3.スマートウェイの実現方策
 
(1) プロジェクトの進め方
 
 1) 社会的合意の形成
<1>  21世紀の国家的インフラであるスマートウェイを推進する上では、広く国民に情報を提供し、社会的合意の形成を図ることが強く求められている。そのためには、スマートウェイに関わる各プロジェクトの評価を定量的に行い、その効果や必要性を十分に分かりやすく説明することによって、事業のアカウンタビリティ(説明責任)を確保していく必要がある。
<2>  また、社会実験を積極的に行うことにより、社会やユーザーの受容性を検証するとともに、実現するサービスの姿を具体的に提示し、社会的合意形成につなげるべきである。社会実験を進める際には、大きな集客の期待できる博覧会やスポーツ大会等のイベントの機会を捉え、積極的に実験の場を設けていくことが必要である。
<3>  国民の一層の理解を得るためには、開発段階のプロジェクトについても、プロジェクトの様々な過程で実験内容やその結果を内外に公開していく必要がある。当面、2000年に実施される走行支援システムに係る技術開発の実証実験については、その意義を十分に踏まえて実施されることが期待される。
 
 2) 明確な目標年次やプログラムの設定
<1>  スマートウェイは、21世紀における先端的国家プロジェクトである。その整備にあたっては、段階的な目標を含む明確な目標年次を明確に設定し、それに向けて効率的・効果的な整備を行っていく必要がある。その際には、資源と時間の有限性及び技術の開発状況を踏まえ、スマ−トウェイとして機能すべきネットワークと提供するサービスの内容とレベルの特定化等について検討される必要がある。また、このようにサービスの内容とレベルを明示することが、基礎的・先端的研究を含む技術開発の着実な促進にとっても極めて重要である。
<2>  概略の目標年次は以下の通りとすることが期待される。
2000年 国内外の参加による走行支援システムの実証実験
2001年以降 特定の地域ニーズに即応した各地イベント等での実証導入(社会実験の積極的実施)
2003年 第二東名・名神や大都市の都市高速道路などで先駆的な導入
2004年以降 道路特性及び地域特性に基づいて逐次スマートウェイ化を推進
2015年頃 全国、主要な幹線道路網においてスマートウェイ化を実現
<3>  また、利用者としての国民をはじめとし、様々な分野の関係者の理解を促していくため、目標年次の明確な設定とあわせ、整備プログラム、各段階におけるスマートウェイの姿や達成レベル、効果等を検討し、提示していくことが必要である。あわせて情報通信をはじめとする技術の開発状況を踏まえながら、適宜フォローフォローアップを行うことも肝要である。
 
 3) 地域の取組み支援
   スマートウェイは地域の諸課題の解決や利便性の向上を図る上で有力な手段を提供するものであり、全国各地域においてもこうした観点からスマートウェイの整備やITSの活用に積極的に取り組むことが必要である。このため、地域が自らの創意工夫によりスマートウェイを地域づくりに活用できるよう、積極的な技術情報の提供、教育や研修による人材育成や技術移転を進めるとともに、地域におけるスマートウェイ導入のガイドライン等の作成をはじめとする積極的な国の支援が求められる。
 
 4) スマートウェイの円滑な導入
   スマートウェイを全国的に導入していくために時間を要する。また、スマートカーも順次普及していくことになることから、システムの開発の進展状況によるばらつきやスマートウェイ普及状況による地域ネットワークのばらつきが生じることとなる。スマートウェイが人中心のシステムであることを念頭に、その展開の途中段階において利用者に混乱が生じないようにする必要がある。そのためには、国民が無理なく習熟できるよう配慮した発展シナリオを構築し、スマートウェイ整備に努める必要がある。
 
