過去30年間において浦賀水道航路では18件、中ノ瀬航路では5件の合計23件の衝突事件が発生しており、その発生地点は航路の屈曲部及び出入り口付近で多発しています。
 浦賀水道航路における航法の適用は海交法及び海上衝突予防法がそれぞれ9件となっています。海交法については第3条第1項が適用されたものが7件と最も多く、その内訳は、航路外から航路に入る船舶3件、航路を横断しようとしようとする船舶2件、航路をこれに沿わない船舶2件がそれぞれ航路をこれに沿って航行する船舶と衝突しています。
 航路を横断しようとする船舶2隻については、「航路への出入又は航路の横断の制限区間」を外した同区域の北側及び南側付近を横断中、衝突に至っています。
 海交法第11条に規定されている航路の中央から右の部分を航行しなかった事件が2件あり、原因は居眠りが1件、気の緩みから見張りをおろそかにして屈曲部で転針せず1件で、いずれも原針路で直進して航路の中央から左の部分に進入して衝突に至っています。
 中ノ瀬航路においては5件のうち4件が「視界制限状態における船舶の航法」不遵守が原因とされ、その状況は、前後して北上中の2隻が衝突した事件が2件、同航路の西側から東行して横断しようとした船舶との衝突1件、底びき網漁中の漁船との衝突が1件となっています。これら視界制限状態下の4件の発生時刻について見ると06時台2件、07時台1件等となっており、視界が制限された中で「安全な速力としなかった」理由等から、午前の入航予定時刻に合わせ、先を急いで航行する状況がうかがえます。
浦賀水道航路における航法の適用状況
中ノ瀬航路における航法の適用状況
浦賀水道航路及び中ノ瀬航路における発生時刻の状況 (単位:件)
裁決事例
浦賀水道航路を北上して中ノ瀬航路に入ろうとする際に行先を表示せずに衝突した事例
 夜間、浦賀水道航路を北上する貨物船(3,145総トン)が中ノ瀬南口に差し掛かった際、右舷正横方向に認めていた同航の貨物船(1,260総トン)から行先信号がなされず、浦賀水道航路を直進するのか中ノ瀬航路に向かうのか不明であったものの、同船が航路北側境界線寄りに航行していたので中ノ瀬航路に向かうものと思い、同船の動静監視を十分に行わず、自船も行先信号を行わないまま右転し、同船の前路に進出する状況になって衝突に至った。

 

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