国土交通省
 平成13年度水環境における内分泌撹乱物質に関する
 実態調査結果について
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平成14年12月12日

<問い合わせ先>

河川局河川環境課

(内線35353、35452)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

 国土交通省では、動物の生体内に取りこまれた場合に本来その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性物質(以下「内分泌撹乱物質」という。)として疑いのある物質について、今後の対策検討のための基礎資料とすることを目的として平成10年度〜12年度に全国の一級河川における実態調査、河川への流入実態調査等を実施した。平成13年度は、平成12年度に引き続き、全国の一級河川における実態調査等を実施したところであり、今般、その結果を取りまとめたので公表する。

  1. 水質調査
     全国の一級河川109水系のうち96水系117地点(ベンゾフェノンは109水系131地点)において、環境省によるリスク評価あるいは文献により内分泌撹乱作用が報告されている物質及び内分泌撹乱作用が疑われ過年度調査において検出例のある物質について、水質調査を行った。結果は表−1のとおりである。

    表−1 調査対象物質濃度の検出状況(検出下限値を上回った地点の調査地点数に対する割合)
    物質名 検出箇所 検出割合
    4−t−オクチルフェノール 10/117 9%
    ノニルフェノール 6/117 5%
    ビスフェノールA 36/117 31%
    エスト
    ロゲン
    17β−エストラジオール
    (LC/MS法)
    1/117 1%
    エストロン
    (LC/MS法)
    16/117 14%
    フタル酸ジ−n−ブチル 8/117 7%
    ベンゾフェノン 4/131 3%

    注1)調査期間:10月10日から12月4日
    注2)4-t-ブチルフェノール及びベンゾ(a)ピレンについては、平成12年度の水質調査において検出例がなかったため今回は省略した。

    ○これらの物質のうち、ノニルフェノール等一部の物質の検出割合は、経年的に減少する傾向がみられた。(表−2参照)

    表−2 連続測定地点における検出状況
    (検出下限値を上回った地点の調査地点数に対する割合)

    物質名 平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度
    4−t−オクチルフェノール 3/115
    3%
    14/115
    12%
    15/115
    13%
    9/115
    8%
    9/115
    8%
    ノニルフェノール 31/115
    27%
    20/115
    17%
    16/115
    14%
    14/115
    12%
    6/115
    5%
    ビスフェノールA 54/115
    47%
    52/115
    45%
    55/115
    48%
    40/115
    35%
    35/115
    30%
    フタル酸ジ−n−ブチル 6/100
    6%
    13/100
    13%
    12/100
    12%
    2/100
    2%
    5/100
    5%

    注1)表中、上段は検出下限値を上回った地点数/全調査地点数を示し、下段は検出率を示している。
    注2)各調査の調査期間は次の通り。 平成10年度秋季調査:11月10日から12月11日 平成11年度夏季調査:7月28日から9月17日、秋季調査:11月10日から12月16日 平成12年度秋季調査:9月20日から12月13日 平成13年度秋季調査:10月10日から12月4日

  2. 底質調査
     主要7水系13地点(4-t-オクチルフェノールは5系9地点、ベンゾ(a)ピレンは109水系131地点)において、環境省によるリスク評価あるいは文献により内分泌撹乱作用が報告されている物質及び内分泌撹乱作用が疑われ過年度調査において検出例のある物質について底質調査を行った。結果は表−3のとおりである。

    表−3 調査対象物質の検出状況(検出下限値を上回った地点の調査地点数に対する割合)
    物質名 検出箇所 検出割合
    4−t−オクチルフェノール 3/9 33%
    ノニルフェノール 7/13 54%
    ビスフェノールA 10/13 77%
    エスト
    ロゲン
    17β-エストラジオール
    (LC/MS法)
    1/13 8%
    エストロン
    (LC/MS法)
    6/13 46%
    エチニルエストラジオール
    (LC/MS法)
    1/13 8%
    4-t-ブチルフェノール 0/13 0%
    ベンゾ(a)ピレン 72/131 55%
    ベンゾフェノン 3/13 23%

