土地政策審議会(第11回)
議事概要


平成8年11月21日
国土庁 土地局 

 11月21日午前10時より、内閣総理大臣官邸において、第11回土地政策審議会が開催された。
 企画部会から、答申案「今後の土地政策のあり方について」の報告がなされ、審議の結果、全会一致で承認された。なお、答申は、その場で、会長から内閣総理大臣に手交された。
また、各委員から出された意見等の概要は次のとおりである。


土地政策審議会答申について

国土庁土地局
一 審議の経緯

 土地政策については、平成元年に制定された「土地基本法」に基づき、平成3年には「総合土地政策推進要綱」が閣議決定され、総合的な土地政策が推進されているところである。
 しかしながら、土地をめぐる状況の変化や経済・社会の構造変化、各般の構造改革の必要性を背景として、土地の有効利用をはじめとする土地政策の新たな展開が求められるようになってきている。
 このため、土地政策審議会においては、4月24日に、内閣総理大臣より、「今後の土地政策のあり方について」諮問を受け、11月21日に答申をとりまとめた。

二 答申の概要

1 土地についての基本的認識

 土地基本法の定める土地についての4つの基本理念のうち、今後の土地政策の中心的な課題は、土地についての公共の福祉優先の観点を押し進め、土地の適正な利用の実現を図ることである。土地の所有には、利用の責務が伴う。
 <土地についての基本理念>┌ 1 土地についての公共の福祉優先
              │ 2 適正な利用及び計画に従った利用
              │ 3 投機的取引の抑制
              └ 4 価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担
2 土地政策の新たな展開

 適正な土地利用の推進に向け、今後、新たな土地政策要綱を策定し、その効果的な推進を図っていく必要がある。

3 土地問題に対する基本的認識

 (1) バブル期の地価の高騰とその後の下落の影響

 資産格差の拡大や良質な住宅の取得難、社会資本整備の遅れ、企業のバランスシートの悪化や金融システムにおける不良債権問題等を引き起こした。
 (2) 地価の動向
 地価は、全国ベースで引き続き下落し、いわゆるバブルの部分は解消された状況にある。商業地の地価は、収益還元価格と比較すると、バブル期におけるような乖離は相当に縮小してきている。住宅地の地価は、大都市圏において、住宅を新規に購入するに際しては、住宅の規模、立地等の質の面からはまだ高い水準にある。
 地価については、一般的には、その引き下げを土地政策の目標として掲げ、国民的合意のもと、地価を抑制するための緊急的な介入策を講じなくてはならない状況にはなくなっている。しかし、経済状況の変動等によっては、高騰の恐れも否定できない。

 (3) 土地利用の現状

 大都市地域を中心とする低未利用地の増加。既成市街地における住宅・社会資本整備の遅れ。都心部の空洞化。郊外のスプロール化、土地利用の混乱。

4 土地政策の基本的考え方

 (1) 今後の土地政策の目標

 「所有から利用へ」の理念の実現を図り、ゆとりある住宅・社会資本の整備と、自然のシステムにかなった豊かで安心できるまちづくり・地域づくりを目指した適正な土地利用を推進する。
 (2) 土地政策の基本的方向

   ┌ 1 土地の有効利用の促進
   │ 2 総合的な土地利用計画制度の整備・充実
   │ 3 土地所有者と地方公共団体の責任と役割の明確化
   │ 4 土地市場の活性化等に向けた土地情報の整備・提供
   └ 5 的確かつ機動的な地価監視体制の整備等

 (3) 土地の有効利用の考え方

 一定の地域的な広がりのなかで、適正かつ合理的な土地利用計画に則して、安全性・快適性・利便性等が確保された質の高い都市環境・地域環境の形成を目指す。単に高度利用を追求した経済効率的利用という視点だけではなく、社会的観点から総合的に効果的と判断される社会効果的利用の視点が重要。
 (4) 土地の有効利用の基本的方向
 今後の土地利用のあり方を考えると、都市に本来必要な居住、業務、環境等の諸機能のバランスの回復と、スプロール等で失われてきている都市を取り巻く田園や自然の豊かさの回復を進めていくことが必要。
 そのためには、大都市地域の既成市街地において、都市基盤施設の整備、密集市街地の防災まちづくり、居住の回復と職住近接を目指す都心居住等を推進し、居住水準と都市環境の質的向上に重点を置いた土地の有効利用を進めていくことが必要。
 また、都市近郊については、自然的土地利用を保全しつつ、質の高い市街地の形成を図ることが必要。
5 個別施策の展開方向

 (1) 土地利用計画の整備・充実

 土地利用基本計画や市町村マスタープランの活用と地区レベルでの詳細な計画の策定が必要。特に都市計画制度による地区計画等の活用を図る。
 協議会やアドバイザー等を活用し、住民参加のシステムづくりを図る。
 生活関連施設への支援措置を拡充し、土地利用計画の実効性の確保を図る。
 (2) 低未利用地の有効利用
 土地の集約化のため土地の権利移転を円滑にできるような新たな制度の検討。民間都市開発の支援、土地利用転換計画の策定の支援。
 市街化区域内農地の良好な住環境を備えた宅地等への転換。
 (3) 密集市街地の再整備
 防災上危険な木造建築物の除却・建て替えの促進の制度や権利移転を円滑にする制度を創設するなど、緊急整備を要する密集市街地などの地域における総合的な施策を展開する。
 (4) 都市基盤施設の整備の促進等
 重点的な投資を行い、公共事業用地の取得や既存ストックの有効活用を促進する。
 (5) 良質な住宅・宅地の供給
 都心居住に向け、公民協調による住宅・宅地の供給と市街地の整備を図る。公的助成による共同賃貸住宅の供給を促進。定期借地権の活用や住宅建築コストの低減による住居費負担の軽減を図る。
 (6) 防災、福祉等、土地の有効利用促進にあたっての留意点
 防災、福祉、環境、文化等のニーズへの対応を図る。最低敷地規模制度の活用による小規模敷地の統合化を進める。土地・建物の一体的整備を図る。
 定期借地権制度の普及促進を図る。多様な資金調達方法を整備。
 (7) 土地に関する情報の整備・提供
 幅広い土地情報の整備・提供を図るとともに、地理情報システム(GIS)の整備を進める。
 (8) 土地の有効利用促進のための土地税制
 保有課税については、土地の有効利用を促進する観点から、公的土地評価の均衡化・適正化を図りつつ、資産価値に応じて適正な負担を求めるべきである。
 不動産取得税及び登録免許税については、有効利用に向けた土地取引の活性化の観点から、固定資産税の土地の評価替えに伴い、その負担が急増するようなことのないよう、適切に対応する必要がある。
 譲渡益課税については、土地の公共性に鑑み、有効利用に結びつく土地の円滑な供給に資する観点を踏まえ、長期・安定的な制度の確立を図るべきである。
 (9) 機動的な緊急地価対策の整備等
 地価高騰の恐れが生じた場合には、的確な対応を適時に講じることのできるよう、土地取引規制、土地関連融資規制等の緊急地価対策を整備する。
 (10) 国土政策との連携
 首都機能移転の推進に当たっては、機動的な土地投機防止対策等を講じる必要がある。
 (11) 土地に関する基本理念の普及・啓発等
 土地に関する基本理念の普及・啓発を図るとともに、土地に関する調査・研究を推進する。

問合せ先:国土庁土地局土地政策課 (課長) 長瀬、 (課長補佐) 河野
     (電話) 03-5510-8030 (FAX)03-3501-8828