(1) 排水の水系への影響の地域差
1) 検討手法
新都市から放流される排水による放流先の河川流量・水質への影響及び流出先が閉鎖性水域である場合の水質への影響について検討を行った。
(1)河川の流量、水質への影響の評価手法
各地域の水系の水量、水質観測データを整理し、調査対象地域内の主要な水系より評価地点を設定した(表4.6、図4.4参照)。この評価地点に標準ケースでの新都市からの排水(2.9m3/秒、BOD20mg/l)が直接流入した場合の水質を予測した(新都市からの排水地点は一カ所を想定)。なお、現状の河川の流量データは、低水流量(年295日はその流量を下回らない流量)を、BODは年75%値(年間の日平均値の全データの内、低いほうから数えて75%目にあたる数値)を用いた(いずれも平成8年度)。
水量については現状の流量に対する新都市からの排水量の比率より影響を評価した。
水質については、流入後の予測水質を環境基準値との比較から評価を行った。また、新都市で排水再利用等により排水量を約30%削減し、2.0m3/秒とすることを前提として、各地域の評価地点での環境基準を達成するために必要な高度処理の水質レベルの推計を行い、この結果より評価を行った。
注.排水は、評価地点に一括して放流されることを想定しており、自然の浄化作用*1 等は考慮していない。
(2)閉鎖性水域への影響の評価手法
検討対象地域内に立地した新都市からの排水が流入する可能性のある閉鎖性水域として、霞ヶ浦、琵琶湖、伊勢湾、三河湾、浜名湖が挙げられる。
各水域の現状の水質と流入負荷量の実績についてCOD*2、全窒素(T−N)、全リン(T−P)*3を指標として把握・整理し、新都市からのCOD等の負荷量の推計を行った結果を参考として評価を行った。
*1 自然の浄化作用
河川等では、流下する間に沈殿あるいは微生物による分解等により水質を浄化する作用がある。その浄化作用の大きさは、河川の形状、流量等により異なっている。
*2 COD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)
BODと同じく有機物による水の汚濁の程度を示す指標。湖沼、海域の汚濁を示す代表的な指標。
*3 全窒素(T−N)、全リン(T−P)
栄養塩類であり、閉鎖性水域内で植物性プランクトン等による有機物の生産を活発化し、いわゆる富栄養化による水質汚濁を起こす。
検討対象地域 | 河川名 | 評価地点名 | 低水流量:m3/秒 | 水質:BOD年75%値:mg/l( )環境基準 | 水質測定地点 |
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北東地域(宮城県) | 阿武隈川 | 阿武隈大橋 | 57.2 | 2.7(2) | 阿武隈大橋 |
北東地域(宮城県) | 阿武隈川 | 館矢間 | 47.9 | 2.7(3) | 丸森橋 |
北東地域(福島県) | 阿武隈川 | 阿久津 | 17.4 | 3.2(5) | 阿久津橋 |
北東地域(栃木県) | 那珂川 | 黒羽 | 4.6 | 1.6(2) | 新那珂川橋 |
北東地域(茨城県) | 久慈川 | 山方 | 6.1 | 1.2(2) | 山方 |
北東地域(茨城県) | 那珂川 | 野口 | 25.9 | 1.2(2) | 野口 |
中央地域-東海地域(岐阜県) | 木曽川 | 今渡 | 116.6 | 0.9(2) | 犬山橋 |
中央地域-東海地域(岐阜県) | 庄内川 | 多治見 | 3.8 | 2.1(5) | 天ケ橋 |
中央地域-東海地域(愛知県) | 矢作川 | 岩津 | 5.9 | 1.5(3) | 明治用水頭首工 |
中央地域-東海地域(愛知県) | 豊川 | 石田 | 5.4 | 0.8(2) | 江島橋 |
中央地域-東海地域(静岡県) | 天竜川 | 鹿島 | 77.1 | 0.6(2) | 鹿島橋 |
中央地域-三重・畿央(三重県) | 鈴鹿川 | 高岡 | 11.1 | 1.4(2) | 高岡橋 |
中央地域-三重・畿央(畿央地域) | 野州川 | 野洲 | 2.4 | 1.0(2) | 服部大橋 |
中央地域-三重・畿央(畿央地域) | 木津川 | 飯岡 | 12.0 | 1.9(2) | 玉水橋 |
(注) いずれも平成8年度の流量観測点、水質観測点の観測デ−タによる
参考) 新都市における排水量は、標準ケースで2.9m3/秒、負荷削減ケースで2.0m3/秒