国土交通省
 放置座礁船対策の基本的方向について
 −省内検討会とりまとめ−

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平成15年7月2日
<問い合わせ先>
全体・保険制度について
海事局企画室

(内線43251、43157)

支援措置について
 SOLAS条約改正等対策室

(内線45183)

TEL:03-5253-8111(代表)


 

(検討の経緯)

 船舶の座礁等による被害が発生した場合には、それによる油濁損害や船舶の撤去等は、船舶所有者等の責任により処理されるのが原則である。
 しかしながら、船主責任保険に加入していない等の事情により、船舶所有者等が被害の賠償や船舶の撤去等を行わないケースが問題となっており(別紙1、2)、撤去等を行う地方公共団体に対し、国においても支援を行うことの要請が高まってきたところである。
 このため、省内関係者による「座礁・放置船舶等に関する検討会」において検討を行い、今後の放置座礁船対策の基本的方向を、以下の通りとりまとめた。
 今後、関係者との調整等を進め、所要の制度創設等を行うこととする。

(対策の概要)

1船舶の座礁等による損害の賠償や船舶の撤去等については、そもそも船舶所有者等が責任を持って対応すべきものである。従って、現在、保険への加入義務付けが行われているタンカー以外の船舶についても、保険加入の義務付けを行うことにより、 座礁等により生じる損害の賠償や船舶の撤去等の負担能力を有しない船舶について、その航行、入港を禁止すること等を内容とする制度の創設につき関係者との調整、検討を進める。
 なお、その際は、航行、入港の禁止等に伴い、わが国や関係諸国の経済、海運 業界等へ与える影響も十分踏まえつつ検討を進めることとする。

2さらに、一定の船舶に対し保険加入を義務化したとしても、外国籍船には国際 法上、領海内の無害通航権が認められている等から、依然としてわが国周辺海域 で責任能力のない船舶が座礁する可能性は否定できないところ。
 このため、座礁等に対する船舶所有者等による対応が行われず、船舶所有者等に代わって船体の撤去等を行う地方公共団体に対しては、今後、国も一定の支援を行う制度の創設につき検討を進める。

(保険への加入の義務付け等)

 保険への加入の義務付け等に関しては、以下の内容をもとに、今後、関係者との調整等を行い、次期通常国会への所要の法案提出に向け、検討を進めることとする。

  1. 制度の目的
     1船舶に積載されていた油による油濁損害、2座礁した船舶の撤去等に係る船舶所有者等の責任を明確にするとともに、その損害賠償等に要する費用を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図る。

  2. 船舶所有者等の責任及び責任限度額
     油濁汚染や船舶の放置等による損害が生じた場合には、当該損害に係る船舶所有者等が、無過失の責任(厳格責任)を負うこととする。ただし、当該損害が、戦争等により生じた場合を除く。
     なお、船舶所有者等は、船主責任制限法に基づき、その責任を一定の限度額に制限することができる。
    【要検討課題】
    • 現行の責任限度額(76LLMC(1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約)に基づくもの)を、新たな責任限度額(96LLMC(1976年の海事債権についての責任制限に関する条約を改正する1996年議定書(仮称))に基づくもの)に引き上げることを検討する(法務省所管)。

  3. 船舶所有者による損害賠償保障契約の締結強制
     [総トン数○○トン以上の]船舶については、損害賠償責任に係る保障契約が締結されているものでなければ、入港の禁止等を行うこととする。
    【要検討課題】
    • 今後、対象とする船舶の範囲(大きさ、船種等)などを更に検討する。
    • 諸外国においては、米が総トン数300トン以上、加・豪が総トン数400トン以上の船舶に対し保険加入を義務付けている例がある。

  4. 保障契約の内容
     保障契約は、船舶所有者等が損害賠償の責に任ずる場合において、その賠償の義務の履行を担保する契約とし、船舶所有者等の責任限度額に満たないものであってはならないこととする。

  5. 保険者等への直接請求
     被害者は、保険者等に対し、損害賠償額の支払いを請求することができることとする。
    【要検討課題】
    • 被害者保護の観点から、保険の実態等を踏まえながら関係者と調整する。

  6. 保障契約証明書
     国土交通大臣は、保障契約を保険者等と締結している者の申請があったときは、当該船舶について保障契約証明書を発行するとともに、証明書を備えてない船舶については、入港の禁止等を行うこととする。
    【要検討課題】
    • 保障契約の真正性確認のための規定であり、証書発行事務のあり方等について検討する必要がある。
    • 現場の担当官が、簡単に証明書の真正性を確認することができる手法(データベースの整理、ICチップやバーコードといった技術の導入等)を確立する必要がある。

  7. 制度の実効性確保等
     保障契約証明書の備え置き義務規定に違反した者等については罰則及び退去命令の対象とするが、その際の効果的な犯罪事実の把握や取締り等の方法につき、関係部局において十分な検討を行う必要がある
    • 違反船舶の取締りや退去命令の執行については、航行中の船舶、特に大型船に対し、航行停止や   航路変更等の実力規制を行うことは、事故の可能性、その困難性が高いことにも留意する必要がある。

(撤去等に対する国の支援等)

 放置座礁船の撤去等は、本来、船舶所有者等の責任において対応されるべきものであるが、無責任な船主が対応を行わない場合、地方公共団体等がやむを得ず撤去等への対応を行っているのが現状である。このような場合、撤去等に要した費用については特別交付税の交付対象となっているが、 特に外国籍船のケースにおいては、地方公共団体等による費用の回収も困難なことが多いことから、国としても一定の支援を行なうべきとの指摘がある。
 これら放置座礁船の撤去等については、管理者が存在する特定の区域における既存制度での対応や、管理者を支援する制度の検討を行なうとともに、保険加入の義務付け制度創設の検討にあわせ、財政支援スキーム(補助制度や基金)の創設につき関係者との調整を進め、16年度予算要求を行う。
 なお、支援スキームの検討については、関係省庁との十分な連携を図りつつ協力してこれを進めることとする。

 [ ※ 補助による場合の例 ]

  1. 補助制度の創設
     船舶所有者等が賠償責任保険に加入していない等の理由から撤去等を行わず、地方公共団体が撤去等を行う場合について、地方公共団体が放置座礁船の撤去等に要した経費の一定割合を、国が補助することとする。

  2. 補助の支援対象
     地方公共団体が撤去等に要した経費(船体撤去費、油回収費等)の一部を補助の対象とする

 [ ※ 基金による場合の例 ]

  1. 基金の創設
     撤去等に対する支援措置として、全国規模の基金を創設する

  2. 基金への出資者
     国に加え、地方公共団体、民間の出資も募る

  3. 基金の支援対象
     地方公共団体が撤去等に要した経費(船体撤去費、油回収費等)の一部を基金の支援対象とする

(その他の支援措置)

 座礁船等による被害が生じた場合には、これまでも、国において原因者である船主の特定や当該船主への撤去指導等の支援を、撤去等を実施する地方公共団体に対して行なってきたところであるが、放置座礁船対策に関する地元との連携を強化するため、国土交通省に各省横断的な連絡窓口を設置することにつき、関係省庁に対し働きかけを行う。


別紙1 放置座礁外国船の状況PDF形式
別紙2 我が国に入港した外国籍船舶の保険加入状況についてPDF形式
別添  我が国に入港する外国籍船の保険加入実態の調査についてPDF形式

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