III. 道路政策のめざすべき方向

(1)基本的方向の転換

 過去、欧米諸国の水準をめざして「供給量の拡充」を道路政策の主な目的としてきた。しかし、経済・社会や社会資本をとりまく環境は変化しており、「道路の役割の再確認」と「これまでの道路政策の評価と今後の課題」をふまえれば、道路政策をとりまく環境は、「キャッチアップを目標として整備すれば効果があった時代」から「事業目的と社会的な効果を十分確認して投資を判断する時代」へ移行したことを認識すべきである。

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1)基本的考え方 〜供給量から社会的価値へ〜
 このため、道路政策の評価のモノサシを「供給量」から「国民生活や経済活動にとっての価値」(社会的価値)へ転換するとともに、これに伴い政策方針と具体的な目標を見直すことが必要である。その際には21世紀のビジョンである「個性が活きる、活力ある効率的な社会、経済」、「便利でゆとりある質の高い生活環境」、「技術を活かした、環境と共生する新しいライフスタイル」をふまえた方針とするとともに、「作る目標」(整備目標)だけでなく利用者側の立場に立った「使う目標」(サービス目標)を設定して、国民にわかりやすく示すべきである。
 また、この目標を円滑に達成するためには、以下に述べる政策内容の充実と政策の進め方の変革が必要である。

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2)めざすべき方向 〜3つの方針と8つのサービス目標〜
 道路政策のめざすべき方向として、3つの方針と8つの「目標とするサービス項目」(サービス目標)を次の通り設定する。

方針1
経済構造を改革し、活力ある社会・経済を形成するため、社会活動の効率性を高める。

評価のモノサシを「道路延長を伸ばす」から「移動の効率性を高める」に転換する。

サービス目標1.(広域交通の確保)

地域間の競争条件の整備と国際競争力の向上を図るため、人・モノ・情報の広域的かつ円滑な流れを確保する
サービス目標2.(地域自立の支援)
地域における公共サービス等の効率的な提供と産業の創出を図るため、地域自立の基礎条件の確保と交流・連携を支援する
サービス目標3.(渋滞の緩和)
渋滞を緩和し、環境問題への対応と高コスト構造の是正を図るため、都市内 交通の効率化を図る
サービス目標4.(都市の再生・再構築)
都市内の経済活動の活性化と高度な都市生活の実現を図るため、中心市街地 の再生・再構築と都心交通サービスの向上を図る
方針2
質の高い生活環境を形成するため、地域や都市における社会の共有空間としての機能を高める。
評価のモノサシを「車の利便性を高める」から「人(ドライバーを含む)の満足度を高める」に転換する。

サービス目標5.(交通安全の確保)

高齢社会において、誰もが安心して暮らせる生活環境を実現するため、安全で良好なバリアフリーの歩行環境・運転環境を確保する
サービス目標6.(信頼性の高い道路空間の確保)
暮らしの安心を確保するため、日常の生活を支え、災害に対して安全で信頼性の高い道路空間を確保する
方針3
新しいライフスタイル実現の鍵となる、環境保全や情報化等の新しい分野に貢献する。
評価のモノサシを「道路の直接効果を評価する」から「関連してもたらされる多様な価値も評価する」に転換する。

サービス目標7.(環境の保全・向上)

持続可能な発展と質の高い社会の実現を図るため、地球・自然環境の保全・回復や沿道環境の保全・向上に努める
サービス目標8.(高度情報通信社会の支援)
高度情報通信社会の構築に貢献するため、道路交通分野の高度情報化を推進するとともに情報ハイウェイの構築を支援する

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