uc22-019

エリアマネジメントのデジタルツイン化Ver2

実施事業者東急不動産株式会社 / ソフトバンク株式会社 / 株式会社キャドセンター / 株式会社Fusic
実施場所東京都港区 東京ポートシティ竹芝及び周辺エリア
実施期間2022年12月
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デジタルツイン上で災害情報を統合するプラットフォームを開発。エリアマネジメントにおける防災まちづくりを推進する。

実証実験の概要

近年、都市部の帰宅困難者対策として民間施設内に滞留スペースや物資の確保を行うなど、民間主体のエリアマネジメントにおける防災まちづくりの取組みが広がっている一方で、発災時の避難誘導など、エリア内におけるソフト対策については、施設間の連携や自治体との連携における「アナログ対応」などの課題がある。

今回の実証実験では、東京ポートシティ竹芝を中心とする竹芝エリアの3D都市モデルを活用したデジタルツイン上で防災まちづくりの関係者が円滑に情報共有や施設管理を行うためのツールを開発し、エリアマネジメントにおける防災まちづくりへの有用性を検証する。

実現したい価値・目指す世界

東日本大震災以降、商業ビル等の施設管理者が帰宅困難者対策として施設内に滞留スペースや物資の確保を行う取組みが増加している。東京ポートシティ竹芝を始めとした複数の大規模都市開発が行われている港区浜松町・竹芝エリアでも、滞留人口が急速に増加しているなか、大規模災害発生時における滞留者支援の必要性が高まっている。

滞留スペースの確保といったハード面での対応については、確保すべき面積の数値基準等があるため、施設ごとに適切な対応がされている。一方、発災時の避難誘導等のソフト面での対応については、施設間の連携不足や、自治体と民間施設の情報共有が紙や電話などの「アナログ対応」となっているなどの課題がある。

今回の実証実験では、東京ポートシティ竹芝のBIMモデルと竹芝エリアの3D都市モデルを統合したデジタルツイン環境を構築し、これを基盤としてエリアの混雑状況情報や一時滞在施設の利用状況、ユーザーから投稿されたまちの被害状況等のリアルタイムデータを可視化するアプリケーションを開発。これを用いることにより、自治体や施設管理者、帰宅困難者等がリアルタイムに情報を把握し、共通認識を持つことで、円滑な避難行動を実施できる環境を構築する。

対象エリアの地図(2D)
対象エリアの地図(3D)

検証や実証に用いた方法・データ・技術・機材

東京ポートシティ竹芝及び周辺エリアの一時滞在施設の情報管理システムと、街区カメラ等による周辺エリアの混雑状況等の可視化システムを3Dビューア上で統合した「防災エリアマネジメント支援システム」を開発した。

ビューアは、東京ポートシティ竹芝のBIMデータをベースとしたLOD4建築物モデル、周辺エリアの3D都市モデルを基盤とし、Unreal Engineのピクセルストリーミング機能を利用したクラウドレンダリングにより『バーチャル竹芝』(3D都市モデル)を構築した。構築した『バーチャル竹芝』の上に、データプラットフォーム(竹芝エリアに設置されたIoTデータを管理する都市OS)から取得した情報を連携する機能を開発し、一時滞在施設の開設状況や満空情報、周辺エリアの危険箇所や混雑情報等のエリアに関する様々な災害・防災情報を統合して表示できるシステムとした。

開発した防災エリアマネジメント支援システムでは、クラウド上での一時滞在施設のステータス(開設状況)管理機能、スマートフォンを用いたまちの被害情報投稿機能、自治体と施設管理者間の連絡・掲示板機能等のインタラクションを搭載した。これらのシステム・機能により、災害時に連携が必要となる自治体及び施設管理者が発災時にリアルタイムに情報共有し、共通認識を持ちながら避難誘導を行うことで、帰宅困難者等が円滑に避難できるようになったか検証した。 

実証の様子(3D都市モデルを活用した防災アプリケーションの操作)
実証の様子(来街者の避難対象施設への入館)

検証で得られたデータ・結果・課題

今回の実証実験では、3D都市モデルを活用した防災アプリケーション(前述した防災エリアマネジメント支援システムにアクセスできるアプリケーション)を通じて、自治体、施設管理者及び帰宅困難者の3者に、発災時における円滑な状況共有や、省力化された情報取得による効率的な避難及びその支援を実現できた。

具体的には、自治体は、周辺の一時滞在施設に一斉に開設指示の連絡ができ、一時滞在施設からも開設状況やまちの被害状況を齟齬なく受信することができた。これにより、自治体は効率的かつ的確に災害時のエリアの状況を理解するとともに、エリア全体の視点から一時滞在施設の開設状況やひっ迫状況を把握することができ、帰宅困難者に対して避難指示を行うことができた。

施設管理者は、自らの一時滞在施設の開設状況をリアルタイムに発信するだけでなく、周辺の一時滞在施設の開設状況やまちの被害情報を受信できた。これにより、自らの施設外の状況も含めたまち全体の状況を把握しつつ、自治体とのコミュニケーションを通じた避難施設の開設や、満空情報の発信を行うことができ、避難施設の円滑な管理運営を行うことができる。

帰宅困難者は、避難先となる一時滞在施設の情報やまちの混雑・被災状況といった避難行動に必要となる情報を事前に速やかに取得することができた。これにより、発災時における街での滞留時間や発災時の避難時間の短縮が実現できる可能性も示唆された。

一方、今後の実装に向けた課題として、3D都市モデル、BIMモデル、IoTデータの連携を標準化する必要性や、カメラやセンサーといった人流センシング以外のIoTデバイスと連携し、発災時におけるまちの詳細な情報を収集できる環境を整え、より安全な避難行動を実現すること等が挙げられる。

混雑状況:混雑状況の表示画面(防災アプリケーション上)
危険箇所:危険個所の表示画面(防災アプリケーション上)
掲示板:各施設間での情報共有画面(防災アプリケーション上)
ルート表示:来街者用アプリ上の表示画面

参加ユーザーからのコメント

・自治体・施設管理者:周辺の一時滞在施設の開設情報、まちの被災状況、混雑状況などのリアルタイム情報を迅速に把握できた。さらに、帰宅困難者への情報発信機能があるため、発災時の情報発信・受信や施設内の一時滞在者の来館対応を省力化できた。
・帰宅困難者:一時滞在施設の現状(開設状況や満空情報)、まちの被災情報、混雑状況をリアルタイムに把握できた。さらに、一時滞在施設への避難ルートが3Dで表示されることで、緊急時の効率的な判断や避難が実現した。 

今後の展望

今回開発したシステムでは、浜松町・竹芝エリアでの発災時の課題解決に向けて、一時滞在施設の状況(開設状況、満空状況)や周辺のまちの状況(被災状況、混雑状況)の円滑な情報連携を実現した。

発災時において、一時滞在施設のリアルタイムな情報を関係者間で如何に共有するかというテーマは、本実証エリア固有の課題ではなく、全国的な課題でもある。本システムを他エリアでも導入できれば、各エリア内の効率的な発災時対応が実現できる。さらに、各エリアで導入した防災エリアマネジメント支援システムをエリア間で連携することにより、より広域的な防災・発災時対応を実現できる可能性がある。

今回構築した3D都市モデルは、エリア防災以外のユースケースでの活用も期待される。現在、竹芝地区では様々なデジタル・エリアマネジメント活動が取り組まれているため、例えば、イベント時の人流情報の可視化等のエリアマネジメントの基盤としての活用を検討する。