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「国土と環境を考える委員会」提言

はじめに
 健全な環境を将来世代に引き継ぐことは、現在の世代の責務であり、人類共通の課題である。環境問題の解決は、今や国際社会で重要な課題となっており、我が国も全力を挙げて取り組んでいるところである。社会資本整備を通じた国土づくりを所管する建設省においては、平成6年に「環境政策大綱」を策定し、その中で「環境の内部目的化」を掲げ、住宅・社会資本整備に当たって、自然環境の保全・回復に努めるとともに、自然環境と調和のとれたゆとりとうるおいのある環境の創造に向けた諸施策を実施するなど、環境施策を積極的に展開してきているところである。

 しかし、今日、環境をめぐる諸情勢は大きく変化している。すなわち、近年、暴風、集中豪雨、異常高温、竜巻などの異常気象による災害が発生しているため、地球環境問題が予想以上に深刻化してきているとの認識が広まっており、人類の生存基盤が脅かされるような状況である。また、ダイオキシン等の化学物質による新たな環境問題も顕在化してきている。

 我が国の経済社会には、多くのエネルギーを消費して大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動、生活様式が根深く定着している。上記の異常気象もこのような人類の行為がその原因であるとの認識が広がっている。国民がそのような環境への負荷が大きい自らの暮らしぶりを見直し、持続可能な循環型社会を形成していくことが急務となっている。

 人間活動は、国土を基礎として展開されるものであり、国土のあり方が、人間活動の様式、ひいては環境問題の解決に与える影響は大きい。したがって、21世紀においては、持続可能な循環型社会の実現に貢献し、美しく安全で環境にやさしい国土を形成していくことが大きな課題である。

 本委員会は、本年5月に建設大臣の要請を受けて、21世紀における環境面から望ましい国土のあり方と、その形成に向けた取り組み方について検討を行った。環境問題に対する委員の認識は必ずしも完全に一致したものではないが、上記の趣旨の下で、委員各位の自由な発言を基に本提言としてとりまとめたもので、これについては委員全員の合意を得たものである。

 本提言は、建設大臣の要請を受けてとりまとめたものであるが、環境問題は今や行政のみの取組みでは解決できなく、国民ひとりひとりの意識とライフスタイルの変革が必須であることに鑑み、まず、官民を問わず広く日本国民全体に対して呼びかけ、その上で、建設省が果たすべき役割、取り組むべき施策の方向性について述べることとした。建設省においては、その実現可能性を追求し実施に移すことを期待するものである。

 平成12年11月

「国土と環境を考える委員会」委員長
近藤 次郎

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