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平成8年

建設業活動実態調査結果報告(抜粋)

                              建設省 大臣官房  技術調査室
                                   建設経済局 調査情報課
                                         国際課
                                         建設業課
                                         建設振興課


平成9年1月16日公表

1.はじめに

 近年、バブルの崩壊、海外投資等の環境変化により、建設活動の動向にも大きな変化が生じて いるが、建設業の今後のあり方を考え、また、建設産業の新しい構造改善の方向性を検討するために、 その実態の的確な把握は不可欠である。このため、建設業全体の中でも、特に、多角化・国際化等が進 展しつつある大手建設業者56社(総合建設業36社、設備工事業20社)を対象に直近の決算期末または決算 期間の企業活動の実態を調査した。
 本報告は、その主な結果を抜粋したものである。

2.人員の状況−従業員数は昨年に続き削減傾向

(1)職種別常時従業者数
 職種別常時従業者数は、その他(サービス、運輸従事者等)を除いて全ての職種で減少し、 全体でも1.5%の減となった。男女別でも共に減少したが、女性は、2年連続で増加した技術職を除い て、他はいずれも男性を上回る減少幅となった。
 昨年に引き続き、全体的にゆるやかな削減傾向が 続いている。

表−1 職種別常時従業者数  (単位:人、%)

  1 事務職  2 技術職  3 技能職  4 その他  5 合 計 
47,431 149,784 23,720 4,240 225,175
前年比 0.8 △ 1.2 △ 5.1 8.1 △ 1.1
27,626 3,345 73 1,817 32,861
前年比 △ 4.4 0.6 △59.0 △ 2.5 △ 4.1
合 計 75,057 153,129 23,793 6,057 258,036
 前年比  △ 1.2 △ 1.2 △ 5.5 4.7 △ 1.5
(2)業務部門別常時従業者数
 業務部門別常時従業者数については、「海外事業部門(16.3%増)」「海外(11.1%増)」 「設計・エンジニアリング部門(2.6%増)」は増加したが、「研究部門(1.0%減)」「情報処理部門 (6.4%減)」など、他は軒並み減 少した。
 近年の動向である企業の国際化や多角化に関する部門に ついては、海外工事の増加を受けて国際化に関する部門 は大幅に増加したものの、多角化に関する部門は 全体的に縮小傾向が続いている。また、「研究部門」「情報処理 部門」等の間接部門についても減少が続 いており、昨年に引き続き、海外部門等への重点化を図りつつ、全体的に は企業のスリム化を図ろうとす る傾向がうかがわれる結果となっている。

表−2 業務部門別常時従業者数   (単位:人、%)

業務の部門 常時従業者数 部 門
人 数 前年比 構成比
@ 国内在住 設計・エンジニアリング部門 土木建築の調査設計部門 11,142 △ 2.8 4.3 多角化
設備の調査設計部門 5,355 6.0 2.1
エンジニアリング部門 5,646 17.8 2.2
土木建築施設の保守管理部門 540 △33.3 0.2
22,683 2.6 8.8
本業の分社化による関連企業部門 5,626 △ 6.9 2.2
兼業部門 自社内の兼業部門 1,330 △ 8.9 0.5
兼業に関する関連企業部門 1,260 △ 3.6 0.5
2,590 △ 6.4 1.0
研究部門 5,198 △ 1.0 2.0
情報処理部門 1,908 △ 6.4 0.7
海外事業部門 2,363 16.3 0.9 国際化
上記以外の国内建設事業・
その他管理部門
本社・本店 28,750 10.8 11.1
支社・支店・営業所 93,305 △ 7.2 36.2
工事現場・作業所 91,243 △ 0.0 35.4
213,298 △ 2.0 82.7
小 計 253,666 △ 1.7 98.3
うち 外国人 209 △ 4.6 0.1
A海  外 支店、駐在員事務所及びその工事現場 4,370 11.1 1.7 国際化
うち 現地常用雇用者 1,368 24.0 0.5
合  計  @+A 258,036 △ 1.5 100.0
海外現地法人へ出向し、現地法人に籍のある者 305 5.9

3.多角化の状況−多角化は後退、「その他の事業」の売上高が大幅減

(1)事業別国内売上高
 直近1年間の事業別国内売上高の総額は前年比 2.7%の減少となったが、本業以外の「その 他の事業」は15.3% 減と大幅に減少し、全体に占める割合も 4.3%(昨年は 4.9%)に減少した。
 なお、その他の事業の内容(重複回答)は、不動産業35社、建築設計業10社、建設コンサルタント 9社、 測量業 7社など、昨年とほぼ同様の内容だった。

表−3 事業別国内売上高の前年比および構成比  (単位:%)

     発注者
事業別
前 年 比 構 成 比
 公 共   民 間   合 計   公 共   民 間   合 計 
1 土木建築工事 3.2 △ 1.6 0.0 27.6 52.7 80.3
2 設備工事 4.9 △14.3 △11.4 2.7 12.7 15.4
3 その他の事業 4.8 △16.2 △15.3 0.3 4.0 4.3
合  計 3.3 △ 5.1 △ 2.7 30.6 69.4 100.0
(2)設備投資の状況
 直近1年間の設備投資額は前年比17.2%減と大幅な減少となった。内訳別では、研究所20.1 %増、資機材センタ ー17.8%減、情報センター102.5%増、その他19.1%減と、昨年とは逆に資機材セン ターや福利厚生施設、事務所土地建物等のその他が、大幅な減となった。

