〜ヨットが関連した海難〜
 今年9月に琵琶湖でクルージング中のヨットが転覆し、子供3人を含む6人が亡くなり、未だ1人が行方不明となっている悲惨な事故が発生しました。現在、神戸地方海難審判理事所では、当該海難事件を鋭意、調査中です。
 今回は、ヨットが関連した海難について分析を行い、海難の原因、傾向等をみることにします。
 
(1) 裁決の状況
 平成8年から平成14年までの7年間に地方海難審判庁で裁決されたヨットが関連した海難は、53件(53隻)で、全裁決の1%にあたり、他の船種に比べて少ないものの、ヨット特有の構造、運航等に起因した海難が発生しており、これらの海難によって、6人の死亡者と13人の負傷者が発生しています。
 
  ヨット特有の原因・事象 他のプレジャーボートと共通の原因・事象
・帆走中、帆の状態に注視して操船に夢中だった
・船外機が不調で、帆走準備に取り掛かったが圧流された
・帆走中、風潮流による圧流を考慮せず、定置網から離す針路としなかった
・ヨットレース中、操船に気をとられて風により圧流された
・針路の選定が不適切で、なんとか筏の間を通れると思った
・舵が左にとられたまま航行した
・GPSや海図等により船位を確認しなかった
・同乗者と雑談していて船位を確認しなかった
・小縮尺の海図を一瞥しただけだった
機走中
帆走中
機帆走中
漂泊中
13隻
7隻
3隻
1隻
・帆走でレース練習中、先行艇や風のはらみ具合に気をとられていた
・帆走中なので相手船が当然に避航するものと思い、警告信号を行わなかった
・機走中に、帆走中を示す灯火である三色灯を表示していた
・キャビンで食事の準備をしていた
・帆が見張りの妨げになった
・甲板上で作業中の乗組員に気をとられていた
・転針方向の見張りを十分に行わず、遊漁船の前路に進出した
・自船の至近を追い越していく遊漁船群に気をとられていた
機走中
帆走中
機帆走中
錨泊中
7隻
6隻
1隻
1隻
・回頭中、メインセールを降ろす作業中、同乗者が船体の動揺で海中転落
・機関室において、ハーネスのテザー(ハーネスライン)が回転中のスクリューシャフトに巻き付いた
・スピンネーカー収納作業中に海中転落
・左舷船尾の甲板上で横になっていた乗組員が海中転落
乗組員
同乗者
3人
1人
・機関が運転不能になり、帆走しようとしたが全員船酔いしてセール艤装作業が困難なため航行を断念
・燃料切れで船外機が停止後、帆走を試みたが、風上に切り上がって航行できず
・帆走しようとメインセールを準備中、ロープの結び目を解くことに気を奪われるうちに圧流された
・蓄電池の取扱いが不適切で、蓄電池の電気量を消耗し、補助機関が始動不能
・水路調査が不十分でのり養殖施設に向けて進行した
施設損傷
運航阻害
単独衝突
5件
3件
2件
 
(2) 救命胴衣等の着用状況
 乗艇者の救命胴衣等の着用状況をみると、判明した着用率は43%で、そのうち艇長は50%、乗組員・同乗者は42%となっています。
 海難で死亡した6人のうち、判明した5人の救命胴衣等の着用状況をみると、着用していたのは1人だけで、残る4人は救命胴衣等を着用していませんでした。
(3) 発生海域の状況
 ヨットが関連した海難を主な発生海域別でみると、東京湾から浦賀水道、相模湾に至る海域が14件で最も多く、全体の26%を占めており、次いで博多湾の6件、大阪湾の5件などとなっています。
 また、東京湾から浦賀水道、相模湾に至る海域で発生した海難を事件種類でみると、衝突が5件と最も多く、次いで乗揚4件などとなっています。
 
主な発生海域の状況

主な発生海域 件数
東京湾〜相模湾 14
博多湾 6
大阪湾 5
広島湾 4
三河湾 3
その他 21
53
東京湾〜相模湾の事件種類
事件種類 件数
衝突 5
乗揚 4
乗艇者の海中転落による死亡 2
漁業施設損傷 2
推進用補助機関の運転不能 1
14

 

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