(2) 制度・基準類の早期整備
<1>  スマートウェイは全国どこでも安心して使えることが基本的に必要である。そのためにはシステムの互換性・安全性を確保する必要があり、日本版システムアーキテクチャを積極的に活用しつつ、スマートウェイの展開に先立ち、スマートウェイの構造・機能・要件に関する制度・基準類の整備を順次行っていく必要がある。また、スマートウェイ利用に関わる環境整備についても検討する必要がある。
<2>  制度・基準類の整備にあたっては、その迅速な整備に向け、スマートウェイの多くの領域が公共財であることにも踏まえつつ、官民の適切な役割分担と協力体制の構築が必要である。また、国際的な標準化活動にも配慮することが重要である。
<2>  こうした制度・基準類の整備により、システムの普及促進やマーケットの拡大などを通じたコストダウンも図られる。
 
(3) 技術開発、学術研究の推進
<1>  スマートウェイの実現に向け設定した目標に対し、着実な整備が可能となるよう、通信・制御に関する研究、次世代の道路構造や材料に関する研究等学際を含む様々な分野における技術開発を早急に促進していくことが必要である。この際にも、産・学・官の連携体制を構築するべきであり、具体的には研究開発を行っていく上で、総合的な調整を行いうる体制を確立することが望ましい。また、民間企業が、安心して研究開発を継続できるよう、産・学・官の連携により明確な研究方針と目標を提示するべきである。
<2>  スマートウェイを社会のニーズに対応して発展させていくためには、既往研究分野にとらわれない新たな視点・発想に基づく先端的、基礎的な研究・技術開発を継続的に実施していくことが重要であり、国は積極的にこれを支援するべきである。併せて教育による人材育成の体系も見直していくことが求められる。
 
(4) 様々なレベル・範囲での広範な連携と協調の推進
 
 1) 多様な分野の連携強化と推進のための体制整備
<1>  スマートウェイの整備推進や必要となる技術・システム等の研究開発を円滑かつ効率的に進めていくためには、新たな技術創造に資する多様な分野の横断的連携や産・学・官の適切な役割分担の下、強力な協力体制を構築し、効率的・効果的な整備を図る必要がある。そのためには、システム開発等のプロセスをオープンにし、様々な人がこれに積極的に参画できるよう十分に配慮することが肝要である。また、関係省庁の一層の連携が望まれる。
<2>  社会全体として効率的な開発・展開を進めるため、スマートウェイとスマートカーのそれぞれが受け持つ役割が適切に分担されるとともに、相互連携の強化が必要である。このためには、普及の道筋について、技術開発状況を踏まえながら、スマートウェイの展開及びスマートカーの普及の実現性や各々の役割分担にもとづく負担の妥当性等の視点から、継続的な検証が必要であり、積極的な意見交換が望まれる。
<3>  スマートウェイに関連する技術開発や投資分野への民間の参画意欲を喚起するとともに、産業の健全な競争を促進するため、研究開発の動向やその内容など公共が有する情報を利活用できるよう積極的に公開・提供するべきである。
<4>  利用者が望む多様なサービスが民間からの自由かつ創意あふれる提案により実現されるよう、21世紀における新しいパートナーシップの枠組みを確立する必要がある。
 
 2) 国際協調・連携の推進
<1>  ユーザーの利便性を確保し、参画企業の開発・利用コストの軽減を通じた国民負担の軽減を図るべく、必要な国際標準を早期に策定するべきであり、国際標準化活動に積極的な貢献を行う必要がある。
<2>  効率的かつ効果的なITSの推進を図るため、コンセプト検討、研究開発、試行段階から国際的に協調して意見交換を行うことが重要であり、十分な意見交換を可能とするワークショップ等議論の場を設置することも考えられる。
<3>  ITS実現の一歩として、2000年に開催予定の走行支援システムに関わる技術開発の実証実験については、国内のみならず海外からも幅広く参加を募り、オープンな実験の場として提供すること等が考えられる。
<4>  幅広い英知を結集してスマートウェイをより良いものにしていくため、 国内はもとより国際的にも、技術や人材交流の面、さらに、教育や研修による人材育成の面においても連携を進めることが必要である。
<5>  スマートウェイやそれに関わる技術、基準等の国際的普及・促進を図るために、国際機関などと連携しつつ、システムの開発、操作に関する教育・訓練の枠組みを示し、各国が、それぞれの事情を反映したカリキュラムを作成できるような下地を作ることが必要である。

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