国土交通省
 III 整備計画
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1 既設路線の改良等

 東京圏において、鉄道が輸送需要動向や社会的ニーズに的確に対応していくには、まずは、既存ストック活用の観点から過去の鉄道整備の蓄積である既設路線を最大限に活用し高度利用することにより、輸送力の増強、速達性の向上等を図ることが必要である。そこで、この答申においては、下記2の路線の新設、複々線化等とは別に、貨物線の旅客線化、相互直通運転化、鉄道駅の改良、信号保安施設の改良といった既設路線の改良等を、新たに整備計画として位置付けることとした。現時点で必要と考えられる既設路線の改良等の事業は別紙のとおりであり、また、別紙以外であっても、各鉄道事業者にあっては、利用者利便を改善する観点から、既設路線の改良等について積極的に検討・実施していくものとする。
 なお、既設路線の部分的な延伸、既設路線間を結ぶ短絡線の整備等は、既設路線の改良等として位置付けることも可能であるが、ここでは、便宜上、下記2において路線の新設、複々線化等として整理した。

(付図1)

2 路線の新設、複々線化等

 (1)答申路線の選定

 答申路線は、現時点において既に整備に着手している新設、複々線化等の路線と、今後新たに整備される新設、複々線化等の路線で構成している。そのうち、今後新たに整備される路線の選定に際しては、客観性を確保する観点等から、今回の答申では、地方公共団体等から要望のあった路線及び本審議会の委員から提案のあった路線について、一定の条件設定の下に、個別路線ごとに輸送需要見通し、費用対効果分析等による社会経済的効果分析及び財務分析を行ったところであり、これに整備主体の見通し等の鉄道整備に係る熟度を踏まえ、これらを総合的に判断することにより答申路線を選定したところである。また、第7号答申において整備が必要とされた路線についても、現時点で所要の見直しを行った。

 整備対象とする路線の分類については、2015年(平成27年)の目標年次との兼ね合いにおいて、今後の鉄道整備の課題に適切に対応できるよう、次のとおりとする。
   目標年次までに整備を推進すべき路線
 現時点において整備の必要性が認められ、目標年次までに整備を推進すべき路線
     現時点において既に整備に着手している路線及び鉄道整備に係る条件が概ね整っており目標年次までに開業することが適当である路線
     整備主体の見通し等の鉄道整備に係る熟度、投資能力等の面で解決すべき基本的な課題があり、現時点で開業時期は特定できないが、少なくとも目標年次までに整備着手することが適当である路線
   今後整備について検討すべき路線
 沿線の開発プロジェクトの進捗状況、輸送需要動向、投資能力等を踏まえつつ、整備の必要性、整備方策等について検討すべき路線
 この整備計画は今後の望ましい鉄道整備網を示すものであり、各路線ごとの整備・運営主体については特定していない。
 各路線の経由地については、鉄道との主要接続点、主要開発地点等を示す。

 (2)具体的路線

 以上の考え方のもとに、東京圏における路線の新設、複々線化等についての整備計画を次のとおり策定した。

具体的路線
<1>横浜3号線の延伸、<2>みなとみらい21線の建設、<3>横浜環状鉄道(仮称)の新設、<4>相模鉄道いずみ野線の延伸、<5>神奈川東部方面線(仮称)の新設、<6>東京急行電鉄東横線の複々線化及び目蒲線の改良、<7>川崎縦貫高速鉄道(仮称)の新設、<8>京浜急行電鉄久里浜線の延伸、<9>東京1号線の東京駅接着、<10>東京6号線の建設、<11>東京7号線の建設及び延伸、<12>東京8号線の延伸及び複々線化、<13>東京9号線の複々線化及び延伸、<14>東京10号線の複々線化、<15>東京11号線の延伸、<16>東京急行電鉄田園都市線の複々線化及び大井町線の改良、<17>東武鉄道伊勢崎線の複々線化、<18>東京12号線の建設及び延伸、<19>東京13号線の延伸、<20>京浜急行電鉄空港線と東京急行電鉄目蒲線を短絡する路線の新設、<21>区部周辺部環状公共交通(仮称)の新設、<22>東京臨海高速鉄道臨海副都心線の建設及び羽田アクセス新線(仮称)の新設、<23>JR京葉線の中央線方面延伸、総武線・京葉線接続新線(仮称)の新設及び中央線の複々線化、<24>JR東北線、高崎線及び常磐線の延伸、<25>常磐新線の建設及び延伸<26>北総開発鉄道北総・公団線を延伸し新東京国際空港へ至る路線の新設、<27>東海道貨物支線の旅客線化等及び川崎アプローチ線(仮称)の新設、<28>東京モノレール羽田線の建設、<29>ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線の延伸、<30>多摩都市モノレールの延伸、<31>日暮里舎人線の建設、<32>東西交通大宮ルート(仮称)の新設、<33>幕張地区の新しい交通システムの新設、<34>千葉都市モノレールの延伸

