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シップリサイクル条約に関する取組み

平成21年5月15日
<問い合わせ先>
国土交通省海事局船舶産業課国際業務室
(内線43644)
TEL:03−5253−8111(代表)

 

1.シップリサイクル条約の採択

朽船舶の解体は、過去には我が国でも実施されていましたが、1970 年代から新興工業国として台湾や韓国が担うようになり、1980 年代には中国がこれに参入、1990 年代からはインド、パキスタン、バングラデシュといった国々が主役を務めるようになりました(図1参照)。しかし、後発のこれらアジアの国々では、労働者の安全や環境対策などが疎かで(図2参照)、多数の死傷事故が発生することとなり、人権団体や環境団体が海運国や造船国の責任を指摘するようになりました。こういった船舶解体(シップリサイクル)に関する問題は国際海事機関(IMO)を始め、国際労働機関(ILO)やバーゼル条約締約国会議などの国際機関で取り上げられ、それぞれ任意のガイドラインを作成するなど取り組みが進められましたが、2005 年末の第24 回IMO 総会において新規条約の策定作業の開始が決議されました。日本は世界有数の海運・造船国としての自負からこの起草作業に当初より深く関与しており、2008 年10 月の第58 回海洋環境保護委員会(MEPC58)において条約案は承認され、2009 年5 月15日に香港において「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約(仮称)」(通称:シップリサイクル条約)として採択されました

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図1 世界の船舶解体実績の推移         図2 バングラデシュの船舶解体風景

 

シップリサイクル条約の概要

本条約は、序文(Preamble)の下に条文本文(Articles)として第1条から第21条までが規定されています。また、条約本文には附属書(Annex)として、船舶、船舶リサイクル施設、通報についての要件を示した規則(Regulation)と、付録(Appendix)として有害物質リストと各書式が規定されています。さらに、これに条約の統一的な運用を支援するために任意の指針類(Guidelines)が用意されています(図3参照)。

 

船舶に関する要件において、最も重要なことは船舶の一生を通じ、条約で定める有害物質の搭載・使用を禁止・制限し、船舶に含有される有害物質の量や所在を記述したインベントリ(Inventory of Hazardous Materials)を作成・保持・更新し、最終的に船舶リサイクル施設に引き渡すことです。

船舶リサイクル施設も、施設の運営計画を策定し、関係指針に沿った安全や環境要件を遵守できることが担保されて初めて締約国であるリサイクル国の政府から承認を受けられることになります。船舶リサイクル施設は各船舶のインベントリに基づき、有害物質をどのように処理処分するかを明記した「船舶リサイクル計画」を作成する必要があります。施設が特定の有害物質を処理処分できない場合には有害物質を事前に本船から除去する必要があります。これらの準備作業の後、船舶リサイクル施設までの最終航海計画を立て、主管庁等から最終検査を受け、「リサイクル準備国際証書」を受領することで、本船は船舶リサイクル施設へ向かうことができます。船舶リサイクル施設は本条約に従って「リサイクル準備国際証書」を保持する船舶しか受け入れてはなりません。(図4参照)

本条約は、@15ヶ国以上が締結し、Aそれらの国の商船船腹量の合計が世界の商船船腹量の40%以上となり、かつ、Bそれらの国の直近10年における最大の年間解体船腹量の合計がそれらの国の商船船腹量の3%以上となる国が締結した日の24箇月後に効力を生じることとなっています。



条約案の構造条約案の要件
        図3 条約の構造                 図4 条約の要件

 

リンク : シップリサイクル条約(仮訳付)条約採択後 【本文】、【附属書】、【付録

リンク : 有害物質インベントリ作成ガイドライン 【本文】、【付録

 

2.シップリサイクルシステム構築に向けたビジョンの策定について

シップリサイクル検討委員会(委員長:横浜国立大学 角 洋一教授)は、近年国際的に顕在化しつつある船舶の解撤問題等に適切に対応し、円滑な船舶リサイクルの実施による国際海運・造船市場の安定化に資することを目的として、船舶のリサイクルに係る国際機関における審議への対応やその基礎となる調査研究等の方針についての総合的な検討の場として、学識経験者、研究機関、関係業界をメンバーとして2002年6月に設置されました。

2009年3月25日に開催された第15回検討委員会において、シップリサイクルを取り巻く現状や課題を踏まえた、短期的ビジョンや中長期的ビジョンを示した「シップリサイクルシステム構築に向けたビジョン」を策定しました。

本ビジョンでは、短期ビジョンとしては条約発効に向けた法整備や事業者等の環境整備の必要性、先進国型シップリサイクルモデルの開発を示し、中長期的ビジョンとしては船舶の3Rの推進や先進国型シップリサイクルシステムの確率を謳っている

リンク : シップリサイクルシステム構築に向けたビジョン 【本文】、【概要