    注1)表中、上段は検出下限値を上回った地点数/全調査地点数を示し、下段は検出率を示している。
    注2)調査期間:10月10日から12月4日

    ベンゾ(a)ピレン(燃料の燃焼により非意図的に生成する物質)は、自動車の排ガスなどからも排出され、水に溶けにくい性質を持つが、全国131地点のうち半数以上の地点で検出された。

  3. 魚類調査
    •  4河川9地点においてコイを採捕し、魚の血清中のビテロゲニン濃度や精巣の異常が、水質中の内分泌撹乱物質の指標となるか検討することを目的に、雄の血清中のビテロゲニン濃度及び雄の精巣観察等の調査を行った。
    •  平成10〜13年度に行なった雄の血清中ビテロゲニン濃度の調査結果から、河川に生息する雄コイの一部でビテロゲニンの生成が認められたが、水質及び底質の内分泌撹乱物質の測定結果とビテロゲニン検出比率には、有意な相関関係は認めらなかった。(資料−137〜38頁、図2.2.3〜2.2.4参照)自然環境下に生息する魚類を対象とした調査の場合、得られたデータに様々な環境要因が反映されているためと考えられる。
    •  平成10〜13年度に行なった雄の精巣観察の調査では、各調査地点において採捕した雄コイの一部に精巣の異常がみられたが、内分泌撹乱物質の測定結果と各調査地点の精巣異常のみられた雄コイの比率に有意な相関関係はみられなかった。(資料−1 46〜47頁、図2.2.8〜2.2.9参照)自然環境下に生息する魚類では、精巣に異常を生じさせる要因として、内分泌攪乱物質の影響以外にも、水温、水質、餌条件などの生息環境や加齢に伴う老化なども考えられる。これらのことから、採捕した雄コイの精巣に異常を生じさせた原因は不明であった。
    •  なお、雄コイの血清中ビテロゲニン濃度と精巣異常の状況は以下のとおりであった。

    表−4 平成10〜13年度調査での雄コイのビテロゲニン濃度
    (単位:尾)
    調査年度(調査時期) ビテロゲニン濃度範囲(血清1mLあたり) 合計
    0.1μg未満 0.1μg以上
    1μg未満
    1μg以上
    10μg未満
    10μg以上
    平成10年度(11〜12月) 39(72.2%) 9(16.7%) 2( 3.7%) 4(7.4%) 54
    平成11年度( 5〜7月) 66(61.7%) 19(17.8%) 17(15.9%) 5(4.7%) 107
    平成12年度(10〜11月) 74(82.2%) 5( 5.6%) 7( 7.8%) 4(4.4%) 90
    平成13年度(10〜11月) 72(75.8%) 16(16.8%) 6( 6.3%) 1(1.1%) 95

    注1)平成10〜12年度は、平成13年度と同じ9調査地点の集計値を示した。
    注2)括弧内に各年度の合計に対する各ビテロゲニン濃度範囲にあった尾数の比率(%)を示した。
    注3)ビテロゲニンは、通常雌体内で生成された女性ホルモンの働きによって肝臓で生成され、血液を介して卵母細胞に取り込まれ蓄積される物質である。今回、この血清中濃度が一定以上(0.1μg/ml)である場合に、何らかの外的要因によりビテロゲニンが雄体内で生成されたと考えた。

    表−5 平成10〜13年度調査で採捕した雄コイの精巣観察結果
    (単位:尾)
    調査年度 精巣の観察結果 合計
    正常 異常
    平成10年度 50(92.6%) 4(7.4%) 54
    平成11年度 94(87.9) 13(12.1%) 107
    平成12年度 76(84.4%) 14(15.6%) 90
    平成13年度 85(89.5%) 10(10.5%) 95

    注1)各調査年度とも13年度と同じ9調査地点の結果を示した。
    注2)括弧内に各年度の合計に対する正常及び異常個体の比率(%)を示した。
    注3)異常とする精巣の状況については資料−1 44頁参照

  4. 平成14年度の調査計画
     平施13年度までの調査結果等を踏まえ、今後の直轄管理区間における内分泌撹乱物質の調査を、生態系保全のための河川管理を行なっていく際の内分泌撹乱物質動向の概略把握という観点から、効率化重点化を図り(資料−1 81頁〜参考)行なっていくこととする。


 資料−1及び資料−2はそれぞれ(1/2)と(2/2)のファイルに分割しています。

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