運輸経済月例報告 平成11年9月のトピックス



「環境にやさしい車」の普及状況
  
  低公害車は地球環境面でも有効だが普及はごく一部  
  自動車全体で燃費のよい車に代替を促す「グリーン税制」が必要  
         


1997年(平成9年)12月、京都で開催された地球温暖化防止京都会議において、二酸化炭素等温室効果ガスの排出を抑制するための具体的な数値目標を設定する議定書が採択された。我が国の場合、二酸化炭素の排出の約2割を交通運輸分野が占めており、その約9割は自動車からのものである。今回は、これに関して、自動車分野からの排出を削減するため最も有効な自動車単体対策について、その現状と方向性をみる。
【低公害車の普及状況】
 低公害車は窒素酸化物や黒煙を削減するほか二酸化炭素の排出も抑制し、地球環境への負荷の低減のためにも有効であるが、その普及状況は依然不十分である。
(1) 低公害車の種類と台数
 低公害車の種類及びそれぞれの特色・特性は図表1のとおりであり、その普及台数の推移は図表2のとおりである。11年3月末現在において、低公害車総数は約29千台(登録車以外含む)となっているが、この8割近くは9年12月に乗用車タイプの車種の量販が開始されたハイブリッド車である。
 従前より、ハイブリッド車は大都市地域のバス路線等に、圧縮天然ガス(CNG)車は路線バス、共同集配トラック等に使用される等低公害車の導入が進められてきたが、それぞれ車両単価や、動力性能、航続距離、燃料供給設備等の制約があったため、普及しているとはいえない状況であった。
(2) 低公害車の普及状況
 これらの点で、価格も一般の乗用車に近く量販されるハイブリッド車の発売は、1つの画期的な事項であった。ちなみに、これら低公害車の普及状況を都道府県別にみたのが図表3であり、また、乗用車総数とハイブリッド車数との割合でみた場合は、高い方から、愛知県、神奈川県、奈良県、東京都、大阪府の順となる。いずれも、概ね大都市域を抱える都府県が上位にきており、比較的に、こうした地域の消費者に環境問題の意識が生じていることが推測できる。
しかしながら、上の低公害車総数を自動車総数70,688千台(登録車及び届出車。11年3月末現在)で割れば、低公害車の割合はおよそ24百台に1台に過ぎず、また、乗用車総数との割合で全国で最もハイブリッド車が普及している愛知県においても、乗用車1万台に対してハイブリッド車はおよそ10台(11年3月末現在)に過ぎない。
 したがって、現在の低公害車の普及状況は地球環境の保護の観点でみれば、依然不十分であると考えられる。

【自動車全体の燃費効率の向上】
 有効な自動車単体対策として、現在我々が社会や生活の各所で自動車から受けている便益を損なわない形で可能な限り二酸化炭素の排出を抑制するためには、同じ走行に対する燃料の消費量を極力減らすことである。すなわち、自動車全体の方向性として、燃費効率の向上が必要である。
(1) 近年の排気量別乗用車割合の動向
図表4は近年の乗用車の排気量別保有割合の推移であり、図表5は最近の乗用車の新車販売状況である。
 地球環境の保護の観点からは、排気量的に「環境にやさしい」軽乗用車が、元年3月末から11年3月末までの10年間でシェアを5.7%から16.4%へと伸ばし(もっとも車両数自体は4.7倍に急増している)、特に最近は、乗用車市場全体が9年4月の消費税率変更以来長らく前年同月比マイナスが続いていた中で、10年10月からの規格拡大(長さ3.30mから3.40m、幅1.40mから1.48m)等による安全性の向上や、消費者の経済的な選好にも合致して販売が伸長し、乗用車の新車販売に占める軽乗用車の割合が急伸した(図表5の4つのカテゴリーに占める軽乗用車の割合は、10年9月は18.1%、11年9月には29.3%となっている)ことは評価できる。
 しかしながら、一方、図表4の10年間で、乗用車総数が30,713千台から 49,968千台(1.4倍)となり、中でも、排気量や車体の大きな普通乗用車が元年4月の消費税導入に伴う物品税の廃止等による減税効果もあり、車両数が1,641千台から11,019千台へと6.7倍に急増し、シェアも5.3%から22.1%へと拡大させたことは、環境保護の観点でみて好ましいことではない。
(2) 燃費効率の向上の必要性(グリーン税制の導入)
省エネルギー、省資源等の特性を有する軽自動車等の小型車両がよりシェアを拡大していくことは重要であり、運輸省としても、21世紀の都市交通に適した超小型車の開発を目標に「次世代都市用超小型自動車」について研究しているが、より即効性の高い効果を得るためには、自動車全体の個々の排気量クラス毎に燃費効率を向上させる必要がある。
そのため、11年4月より、改正省エネ法に基づく燃費基準の強化、及びこれに対応する低燃費車についての自動車取得税の課税標準の特例措置を講じている。しかしながら、京都議定書における我が国の国際公約は、温室効果ガスの排出について2010年(平成22年)(前後)には1990年(平成2年)比6%を削減することとしており、この履行のためにより抜本的な対策を早期に講じることが必要である。そのため、自動車の取得時だけでなく、消費者にとって経常的な経費でありその分誘導効果も高い保有税(自動車重量税/自動車税、軽自動車税)の分野において、燃費の良い自動車には軽課し、悪い自動車には重課する「自動車関係諸税のグリーン化」の導入が必要となっている。