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「国土と環境を考える委員会」提言

環境面から見て望ましい国土づくりの基本的な方向
 国土は、人間活動の基礎であるとともに、自然環境や生活環境を形成していることから、国土のあり方は、人間活動を規定するのみならず、自然環境、生活環境を通じて、地球環境に大きな影響を及ぼすものである。
 これまでの国土づくりは、物質的豊かさ、便利さを追求する理念の下に行われてきたが、21世紀においては次世代により良い環境を引き継ぐため、持続可能性、自然との共存、ゆとり、個性や安心といった理念を主軸とすることが重要である。このためには、現状における問題点や教訓を踏まえ、長期的、広域的な視点にもとづく取組みを行うことが不可欠であり、できる限り地球環境への負荷が小さいような持続可能な社会の基盤となる国土を形成するとともに、地域・国土づくりを通じて、国民の環境意識を高め行動を促し、持続可能な社会の実現に貢献することが重要である。

1.環境面から望ましい国土の姿とは
  〜自然と共存しうる循環型国土の形成
 人類の生存基盤である豊かな自然環境を享受しつつ、将来に継承するとともに、地球環境問題の解決に寄与するために、資源・エネルギーの循環的、効率的利用を進め、自然界の物質循環や生態系への負荷の小さい諸活動の営みを可能とし、持続可能な社会の基盤となる国土(循環型国土)を形成していく必要がある。
 このためには、国土利用を効率的で環境負荷の小さいものとする必要があり、
(1) 各地域においては、次のような点に留意しながら、循環型で自然豊かな個性ある地域づくりを進めることが重要である。

1 行政区画にとらわれない地理的・自然的条件によるまとまりを意識した地域づくり
 各地域で良好な自然環境や生活環境を整え、地球環境への負荷の小さい地域づくりを行っていくため、行政区画にとらわれない自然のランドスケープ(自然の地形又は地形に基づく一定の区域)や自然の物質循環、生態系のまとまりを重視した地域づくりを行っていく。

2 自然と共存しうるコンパクトで美しい都市づくり
人口減少も見据え、都市的土地利用の高度化を図り、省資源、省エネ型のコンパクトで美しい都市づくりを進める。その際、都市的土地利用などの需要が小さくなった土地の活用や都市施設の多機能的な利用等により自然環境の回復を図る。(「コンパクトな都市」とは、適正規模論の視点等により、都市周辺の自然を保全するとともに、環境負荷軽減に配慮しつつ中心市街地への機能集積を進めた、集約型の都市をいう。)

3 中山間地域等における豊かな自然の保全とそれを支える地域づくり
持続可能な社会の基盤となる循環型国土を実現するためには、都市の環境負荷を小さくするだけでは不十分であり、中山間地域等を、自然と共存しうる循環型国土の先進空間で、かつ、国土保全上も重要な地域であると位置付け、その豊かな自然の保全に努めるとともに、それを支えるコミュニティの形成につながる地域づくりを進める。

4 自然環境の保全・回復
 健全な生態系は、人類にとっても生存基盤であるという認識に立って、積極的に自然環境の保全・回復に取り組む。国土の中の様々なレベルのエコロジカルネットワークの回復を図ることも重要な施策となる。このための取組みは柔軟で順応的なものであることが望ましい。
(2) また、全国的には、各々の循環型の地域が様々なネットワークで結ばれ、互いに連携・交流しながらより大きな規模の循環を形成することにより、都市と中山間地域等が共存した循環型の国土を形成していくことが必要である。このため、地域間の有機的な連携をより小さい環境負荷で可能にする交通基盤や情報通信基盤といった交流ネットワークや全国的な自然のネットワークを備えた国土構造の形成を進めることが重要である。

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