II.道路政策の課題

(2)これまでの道路政策の評価と今後の課題

 平成9年に財政構造改革会議企画委員会が行った公共事業費に関するアンケート調査によれば、予算を増やすべき事業のうち最も上位を占めていたものは「道路」であった。道路審議会では、「キックオフ・レポート(注2)」、「ボイス・レポート(注3)」、「中間とりまとめ(注4)」による国民との対話をふまえて、これまでの道路政策を、実績、実施、計画及び費用負担の4つの視点から評価し、以下の課題を明らかにした。

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1)道路整備の実績
 これまでの道路整備は、我が国の経済成長と先進国へのキャッチアップ、国民生活の向上に寄与してきた。しかし、自動車交通需要の急激な伸びに対応できておらず、ストック面で未だ不十分であり、車優先の道路整備を進めてきた結果、人、生活の視点から見ると安全や環境の面での課題も多い。また、マルチモーダル施策(注7)の推進や情報通信技術の活用、車両大型化への対応等、ソフト施策をはじめとする様々な取り組みも始められてはいるが、渋滞対策、交通安全、環境対策などのサービスレベルに対する国民の評価は厳しい。
 道路整備に対するニーズは全国的に依然として大きいものの、地域によって事業目的や社会的な効果が異なり、整備対象やサービスレベルに関する要求の違いが顕在化しつつある。今後は、単に供給量を拡充することを目的とする道路政策では、道路整備費を負担する国民の理解が得られなくなっている。  このため、道路整備は依然必要であるが、ソフト施策の取り組み等も一層進める必要がある。また、これまでの道路政策の目的を見直すとともに、利用者のニーズを的確に把握したうえで、事業目的と社会的な効果を十分に確認して投資を判断する必要がある。

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2)事業実施の効率性$透明性
 いわゆる「ばらまき」や他事業との重複投資、高コストなど、事業の非効率性やコスト意識の低さに対する厳しい意見がある。また道路利用者から料金を徴収する有料道路事業者に対しても、民間企業に比べて経営合理化の努力が不足しており、それがコスト高につながっているのではないかとの指摘がある。透明性の点では、費用便益分析の公表などは始められているが、計画策定のプロセス、入札や契約行為等に関して厳しい意見がある。
 実際の道路整備においても、用地買収等の際に住民と行政との間の合意形成や関係者間の利害調整に時間を要している事例や、路上工事等の際に各事業者間の調整が不十分であるため、掘り返しによる工事の多さや工期の長さに結びついている事例も見受けられる。
 このため、現在のコスト縮減、投資の重点化の取り組みに加えて、制度の整備、運用方法の改善を行うとともに、さらに情報公開を進めるなど、効率性と透明性の向上に対する一層の取り組みが必要である。これらは相互に関連しているため、個別の取り組みでは効果が薄く、道路政策の進め方全般にわたる見直しが必要である。

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3)事業展開の計画性
 これまでの道路整備は、道路整備五箇年計画に基づいて緊急かつ計画的に進められてきた。その結果、国土計画・経済計画などの上位計画や新産業都市やテクノポリスなどの地域計画との整合性が確保され、国民生活の向上や計画的な地域開発などに貢献してきた。道路整備五箇年計画では、急増する需要に対して大きく立ち遅れた道路整備の実態をふまえ、供給量を主な指標とする全国一律の「作る目標」(整備目標)によって道路整備の必要性が説明されてきた。しかし前述のとおり、利用者ニーズの多様化に伴って、この目標だけでは国民の理解を得られにくくなっている。
  個別の事業について、事業の内容、関連事業との関係、国民生活や経済活動にとっての効果等、事業の必要性が十分に説明されていない事例や、事業実績の評価や進捗状況の管理等が十分でないため、事業が必ずしも計画通りに行われていない事例も見うけられる。
 このため、道路整備の必要性について国民の理解を得るためには、わかりやすい目標の設定と事業の内容、効果等についての十分な説明及び計画的、効率的な事業展開が可能となるような仕組みづくりが必要である。

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4)道路整備に関する費用負担
 我が国の道路整備は、道路特定財源制度と有料道路制度という2つの制度によって緊急に進められ、経済発展や国民生活の向上に寄与してきた。  このうち、揮発油税などの道路特定財源制度は、道路整備の受益者であり、道路の損傷等の原因者でもある自動車利用者の負担により、道路の新設や維持・管理、交通安全対策、沿道環境対策を行う制度であり、国民の理解を得て、これまで安定した財源を確保し、計画的な道路整備に寄与してきた。現下の厳しい財政事情を見れば、社会資本整備を進めていくうえで、受益者・原因者負担について国民の理解を得て財源を確保することが重要であり、道路について今後とも本制度の堅持が必要である。その際、道路予算の使途や道路整備の効果がわかりにくいという意見が見られることから、国民の理解が得られるよう情報公開・提供に努める必要がある。
 なお、受益と負担の観点から見て、より公平な負担のあり方や環境対策の視点も含めた負担のあり方について検討すべきではないかとの意見もあることから、幅広い検討を行っていくべきと考えられる。
 また、有料道路制度は、道路を整備するにあたり、財政投融資資金等の借入を行い、道路の利用者から料金を徴収してその返済に充てる制度で、この40年間に6,000km強の高速自動車国道ネットワークを形成するなど、我が国の幹線道路整備を着実に進展させてきた。しかしながら、経済の低成長、物価の安定化の中で、公共料金に対する国民の関心が高まっており、我が国の有料道路料金の割高感から利用者の負担が過重であるとの意見も多い。このため、有料道路の整備に要する費用の適正な負担のあり方についてさらに検討を深める必要がある。

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