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平成8年度建設業構造基本調査結果
建設省建設経済局建設振興課
1.はじめに
- 建設業は、現地屋外生産、単品受注生産、労働集約生産が中心で、その生産システムも総合的管理監督機能を担う総合建設業と直接施工機能を担う専門工事業の分業関係で成り立っており、多岐にわたる業種や下請の重層化、複雑な取引関係、多様な雇用形態に見られるように、その産業構造は非常に複雑なものとなっている。
- そこで、建設業の基本的な産業構造を明らかにするとともに、その中長期的変化を把握することを目的として、昭和50年度より3年に1回の周期で本調査を総務庁承認統計調査として実施しており、今回はその第8回目として実施した。
- 以下は、その調査結果の概要を抜粋したものである。
2.調査結果の概要
(1)元請・下請別の企業分布
- 各資本金階層における下請比率(*1)別、下請次数(*2)別の企業の分布状況を調査した。
- 下請比率50%以上(下請完成工事高≧元請完成工事高)の企業が占める割合は、資本金2,000万円未満の各階層において50%を超えており、特に資本金1,000万円未満の階層においては約6割以上にのぼっている。
- 建設業の重層下請構造において低位に位置する、下請比率50%以上の「二次下請」「三次以下下請」の企業は、そのほとんどが個人及び資本金2,000万円未満の階層に集中している。
(*1)下請比率
- 本調査では、総完成工事高に占める下請完成工事高の比率を下請比率とした。
- (*2)下請次数
- 本調査では、施主の直接の工事発注先である元請建設企業から見て何層目の下請企業にあたるかにより「一次下請」「二次下請」「三次以下下請」とし、下請工事のうち金額にして最も多かった下請次数を当該企業の下請次数とした。
元請・下請別の企業分布Excel
(2)特定業者への専属比率
- 下請完成工事高のうち最も取引高の多い建設企業1社から請け負った下請完成工事高の占める比率を専属比率として、当該比率別の企業分布状況を調査した。
- 専属比率が50%以上である企業は27.9%で、前回調査結果と比較して2.6ポイントの増加となっている。一方、専属比率が0%未満である企業は19.0%で、前回調査結果と比較して3.4ポイントの減少となっている。
(3)原価割れ工事件数比率
- 総完成工事件数に占める原価割れ工事件数の比率を原価割れ工事件数比率として、当該比率別の企業分布状況を調査した。
- @前回調査結果との比較
- 原価割れ工事を抱えている企業の割合は54.6%で半数を超えているが、前回調査結果と比較すると3.4ポイントの減少と若干改善されている。
- 一方、総完成工事件数に占める原価割れ工事件数の比率が20%超の企業は、全体に占める割合は2.7%であるが、前回調査結果と比較すると1.4ポイントの増加とほぼ倍増している。
- A下請比率別・下請次数別集計
- 原価割れ工事が全くない企業は、「元請のみ」の階層では66.5%に達しているのに対して、「下請比率0%超50%未満」(元請完成工事高>下請完成工事高)の階層で46.1%、「下請比率50%以上」(下請完成工事高≧元請完成工事高)の階層で38.0%と、下請比率が高くなるほど減少している。
(4)受取時期別の工事代金受取額割合
- 調査対象企業が受け取った総工事代金のうち、工事施工前、施工中、施工後に受け取った金額はそれぞれ総工事代金のどの程度の割合であったかを調査した。なお、受け取った金額には手形によるものも含め、手形の受取時点は、手形割引により現金化もできることを考慮し支払期日ではなく手形を受け取った時点とした。
- 総工事代金のうち工事施工前に受け取った金額の比率は「元請のみ」の企業で11.7%、「下請比率0%超50%未満」で9.4%、「下請比率50%以上」で1.7%と、下請比率が高くなるほど低下している。
- また、下請比率50%以上の階層において下請次数別に見てみると、下請次数が下位になるほど工事代金の受取時期が遅くなる傾向がある。
(5)元請工事において多様な契約形態の実績がある企業の割合
- 元請工事受注実績がある企業を対象に、過去3年間に元請工事で下記の形態での契約を締結をしたことがあるかどうか調査した。
- デザインビルド方式は約6割の企業で契約実績があり、その他の契約方式の実績がある企業は1〜3割程度となっている。
- なお、本調査における各契約形態の定義は以下のとおりとした。
[デザインビルド方式(設計施工一貫方式)]
- 設計と施工の両方の業務を行ない、責任を負う契約方式
- [ターンキー方式]
- プロジェクトの計画、設計、施工、試験・検査(試運転)までを一括して行う契約方式
- [CM方式]
- 発注者の代理人あるいは補助者として、事業全体にわたって設計検討、品質管理、工程管理、費用管理等を行なう契約方式
- [VE方式]
- 発注者の示す設計によるのと同等の性能、機能を確保しつつ、コストを削減するための改善提案をみとめる契約方式
多様な契約形態の実績Excel
(6)経営計画の作成状況
- 目標完成工事高、目標利益等の具体的な経営計画を作成しているかどうか、並びに、作成している場合の作成方法について調査した。
- 建設業全体では、経営計画を自社の従業員が作成している企業が25.3%、作成していない企業が67.6%となっている。社外の者に委託するとした企業は7.1%となっている。
- 資本金階層別では、おおむね資本金額が大きくなるほど経営計画を作成している企業の比率が高い傾向にある。
(7)各就業者区分ごとの平均雇用者数
- 建設部門総雇用者(常雇等(*3)及び臨時・日雇(*4))について、役員(経営者を含む)、事務・営業等職員、技術系職員(工事の設計、積算又は現場の監督を行なう者)、現場労働者(職長を含む技能工、労務作業者)の別に、それぞれの1社あたり平均雇用者数を調査した。
- 資本金階層別に見てみると、現場労働者が占める比率は資本金額が大きくなるほど低下する傾向がある。
- 逆に、技術系職員が占める比率は資本金額が大きくなるほど上昇する傾向がある。
(*3)常 雇 等:雇用者のうち臨時・日雇以外の者
- (*4)臨時・日雇:1ヵ月以内の期間を定めて雇用されている者及び日々雇用されている者
(8)組織変更等の意向
- 組織改編、分社化、雇用形態の変更等、経営合理化のためにどのような意向を持っているか調査した。(4つ以内の複数回答)
- 「技能労働者の多能工化」(23.1%)、「技能労働者の直用、常用化」(20.0%)に対する関心が高く、質の高い技能労働者の確保が重要な経営課題になってきていることが推察される。
- 一方、「特になし」とする企業が50.8%にのぼっている。