2 基幹空港の整備


(1) 関西国際空港の整備

 (ア) 空港建設の進捗状況

      現在の大阪国際空港は,我が国の国際及び国内航空ネットワークの2大拠点の一つを形成しているにもかかわらず,環境対策上の配慮から離着陸回数の制限など多くの制約を受けているため,我が国の航空輸送の面で大きなボトルネックとなっている。このような状況に適切に対応するため,関西国際空港の早期開港が望まれている。
      59年10月に設立された関西国際空港株式会社は,62年1月,空港建設工事に着手し,空港島及び空港連絡橋の工事を行っており,また,ターミナルビル等の空港諸施設については基本計画の策定作業等を進めている。

 (イ) 空港計画の概要

      関西国際空港は,大阪湾南東部の泉州沖の海上(陸岸からの距離約5kmの沖合)に設置される我が国初の本格的な24時間運用可能な国際空港であり,全体構想を踏まえて段階的に整備を図ることとし,第1期計画の建設を進めている 〔6−2−2表〕

 (ウ) 関西国際空港関連施設の整備

      関西国際空港の立地に伴い必要となる道路,鉄道等の関連施設の整備については,60年12月の関西国際空港関係閣僚会議において決定された関西国際空港関連施設整備大綱に基づき,関係省庁,関係地方公共団体等と十分連絡・調整を図り,空港建設の進捗状況に対応して計画的に進めることとしている 〔6−2−3図〕

      空港関連鉄道(仮称)については,JR阪和線日根野駅から空港間は関西国際空港(株)が,南海本線泉佐野駅から空港対岸間は南海電鉄(株)がそれぞれ建設を行い,日根野駅から空港間は西日本旅客鉄道(株)が,泉佐野駅から空港間は南海電鉄(株)がそれぞれ運営を行うこととし,62年12月,各社に免許を行った。

 (エ) 今後の進め方

      護岸の概成する63年末に埋立工事を開始し,埋立工事が完了した地区から順次ターミナルビル等の空港諸施設の整備を進める。また,63年度から,全体構想について検討するための基礎調査を実施している。
      関西国際空港の建設及び運営に際しては,民間活力を導入した特殊法人たる株式会社として創意工夫を凝らすとともに,環境保全に十分留意し,地元の理解と協力を得つつ進めていくこととしている。

(2) 新東京国際空港の早期完成

 (ア) 現況

      新東京国際空港は,53年5月に当初計画(滑走路3本,面積1,065ha)の約半分の用地550haに,4,000m滑走路1本及び第一旅客ターミナルビル等の付帯設備で開港し,63年で満10周年を迎えた。
      この10年間に航空需要は大幅に増加し,63年3月19日には,開港以来の利用客数が1億人を突破した。特に,日本経済の国際化や円高による海外旅行ブームを背景に,最近,著しい増加傾向がみられ,昭和62年度には年間1,505万人の航空旅客が利用し,年間106万トンの航空貨物が取り扱われるなど,まさに我が国の表玄関としての役割を果たしている。
      また,国際航空の利用客数でも世界第8位,取扱貨物量は61年にニューヨーク・ケネディ空港を抜いて世界第1位になる等,世界の国際航空路の一大拠点として定着している。

 (イ) 早期完成の必要性

      新東京国際空港の現供用施設は相当の混雑を呈している。特に,旅客ターミナルビルについては,増改築等による混雑緩和対策を重ねてきたにもかかわらず,既に旅客数は適正処理容量を大きくオーバーし,滑走路も62年度における発着回数は9万5,000回であり需要予測を上回る伸びを示しており,処理能力の限界に近づきつつある。
      しかしながら,一方では現在新東京国際空港に乗り入れている35か国45社の航空会社から増便を強く要請されるとともに,さらに39か国から新たな乗り入れを求められているが,現用施設のままでは増便等は制限せざるを得ず,新たな国際摩擦を引き起こしかねない状況となっている。
      また,新東京国際空港は,世界の主要空港としては他に例を見ない1本の滑走路で運営されており,規模的にも世界の主要空港の半分以下に過ぎない。
      このような増大する航空需要と国際情勢に対応するとともに安全性,定時性の確保を図るためには,残る2本の滑走路と第二旅客ターミナルビル等を完成させ,1日も早く完全空港化を図る必要がある 〔6−2−4図〕

