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首都機能移転と東京

1.過密都市「東京」

東京への人口と政治・行政、経済、文化等の諸機能の過度の集中は、第1章「今なぜ首都機能移転か」で述べているように、国土利用の不均衡を招く一方、近年、都心部に端を発する著しい地価の高騰をもたらし、バブル経済の崩壊後も、都市コミュニティの崩壊、不良債権問題等の歪みを残すこととなった。また、住宅問題、通勤・交通混雑、ゴミ問題、水・エネルギーの確保等東京の過密に伴う諸問題も、依然として解決されないまま、経済的な非効率を生み出すとともに、豊かで快適な都市生活の実現を困難にしている。

こうした状況下において、首都機能自体が過密・巨大都市化に起因する情報の偏り、非効率性の増大、国際政治活動への制約等好ましくない影響を受けており、21世紀に向けての首都機能の維持・改善を困難にするに至っている。

さらに、バブル経済の過程で、東京では、金融機能や国際業務機能等の集積が進み、また、文化的施設の整備も進むなど、世界都市の一つとしての評価を得るに至ったものの、東京への過密集中は、生活・業務コストの水準の高さ等に象徴される経済的な非効率をもたらし、近年、例えば外資系企業の立地が頭打ちになるなど、世界都市東京の国際的な競争力が低下しているのではないかという懸念が生じている。

加えて、先の阪神・淡路大震災は、東京の大規模災害への対応力の強化が緊急の課題であることを改めて明らかにしたところであり、東京の安全性の向上を図り将来にわたる繁栄を維持・発展させていくためにも、早急に過密の緩和を図っていかなければならない状況にあるといえよう。

2.東京からみた首都機能移転の意義と効果

首都機能の移転は、立法、行政、司法の諸機関の移転が進む過程で、公務員とその家族のほか、政党関係者や首都機能に関連する民間機能等を含めて最大で人口60万と見込まれる人々の東京から新首都への移動を発生させることにもなり、東京の過密の緩和に直接的に寄与することとなる。

これに対して、東京都の現在の人口1,200万に対して、その程度の移転では過密緩和の効果は限定的なものにすぎないのではないかという議論がある。

しかし、道路交通量のわずかな減少が渋滞の長さ・時間に大きな緩和効果をもたらすことが知られているように、わずかな分散でも、大きな過密緩和の効果が生じる可能性があることに留意する必要がある。また、東京への人口と諸機能の過度な集中は、各種都市施設等の整備のために必要な費用を逓増させており、その結果、追加投資を行うことはますます困難となり、世界都市東京の将来に翳り(かげり)を生じさせている。また、こうした費用が具体化せず、東京の諸活動を制約するコストとして顕在化するに至っていない場合にあっても、通勤者の肉体的な苦痛や環境問題の発生等に形を変えて転嫁されている可能性も指摘されている。

さらに、より中長期的にみるとき、首都機能の移転は、東京から立法、行政、司法の中枢機能を移すことにより、社会的・心理的な面も含めた人口と諸機能の「集中が集中を呼ぶメカニズム」を打破し、将来の新たな東京一極集中問題の発生の回避と中長期的な東京の過密の緩和を図るとともに、都市環境を改善する契機をつくることに大きな意義がある。

なお、この点に関しては、歴史的に形成された政・官・民一体の関係を見直し政経分離を行うことは実態的に困難であり、東京の世界的な情報受発信機能等に影響が生じてはならないという議論がある。

アメリカにおける首都ワシントンと世界都市ニューヨークとの関係や多くの州都がその州の経済中心都市ではないことにみられるように、海外においては、政経分離システムが現に特段の支障なく機能している。また、新首都と東京の密接な連絡を可能とする高度情報通信ネットワーク等の整備を進めるとともに、地方分権・規制緩和を進めるなど、新しい国の政治・行政システムを構築していく中で、こうした懸念を払拭することは可能であると考えられる。

また、今後の新たな東京圏の整備のためには、首都機能移転するのではなく「展都」等を推進し、横浜、千葉等の業務核都市等への諸機能の分散を図りつつ東京圏整備を推進する方が、現実的かつ有効な選択ではないかという議論がある。

確かに業務核都市の育成・整備は、東京圏の地域構造改編のために重要な施策であり、引き続き推進していく必要があるが、東京圏の諸活動が現時点でも東京圏を大きく超えるエリアに依存せざるを得ない分野が見られることを踏まえると、東京の過密問題の積極的な緩和を図るためには、これに加えて首都機能の東京圏外への移転を進める必要があると考えられる。このように、首都機能移転は、災害への対応力を強化するとともに、社会資本整備のための費用の増大や生活環境の悪化に歯止めをかけ、東京を住みやすく働きやすい環境につくりかえる上で、大きな意義と効果があると考えられる。

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