運輸安全

メルマガ「運輸安全」第5号

 
□■□■□■□■□メルマガ「運輸安全」(H20.9.30 第5号)□■□■□■□■□
~~~(目次)~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1.「公共交通機関の安全に関する世論調査」の結果が発表されました!
2.運輸安全に関する最近の動き
3.安全の確保に関する取組みの参考事例紹介
 ~特別編 リスク管理(ガイドライン5.(7))について(後編)~
4.現場だより
 ~現場第一線の社員を主役とする「安全に関する社員の声」の取り組みについて~
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1.「公共交通機関の安全に関する世論調査」の結果が発表されました!
 
 平成20年公共交通機関の安全に関する国民の認識・関心等を把握するために、平成20年7月24日から8月3日にかけて、3,000人を対象に、内閣府による国民世論調査が実施されました。調査員による個別面接聴取で行われ、1,822人の方から回答をいただきました(NHK,共同通信、テレビ朝日、日本経済新聞、読売新聞ほかで報道されました)。
 その結果の概要につきましては、以下のとおりです。
1.  公共交通機関が安全だと感じている人は9割。また、この10年間の安全性の変化については、「変わらない」と「向上した」がそれぞれ4割、「低下した」は1割。
2.  安全に関する情報を見た又は聞いたことがある人とない人の割合は半々であり、安全に関する情報への関心度は情報を知りたいと回答した人が6割と高く、また、事業者の安全への取組みの情報を国が集めてPRするべきという人が8割となっている。
3.  公共交通機関の安全な利用の状況について、利用する際に駆け込み乗車等の不安全行動を見た又はした人の割合は半々。不安全行動をする人は危険だとの認識を持っていながら行動していると思っている人が8割を超え、不安全行動が他の人にとって危険又は迷惑だと思う人が9割を超えている。
   また、不安全行動を見ても通報又は注意をしなかった人が9割である一方で、不安全行動についての注意案内があった場合、改めて安全に気をつけるという人が3分の2となっている。
4. 公共交通機関の安全確保のため国に求めるものは、上位3つは、事故原因の究明(53%)、事業者に対する国のチェック(50%)、技術開発の促進(44%)であった。また、運輸安全マネジメント制度に積極的に取り組むべきと回答した人が7割を超え、「ある程度積極的に取り組むべき」とあわせると9割となった。
 この調査結果を踏まえ、公共交通機関の一層の安全性を確保するために、関係する取組みを積極的に進めるとともに、どのような施策を行っていくべきか検討していきたいと思います。
 本調査の結果の詳細につきましては、運輸安全ホームページ及び内閣府ホームページ( http://www8.cao.go.jp/survey/h20/h20-koukyokoutsu/index.html )をご覧下さい。
 
 
2.運輸安全に関する最近の動き
 
○運輸安全マネジメントセミナー好評開催中! 
 これまでに運輸安全マネジメント評価を受けられた事業者の方々から特に要望の多かった運輸安全マネジメント制度の理解を深めるための「運輸安全マネジメントセミナー」を定期的に開催しております。
 「運輸安全マネジメント制度のコンセプトを理解させる教育に係るセミナー」や「内部監査に関する基礎的な知識を習得して頂くためのセミナー」、「運輸安全一括法に規定する安全管理規程に係るガイドラインの手引を理解して頂くためのセミナー」を国土交通省内で実施しています。本セミナーにより皆様の安全管理体制の構築・改善がより一層図られることを期待しております。
 なお、セミナーを希望される方は、運輸安全セミナーホームページ( http://www.mlit.go.jp/unyuanzen/unyuanzen_seminar.html)をご確認ください。
 
○運輸安全監理官室を移転いたしました!