4.国際化の状況−資機材輸入高は引き続き増

(1)海外建設事業の状況
 海外建設事業について、直近1年間の受注高、将来受注高を伸ばしたい国の上位5カ国まで を回答してもらったところ以下のような結果となった。
@海外建設事業の受注高の多い国
 海外建設事業の受注高の多い国は、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タ イ、香港の順で、昨年とほ ぼ同様の結果となった。主な原発注者は、特にマレーシア、インドネシア等 で、昨年と比べて日系企業の増加が際だっている。
A海外建設事業の受注高を伸ばしたい国
 海外建設事業の受注高を伸ばしたい国については、インドネシア、ベトナム、タイ、 マレーシア、フィリピン の順となり、インドネシア、タイ等が昨年と比べると順位をあげている。主な原 発注者では、日系企業からの受 注を伸ばしたいとする割合が高まっている。

表−4 直近1年間の受注高の多い国   (単位:社)

平成7年調査
受注高の多い国   
主な原発注者 平成8年調査
受注高の多い国   
主な原発注者




 








 

 




 








 

 
1 シンガポール 7 19 4 30 1 シンガポール 8 16 4 28
2 タ  イ 12 7 1 20 2 マレーシア 11 8 6 25
3 インドネシア 7 8 4 19 3 インドネシア 12 5 5 22
4 マレーシア 7 6 6 19 4 タ  イ 12 5 3 20
5 香  港 5 3 5 13 5 香  港 5 2 7 14
  その他 34 20 47 101   その他 47 14 37 98
合  計  72  63  67  202 合  計  95  50  62  207

表−5 将来 受注高を伸ばしたい国   (単位:社)

平成7年調査
受注高を伸ばしたい国
主な原発注者 平成8年調査
受注高を伸ばしたい国
主な原発注者




 








 

 




 








 

 
1 ベトナム 17 1 12 30 1 インドネシア 17 4 9 30
2 インドネシア 11 6 9 26 2 ベトナム 16 3 5 24
3 マレーシア 6 10 7 23 3 タ  イ 11 2 10 23
4 中  国 18 2 2 22 4 マレーシア 7 9 6 22
5 フィリピン 13 5 3 21 5 フィリピン 16 2 3 21
  その他 25 28 29 82   その他 31 22 29 82
合  計  90  52  62  204 合  計  98  42  62  202
(2)資機材等の輸入の状況
 直近1年間の資機材等の輸入高は前年比21.2%増で、直接輸入高9.1%増、その他輸入高 27.2%増といずれも2年 連続で増加した。資機材毎に見ても、骨材を除いて増加と答えた企業数の方 が減少と答えた企業数より上回っている。

5.技術開発等の状況−研究開発費は減、環境保全には積極的取り組み

(1)年間研究開発費
 直近1年間の研究開発費は前年比 6.7%減で、年間総売上高に対する割合は0.6%であった。
(2)工業所有権の自己開発所有件数、年間公開件数、年間取引件数
 工業所有権については、期末自己開発所有件数、年間供与件数は増加したが、年間公開件数、 年間導入件数は減少した。

表−6 工業所有権の期末自己開発所有件数、年間公開件数、年間取引件数(単位:件、%)

工業所有権の種類 自己開発所有件数 年間公開件数 年間導入件数 年間供与件数
件 数 前年比 件 数 前年比 件 数 前年比 件 数 前年比
特 許 権 9,053 3.2 4,955 2.7 57 △41.8 313 47.6
実用新案権 4,023 △ 2.7 583 △52.5 3 △25.0 28 △24.3
意 匠 権 701 △ 4.6 190 233.3 3 △25.0
合   計 13,777 1.0 5,728 △ 6.2 60 △41.2 344 36.0
(3)環境保全への取り組み
 直近1年間の環境保全への取り組みについては、昨年の53社から3社増え、初めて調査対象 企業56社全てが「取り組んだ」と回答した。種類別(重複回答)では、研究41社、施工の改善・下請け企 業への要請・環境対策工事の実施38社、広報活動の充実29社、環境不可要因の削減等に関する目標・計画 設定・監査27社、設計の改善26社、等が多くなっている。また、取り組みの具体例としては、建設副産物 有効利用技術等の研究、社有施設の環境共生化、フロンガスの回収、中期・年度目標の設定、建設副産物 の分別リサイクルの推進、熱帯材型枠使用量の削減、環境配慮チェックリスト(設計)作成、省エネ環境 設計の実施等があげられている。

6.企業集団の状況−子会社、関連会社は国内は増、海外は減

(1)子会社及び関連会社の状況
 直近1年間における子会社の増減は 61増 51減の 10純増で 1,052社、関連会社は 34増 39減 の 5純減で 630社で あった。 国内・海外別では、昨年同様、国内は増、海外は減であった。
表−7 直近1年間における子会社及び関連会社の増減数、直近の期末の現在数  (単位:社)
所在地 子 会 社 数 関 連 会 社 数
年間増 年間減 純増減 現在数 年間増 年間減 純増減 現在数
国 内 35 20 15 608 27 26 1 467
海 外 26 31 - 5 444 7 13 -6 163
 総 計  61 51 10 1,052 34 39 -5 630


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