付図2及び付図3

3 答申路線の整備による混雑率、アクセス等の改善効果

 この答申の整備計画は以上のとおりであるが、そのうち「既設路線の改良等」及びAの「目標年次までに整備を推進すべき路線」を整備した場合における混雑率、アクセス等の改善効果は次のとおりである。

付表3及び付表4

 (1)混雑率及び混雑区間の長さの改善

 現在整備中の路線が整備され、かつ既設路線の改良等が完了する場合、東京圏の主要31区間のピーク時の平均混雑率は1998年(平成10年)の183%から2015年(平成27年)には160%台に下がり、また、混雑率180%以上の区間の長さも概ね現在の40%程度に短縮されると見込まれる。
 また、新規路線として、JR京葉線の東京から中央線三鷹までの延伸、JR総武・京葉接続新線の整備、神奈川県東部内陸部から東京急行電鉄東横線を短絡する神奈川東部方面線(仮称)の整備、東京11号線の延伸等により、2015年(平成27年)の主要31区間の平均混雑率は150%台に下がり、これにオフピーク通勤対策の積極的推進を図ることにより、平均混雑率150%の目標達成は十分可能であると見込まれる。
 これを、個別路線で見ても、混雑率が180%を超える路線はJR総武線緩行、東海道線、高崎線の3線のみとなり、また、東京圏全体の180%を超える混雑区間の長さも現在の20%程度と大幅に短縮されることが見込まれる。

 (2)速達性の向上、乗換回数の減少等

 既設路線の改良等が完了し、かつAの路線が整備される場合は、東京圏全体として速達性の向上、乗換回数の減少等が進むとともに、業務核都市等の相互間の速達性向上等により都市構造・機能の再編整備等に大きく寄与することが期待される。
 これを個別路線ごとに見ると、郊外部から東京中心部との間では、例えば、JR東北線、高崎線及び常磐線の東京延伸により大宮〜東京間の所要時間39分が8分程度短縮(乗換回数は1回から0回)され、JR京葉線の中央線三鷹方面の延伸により立川〜東京間の所要時間49分が14分程度短縮されることが見込まれる。また、業務核都市等の相互間では、例えば、JR東北線、高崎線及び常磐線の東京延伸により大宮〜横浜間の所要時間75分が16分程度短縮(乗換回数は2回から0回)され、川崎縦貫高速鉄道(仮称)の整備により新百合ヶ丘〜川崎間の所要時間41分が17分程度短縮(乗換回数は1回から0回)されることが見込まれる。

 (3)空港、新幹線等へのアクセス機能の改善

 既設路線の改良等が完了し、かつAの路線が整備される場合は、東京圏全体として空港、新幹線等への速達性の向上、乗換回数の減少等が進むことにより、アクセス利便性の向上が図られると見込まれる。
 まず成田空港については、例えば北総開発鉄道北総・公団線と成田空港を接続する路線の整備により京成上野〜成田空港間の所要時間59分が12分程度、大宮〜成田空港間の所要時間95分が12分程度短縮されることが見込まれる。
 羽田空港については、例えば東京1号線の東京駅接着により東京〜羽田空港間の所要時間40分が8分程度短縮(乗換回数は1回から0回)され、横浜方面から京浜急行電鉄空港線への直通運転により横浜〜羽田空港間の所要時間39分が9分程度短縮(乗換回数は1回から0回)されることが見込まれる。
 また、新幹線停車駅について、東京駅及び品川新駅へのアクセスは上記(2)で述べたように、JR東北線、高崎線及び常磐線の東京延伸、JR京葉線の中央線三鷹方面の延伸等により所要時間等が改善され、また、新横浜駅へのアクセスは、例えば神奈川東部方面線(仮称)の整備により二俣川〜新横浜間の所要時間33分が19分程度短縮(乗換回数は1回から0回)されることが見込まれる。

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