 (ウ) 完全空港化に向けて

      61年11月から警備当局の協力を得て,第二旅客ターミナルビル及びエプロン地区の造成工事に着手したのを手始めに,以後滑走路地区を含め各種の工事を進めつつあり,今やほぼ全域で工事を実施している。
      完全空港化を早期に達成するためには,残る未買収用地を円滑に取得できるか否かが最大のポイントとなっている。
      一方,空港周辺には依然として空港建設に反対するいわゆる過激派が,反対派農民を支援すると称して集団で常駐し,空港に向けての飛翔弾の発射,運輸省,千葉県,新東京国際空港公団,その他関係者の職員宅や車両への放火等過激なゲリラ活動を繰り返すとともに,9月には千葉県収用委員会会長を襲撃し重傷を負わせたほか,委員への脅迫を繰り返すという事件を引き起こしている。
      過激派の団結小屋等のうち3か所については,かねてから,新東京国際空港の安全確保に関する特別措置法に基づき,使用禁止命令を発していたが,62年11月,このうちの通称「木の根団結砦」において火炎瓶の投てき等の行為が行われたため,同法に基づき,同砦の除去を行った。
      現在,新東京国際空港は,大きな雇用の場を提供し,また観光客の増加等により地元経済に大きな経済効果を与え,空港の特性を活かした各種の開発構想が推進されるなど,今や周辺地域に不可欠の存在として地元に定着している。
      これまでに千葉県議会,周辺市町村等から空港の早期完全空港化促進決議がなされているが,この1年余まりの間に,千葉県議会及び県下全市町村議会等から過激派による暴力の排除を求める決議がなされるなど,早期完全空港実現に向けて地元の協力機運は盛り上がっている。

 (エ) 当面の課題

 (a) 未買収用地の取得

      空港用地の98%はすでに取得済であり,残りは農家が8戸とわずか2%の用地である。
      空港公団では,十分な代替地を用意し,地元の協力も得て取得に努めている。過激派は,農家との話し合いを妨害しているが,今後とも可及的速やかに,用地問題を解決するために,8戸の農家等と引き続き集中的,精力的に話し合いを進める等により取得に努める。

 (b) 空港アクセスの改善

      現在新東京国際空港のアクセスについては,JR及び京成電鉄の鉄道アクセスがターミナルに直接乗り入れていないため自動車利用が主体となっており,鉄道アクセスの一層の整備が空港利用者から求められている。
      運輸省としては,59年11月来,空港アクセスとして,京成,北総開発等既設のルートを活用したいわゆるB案の整備を推進することとしてきているが,空港利用者の利便の向上を図るための暫定措置として,旧新幹線施設を活用し,JR及び京成の空港ターミナルへの乗り入れを図ることとし,これに必要な鉄道施設の整備を目的とする第3セクター(成田空港高速鉄道株式会社)が63年10月設立された 〔6−2−5図〕

(3) 東京国際空港の沖合展開事業の推進

 (ア) 事業の経緯

      東京国際空港は,国内航空交通の中心として,全国35空港との間に1日約440便のネットワークが形成され,年間約3,000万人が利用している。
      本事業は,首都圏における国内航空交通の中心としての本空港の機能を将来にわたって確保するとともに,航空機騒音問題の解決を図るため,東京都が造成を行っている羽田沖廃棄物埋立地を活用し,本空港を沖合に展開するものである。運輸省では,58年2月に東京国際空港整備基本計画を決定し,その後,航空法に基づく飛行場の施設変更の手続き,東京都条例に準じた環境影響評価の手続きを経て59年1月に工事に着手した 〔6−2−6図〕

 (イ) 計画の概要

      本計画は,現空港の沖合に滑走路3本とターミナル施設を整備することにより空港の能力増強を図るもので,事業の完成により,滑走路処理能力は現行の年間16万回から23万回に増強される。
      空港へのアクセスとしては,鉄道については東京モノレールが新ターミナルまで延伸する計画であり,将来的には京浜急行の新ターミナル乗入れも計画されている。道路については,建設中の湾岸道路との取付け,環伏8号線の延伸が予定されている。

 (ウ) 事業の進捗状況と今後の見通し

      本事業は,全体の工程を次の3期に分けて行うこととしている。
     〔第1期〕 新A滑走路の供用
     〔第2期〕 西側ターミナルの供用
     〔第3期〕 新B滑走路,新C滑走路及び東側ターミナルの供用
      このうち,第1期については,既存の2本の滑走路に加え新A滑走路及び関係保安施設の整備が完成し,63年7月2日に供用された。
      63年度からは,67年度後半の供用を目途とし,第2期事業を本格的に推進している。これにより,旅客ターミナルビル,貨物ターミナル,格納庫等の諸施設の西側部分が整備され,また,これらに併せて,東京モノレールの新ターミナルへの延伸,京浜急行の東京モノレールとの接続,湾岸道路の東京側からの延伸,環状8号線の延伸等の空港アクセスも整備される予定である。この結果,首都圏の空の玄関にふさわしい旅客サービスレベルの向上が図られることとなる。
      さらにその後には,21世紀の航空需要に対応しうる滑走路処理能力を確保するとともに騒音問題の解決を図るため,2本の滑走路の沖合移転及び東側ターミナルの整備等を第3期として行ない,沖合展開事業を完了する予定である。


    表紙へ戻る 次へ進む