1) 基本方針

 Q5−1 基本方針として、何を決めればいいのか。

地域・まちづくりの観点から、地域交通サービスの充実により、どのような将来像(生活、活力、環境等)が描けるのかを示す。

 交通サービスの利用の増加や交通サービスの事業性の改善など、交通施策の領域での方針ではなく、地域・まちづくりの観点から、地域交通サービスの充実により、どのような将来像(生活、活力、環境等)が描けるのかを示すことが重要である。
 地域交通の計画は、他の政策分野の計画と独立で成立するわけではない。地域が目指す将来の姿に対し、下位計画として、都市計画、交通計画、医療計画、コミュニティ計画といったさまざまな分野別の計画が策定され、その中で地域交通の計画は、市町村が目指す姿のどの部分を、どのように実現するかを示すことが重要である。

  まちづくりの面で様々な波及効果を評価した方針を設定

・京都府京丹後市では、公共交通の活性化で重要なことは、運行収支でその価値を判断するのではなく、まちづくりの面で様々な波及効果をもつことであると考えている。
・このようなことから、公共交通の施策「かきくけこ」として、次のような方針を掲げている。
○か:観光・環境保全・過疎対策
○き:協働体制の確立(地方自治体・市民・地元企業・運行事業者のそれぞれが、広域ネットワークでつながり、手を取り合う活動を進める)
   客観的評価主義の確立(運行収支のみで良し悪しを判断しない)
○く:車社会からの脱却(モビリティ・マネジメントの推進)
○け:経済基盤整備・健康増進対策
○こ:高齢者福祉・子育て支援・交通安全対策(子供からお年寄りまで、誰にも、やさしい公共交通の整備を進める)
交流人口の増加対策、国際化(外国人観光客の誘客)


  人々のふれあい・交流が促進され、持続可能な活力あるまちが形成されることを目指す

・愛知県三好町では、交通基本計画において、歩行者・自転車・自動車・公共交通などそれぞれの交通手段が共存でき、三好町に住む人、訪れる人、すべての人にやさしい交通環境の実現を目指している。
・このことによって、人々のふれあい・交流が促進され、持続可能な活力あるまちが形成されることを期待し、《 “安全・安心・便利”な交通が継続するまち〜 人が優先された交通環境へ〜》を基本理念として位置づけている。


  コンパクトなまちづくりのための公共交通活性化を位置づけ

・富山市では、まちづくりの方針として、「鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化させ、その沿線に居住、商業、業務、文化等の都市の諸機能を集積させることにより、公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」の実現を目指している。
・富山市が目指すコンパクトなまちづくりは、生活者の視点を第一に打ち出し、自動車に依存しなくても日常の生活サービスを利用できる生活環境の形成を目指すものとしている。
・また、コンパクトなまちづくりを推進するため、都心、地域生活拠点等へ人口や都市機能の集積を図るとともに、郊外や中山間地域においては、地域特性に応じた生活交通の確保を目指すなど、富山市が目指す都市構造との関連で公共交通活性化の考え方を示している。





 Q5−2 基本方針を決めるために留意すべきことは何か。

住民に分かりやすく、支持されるものであること。
利害関係者にとっても分かりやすく、問題意識に沿ったものであること。

 基本方針は、住民に分かりやすく、支持されるものであることが重要である。そのためにも、地域・まちづくりや、住民の生活利便性の向上に必要な交通サービスの充実に対しては、自治体が積極的に関与する姿勢があることを打ち出すことが重要である。住民の支持があってこそ、利害関係者との調整においても自治体のスタンスを主張することができる。
 また、基本方針は、利害関係者にとっても分かりやすく、問題意識に沿ったものであることが重要である。このためにも、「地域のため」、「住民のため」といった広い視点で問題意識を共有しておくことが重要である。(Q2−6も参照のこと)


  地域・まちづくりや生活利便性の向上に必要な交通サービスに対しては積極的に投資

・公共交通の活性化は単に利用者を増やすために取り組んでいるのではなく、人口減少と超高齢化社会に備えるために取り組んでいる。富山ライトレールの整備に際しては、当時、世の中に<赤字=悪>という潮流があり、独立採算が無理な公共交通に対し、市が関与することを批判する指摘もあった。しかし、市長は「公共交通を事業の収支だけで論じてはいけない」という考えを持っており、市では公共交通をまちづくりの軸となる都市施設と捉えている。(富山市)
・公共交通は、医療や福祉、教育、観光等の利用に結びつける基礎的なインフラであると考えている。市町村合併を契機としたバスサービス網の再編にあたっては、従来の費用の枠にとらわれず、住民の視点に立って、交通サービスの水準や生活利便性の向上が必要と判断すれば、最低限必要な投資は行うという考えで取り組んだ。(長野県木曽町)



2) 達成目標

 Q5−3 達成目標は、定める必要があるのか。

計画の策定、実施、評価を行う上で基準となる。

 モニタリング、フォローアップ及びその評価に基づく改善を継続的に実施する(PDCAサイクル)上で、評価の基準となる目標設定は重要である。
 また、短期、中期、長期など時間軸に沿って目標を設定することで、関係者や地域の住民と共通の認識を確立することができる。
 なお、支援制度においては、取組の事前評価の実施や定量的な目標値を掲げることが支援の要件となっている場合もある。


 Q5−4 達成目標として、何を定めればいいのか。

地域交通サービスの充実により、どのような将来像(生活、活力、環境等)を目指すのかということと関連して設定する。

 達成目標は、地域交通サービスの充実により、どのような将来像(生活、活力、環境等)を目指すのかということと関連して設定することが重要である。
 例えば、キーワードとしては、住民の移動手段の確保、 中心市街地活性化、環境問題対応、渋滞対策、観光振興などが考えられる。
 また、目標は、達成度合を測るため、可能な限り定量化することが重要である。
 但し、定量化にこだわり過ぎて、計測するためだけに毎回費用が発生することにならない様にすることも重要である。
 関係者で共有したり、公表することを考えれば、目標としての分かり易さやモニタリング(観測)のし易さを考慮する必要がある。




 Q5−5 達成目標を定めるために留意すべきことは何か。

目標の設定にあたっては、関係者間で協議し、合意形成を図ること。
掲げた数値は、どのような意味をもつのかを吟味して定めること。


 設定された目標は、関係者間が合意し、共通の目標とすることが重要である。目標の設定にあたっては、関係者間で協議し、合意形成を図ることが必要である。
 また、目標値は、そこで掲げた数値は、どのような意味をもつのかを吟味して定めることが重要である。
 交通施策の実施は、すべてが一度に実施できるわけではなく、段階的な取組になることが想定される。このため、目標値についても、短期・中期等の達成段階を設定することが考えられる。










(END)