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「国土と環境を考える委員会」提言

環境問題に対する基本認識

2.人間活動と環境問題

 現在の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済システムは、我々に飛躍的な生活レベルの向上をもたらしたが、人類の長い歴史の中からみれば、非常に例外的で突出したものであり、環境に多大な負荷を与えてきた。その結果、負荷の質と量は自然のもつ回復能力の許容限度を超え始め、その影響が地球規模にまで及び、さらに深刻化している。環境問題においては、環境負荷の発生から問題の顕在化に至るまで、また対策の実施から効果の発現に至るまでに相当な時間を要することを考えると、我々は、人類史上はじめて「地球の限界」に直面しており、このまま推移すれば将来世代に重大な制約条件となる負の遺産を残す結果となりかねない。
 このため、今、まさに我々の文明の英知を結集して環境問題に取り組むことが我々に与えられた責務であり、その取組みは、これまでの施策や体制の延長線上のものにとどめてはならず、例えば、化石燃料や原子力に依存する状況を、エネルギー使用の効率化や自然エネルギー(太陽光、風力等)の活用等により、地域で必要とするエネルギーはできる限りその地域で確保するように変えていくなど、従来とは画然と違ったものでなければならない。
 また、環境問題に取り組むにあたっては、環境は多くの要素で構成されており、ある環境の要素を改善しようとする場合、それが他の要素にはマイナスの影響として作用することがあるなど、相互の関係要素がトレードオフの関係になることがあることにも十分に留意する必要がある。
 このため、個々の環境問題の解決に向かって個別に目標を立て対応していく際にも、具体的な取組みを行う中では、環境全体に与える影響にも十分に配慮し、問題が確認されれば、必要に応じてその目標や取組みを修正していくことが必要である。すなわち、総合的な環境改善を常に念頭においた取組みを行うことが重要である。
 冒頭に述べたように、今日の環境問題は、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済システムをはじめとする人間活動に起因しているものである。したがって、さまざまな環境問題を的確に解決するためには、持続可能な社会(環境の有限性を認識し、環境のもたらす恵みを将来世代に引き継ぐという視点から、自然との共存が図られ、自然界の物質循環や生態系への負荷が小さい諸活動が展開される、最適生産・最適消費・最少廃棄型の社会経済システムが実現された社会)を目指して、国民や企業が環境に対するグローバルな高い意識を持つとともに、行政など一部機関の取組みだけではなく、多様な主体が共通の認識のもと、それぞれ具体的に自分の属する地域などにおいて行動を起こし、それぞれが果たしうる役割・責任を分担することが極めて重要である。また、その際、各主体の行動を促すため、国民が環境に高い価値を認め、環境保全にかかるコストを負担するシステムや各主体の間の合意を形成するシステムなどを含む社会システムを築くことが重要である。これらのことを通じてはじめて、循環型で自然と共存し、ゆとり、個性や安心といった真の豊かさを享受することに価値を置く社会の実現と地球全体の環境保全が可能になるものである。

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