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平成9年

建設業活動実態調査結果報告(抜粋)

                              建設省 大臣官房  技術調査室
建設経済局 調査情報課
                                         国際課  
                                         建設業課 
                                         建設振興課

問い合わせ先

 建設省建設経済局調査情報課 
 Tel 03-3580-4311(内2693)


平成10年1月30日公表

1.はじめに

 近年、バブルの崩壊、海外投資等の環境変化により、建設活動の動向にも大きな変化が生じて いるが、建設業の今後のあり方を考え、また、建設産業の新しい構造改善の方向性を検討するために、 その実態の的確な把握は不可欠である。このため、建設業全体の中でも、特に、多角化・国際化等が進 展しつつある大手建設業者56社(総合建設業36社、設備工事業20社)を対象に直近の決算期末または決算 期間の企業活動の実態を調査した。
 本報告は、その主な結果を抜粋したものである。

2.人員の状況−従業員数は昨年に続き削減傾向

(1)職種別常時従業者数
 職種別常時従業者数は、技能職(現場労働者等)を除いて全ての職種で減少し、全体でも1.9%の減となった。
 男女別でも共に減少しており、女性は技能職では増加したものの、2年連続で増加した技術職が減少すると共に事務職・その他(サービス・運輸従事者等)が3年連続減少し、男性を上回る減少幅となった。
 昨年に引き続き、全体的にゆるやかな削減傾向が続いている。

表−1 職種別常時従業者数  (単位:人、%)

 

 

1 事務職  2 技術職  3 技能職  4 その他  5 合 計 

前年比

45,908 148,873 23,833 3,674 222,288
▲ 3.2 ▲ 0.6 0.5 ▲13.3 ▲ 1.3

前年比

25,891 3,225 111 1,639 30,866
▲ 6.3 ▲ 3.6 52.1 ▲ 9.8 ▲ 6.1

合 計

前年比

71,799 152,098 23,944 5,313 253,154
▲ 4.3 ▲ 0.7 0.6 ▲12.3 ▲ 1.9
(2)業務部門別常時従業者数
 業務部門別常時従業者数については、「兼業部門(5.2%増)」「海外(0.2%増)」は増加したが、昨年増加であった「設計・エンジニアリング部門(6.0%減)」をはじめとして「研究部門(9.1%減)」「情報処理部門(3.5% 減)」など、他は軒並み減少した。
 企業の国際化に関する部門については、海外工事の増加を受けて「海外」はわずかながら伸びたものの国内の「海外事業部門(3.4%減)」は縮小しており、両部門合計で1.1%減と縮小傾向が見られる。また、「海外」においては現地常用雇用者の割合が全体の56.3%に達した。
 企業の多角化に関する部門も全体的に縮小傾向が続いている。また、「研究部門」「情報処理部門」等の間接部門についても減少が続いており、昨年に引き続き、全体的には企業のスリム化を図ろうとする傾向がうかがわれる結果となっている。

表−2 業務部門別常時従業者数   (単位:人、%)

業務の部門 常時従業者数 部 門
人 数 前年比 構成比
@ 国内在住 設計・エンジニアリング部門 土木建築の調査設計部門 10,294 ▲ 7.6 4.1 多角化
設備の調査設計部門 5,432 1.4 2.1
エンジニアリング部門 4,879 ▲13.6 1.9
土木建築施設の保守管理部門 717 32.8 0.3
21,322 ▲ 6.0 8.4
本業の分社化による関連企業部門 5,592 ▲ 0.6 2.2
兼業部門 自社内の兼業部門 1,348 1.4 0.5
兼業に関する関連企業部門 1,376 9.2 0.5
2,724 5.2 1.1
研究部門 4,725 ▲ 9.1 1.9
情報処理部門 1,842 ▲ 3.5 0.7
海外事業部門 2,282 ▲ 3.4 0.9 国際化
上記以外の国内建設事業・
その他管理部門
本社・本店 25,676 ▲10.7 10.1
支社・支店・営業所 98,940 6.0 39.1
工事現場・作業所 85,672 ▲ 6.1 33.8
210,288 ▲1.4 83.1
小 計 248,775 ▲1.9 98.3
うち 外国人 174 ▲16.7 0.1
A海  外 支店、駐在員事務所及びその工事現場 4,379 0.2 1.7 国際化
うち 現地常用雇用者 2,467 80.3 1.0
合  計  @+A 253,154 ▲1.9 100.0
海外現地法人へ出向し、現地法人に籍のある者 343 12.5

