫を凝らしたサービスの提供等を通じた需要の喚起を図ることにより,経営の効率化と活性化を積極的に進めていく必要がある。


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