3.多角化の状況−多角化は後退、「その他の事業」の売上高が大幅減

(1)事業別国内売上高
 直近1年間の事業別国内売上高の総額は前年比 1.2%の増加となったが、本業以外の「その他の事業」は19.3%減と昨年に引き続き大幅に減少し、全体に占める割合も 3.4%(昨年は 4.3%)に減少した。
 なお、その他の事業の内容(重複回答)は、不動産業36社、建築設計業11社、建設コンサルタント11社、測量業8社など、昨年とほぼ同様の内容だった。

表−3 事業別国内売上高の前年比および構成比  (単位:%)

     発注者
事業別
前 年 比 構 成 比
 公 共   民 間   合 計   公 共   民 間   合 計 
1 土木建築工事 3.2 2.9 3.0 28.2 53.6 81.7
2 設備工事 ▲9.0 ▲1.0 ▲2.4 2.4 12.4 14.9
3 その他の事業 28.2 ▲30.4 ▲19.3 0.3 2.8 3.4
合  計 2.3 0.2 1.2 30.9 68.8 100.0
(2)設備投資の状況
 直近1年間の設備投資額は前年比6.1%増となった。内訳別では、研究所47.7%減、資機材センター28.8%減、情報センター33.9%減、その他16.6%増と、研究所・資機材センター・情報センター分野への投資が圧縮されるなかで、昨年とは逆に福利厚生施設、事務所土地建物等のその他が、大幅な増となった。

4.国際化の状況−海外の契約金額は引き続き増、資機材輸入高は減

 海外建設事業の契約金額は20,426億円と前年比25.6%増となった。発注者別では公共機関からの受注が42.7%増、プロジェクト別では開発が132%増と高い伸びを示した。
 また、海外建設事業について、直近1年間の受注高、将来受注高を伸ばしたい国の上位5カ国までを回答してもらったところ以下のような結果となった。

@海外建設事業の受注高の多い国

     海外建設事業の受注高の多い国は、シンガポール、インドネシア、マレイシア、タイ、香港及びフィリピンの順で、昨年とほぼ同様の結果となった。主な原発注者別では、昨年に引き続き引き続き日系企業の割合が高いがその他の民間企業とする回答の増加が目立つ結果となっている。

A海外建設事業の受注高を伸ばしたい国

 海外建設事業の受注高を伸ばしたい国については、インドネシア、ベトナム、マレイシア、タイ、フィリピンの順となり、ほぼ昨年と同様の結果となった。主な原発注者では、日系企業からの受注を伸ばしたいとする回答が依然として強い。

表−4 直近1年間の受注高の多い国   (単位:社)

平成8年調査
受注高の多い国   
主な原発注者 平成9年調査
受注高の多い国   
主な原発注者




 








 

 




 








 

 
1 シンガポール 8 16 4 28 1 シンガポール 8 14 7 29
2 マレイシア 11 8 6 25 2 インドネシア 14 5 6 25
3 インドネシア 12 5 5 22 3 マレイシア 9 11 4 24
4 タ  イ 12 5 3 20 4 タ  イ 11 5 8 24
5 香  港 5 2 7 14 5 香  港 6 3 5 14
6 中  国 11 1 1 13 6 フィリピン 8 2 4 14
  その他 36 13 36 85   その他 30 19 28 77
合  計  95  50  62  207 合  計  86  59  62  207

表−5 将来 受注高を伸ばしたい国   (単位:社)

平成8年調査
受注高を伸ばしたい国
主な原発注者 平成9年調査
受注高を伸ばしたい国
主な原発注者




 








 

 




 








 

 
1 インドネシア 17 4 9 30 1 インドネシア 14 7 7 28
2 ベトナム 16 3 5 24 2 ベトナム 16 1 5 22
3 タ  イ 11 2 10 23 3 マレイシア 7 10 4 21
4 マレイシア 7 9 6 22 4 タ  イ 10 1 9 20
5 フィリピン 16 2 3 21 5 フィリピン 13 3 3 19
6 シンガポール 5 8 5 18 6 シンガポール 6 7 4 17
  その他 26 14 24 64   その他 27 17 26 70
合  計  98  42  62  202 合  計  93  46  58  197
(2)資機材等の輸入の状況
  直近1年間の資機材等の輸入高は前年比7.7%減で、直接輸入高4.8%減、その他輸入高8.9%増といずれも減少した。資機材毎に見ても、木製品・ガラス等で減少と答えた割合が高く、全般的に全資機材で減少と答えた企業数が増加と答えた企業数を上回っている。

5.技術開発等の状況−研究開発費は減、環境保全には積極的取り組み

(1)年間研究開発費
 直近1年間の研究開発費は前年比 7.5%減で、年間総売上高に対する割合は0.6%であった。
(2)工業所有権の自己開発所有件数、年間公開件数、年間取引件数
 工業所有権については、期末自己開発所有件数、年間導入件数は増加したが、年間公開件数、 年間供与件数は減少した。

表−6 工業所有権の期末自己開発所有件数、年間公開件数、年間取引件数(単位:件、%)

工業所有権の種類 自己開発所有件数 年間公開件数 年間導入件数 年間供与件数
件 数 前年比 件 数 前年比 件 数 前年比 件 数 前年比
特 許 権 12,247 35.3 4,178 ▲15.7 79 38.6 237 ▲24.3
実用新案権 4,781 18.8 82 ▲85.9 0 21 ▲25.0
意 匠 権 797 13.7 86 ▲54.7 0 2 ▲33.3
合   計 17,825 29.4 4,346 ▲24.1 79 31.7 260 ▲24.4
(3)環境保全への取り組み
 直近1年間の環境保全への取り組みについては、昨年の調査対象企業56社全てから1社減り、55社が「取り組んだ」と回答した。種類別(重複回答)では、施工の改善・下請け企業への要請・環境対策工事の実施38社、研究34社、広報活動の充実32社、環境負荷要因の削減等に関する目標・計画設定・監査24社、設計の改善24社、等が多くなっている。また、取り組みの具体例としては、建設副産物有効利用技術等の研究、処分場関連の研究、土壌・水質等の浄化、太陽光発電システム等の導入、代替え材料の使用・物流システム等の見直しによる省資源化、社内環境行動計画・方針等の策定・実施、環境監査の実施、 ISO14000関連組織の設置等があげられている。

6.企業集団の状況−子会社、関連会社は国内は増、海外は減

(1)子会社及び関連会社の状況
  直近1年間における子会社の増減は 35増 36減の 1純減で 1,068社、関連会社は 27増 35減の 8純減で 623社であった。 国内・海外別では、子会社が国内増、海外減であり海外は国内・海外とも減であった。
表−7 直近1年間における子会社及び関連会社の増減数、直近の期末の現在数  (単位:社)
所在地 子 会 社 数 関 連 会 社 数
年間増 年間減 純増減 現在数 年間増 年間減 純増減 現在数
国 内 22 16 6 612 22 27 -5 462
海 外 13 20 -7 456 5 8 -3 161
 総 計  35 36 -1 1,068 27 35 -8 623


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