 10月の省内組織再編に伴い、今月16日に私どもの執務室が移転いたしました。
 霞ヶ関中央合同庁舎3号館10階からお隣の中央合同庁舎2号館16階に移転しました。未だ日が浅いので、ふと気がつくと3号館の前の部屋の近くまで歩を進めていたということもしばしばありますが、御用のある方は2号館まで是非お寄りいただけたらと存じます。
 ※ 2号館:総務省、国家公安委員会とともに、国土交通省分館となっています。
 
 
3.安全の確保に関する取組みの参考事例紹介
  ~ 特別編 リスク管理(ガイドライン5.(7))について(後編) ~
 
 前回は、前半として、リスク管理の流れである 
  (1)事故やヒヤリ・ハットなどの不具合情報、リスク情報を輸送の現場から収集する
  (2)収集した情報を分類・整理し、リスク(輸送の安全上の潜在的な課題)を明確にする
  (3)リスクを評価する(対策を取るべきリスクの優先順位付け)
  (4)対策案を検討して実施する)
という流れを内容としています。
 さらに、リスク管理をうまく進めるためには、
  (5)リスク管理の実施に向けた環境整備をする
のうち、(1)事故等の情報収集と(2)情報の分類・整理とリスクの明確化をみてきました。
 今回は、後半の流れと参考事例の紹介をします。
 
(3)リスクの評価(対策を取るべきリスクの優先順位付け)
 リスクの明確化の結果、事故につながる危険な要素が明らかになれば、事故が起きないよう対策をたてなければなりません。
 しかし、すべての要素に対して対策をたてようとするのは、現実的ではありません。
 そこで、リスクの評価を行い、対策をたてるリスクの優先順位付けをします。
 リスクの評価は、
  [1] その出来事が起こる可能性の大きさ
  [2] その出来事が事故につながる可能性の大きさ
  [3] 事故が起きたときの影響の大きさ
を考えて優先順位を考えることとされます。
 
(4)対策の策定と実施
 具体的な対策は次のようにさまざまですが、すべての対策を打つというのではなく、対策案1件1件について、事故防止に対する効果、対策を取るための予算・人員の大きさなどを評価した上で、会社の実情に応じて、有効な対策を選ぶとよいでしょう。
 [1]手順などをミスが起こりにくいように見直し・改善する。
 [2]教育を受ける人の特性(経験、立場等)にあった教育・訓練を行う。
 [3]安全のための設備面を充実させる。
 以下に、対策の面で、特に参考になると思われる事例を紹介します。
 
 参考事例1
  ヤマト運輸株式会社では、各地域を担当するセールスドライバーが当該地域の地図に、
  [1] 潜在的な危険箇所(例:見通し不良、幅員狭隘、交通量大)
  [2] 安全にバックするのに適している場所
  [3] なるべくバックせずに配送するルート
  [4] 安全にかつ安心して走行できる道路
  [5] 安全面、効率を考慮した駐車位置
  [6] 危険度の高い右折を少なくするルート
を記入した「安全ルートマップ」を作成。
 潜在的な危険性を把握して事故の予防とセールスドライバーの安全意識向上に資する取組みを行っている。
 
(5)リスク管理の実施に向けた環境整備
 リスク管理の取組みを職場で進める場合、そのための環境を整えることが必要です。
 [1]経営陣がリスク管理の必要性を理解し、リスク管理に積極的に取り組むことを社内に周知する。
 [2]現場へのヒアリングやアンケートを通じて、自社のリスク管理の現状と課題をつかむ
 [3]社内の情報の流れを良くする
 [4]全社的にリスク管理に取り組む意義や重要性を理解する
 [5]実施した対策やリスク管理の体制自体が事故削減に有効だったか見直しをする
 これらの環境整備により、全社一丸となって、安全の向上へとつないでいくことが望まれます。
 
全体的なリスク管理の流れ、特に情報の流れについて、参考になると思われる事例を紹介します。
 参考事例2
 旭タンカー株式会社では、事故・トラブル(事故等)情報が経営トップまで確実に報告されており、それら事故等の原因分析が行われ、再発防止対策が講じられている。
 原因分析、再発防止対策等は、イラスト等を効果的に使用して分かりやすく解説されており、「事故の分析と教訓」として現場に展開されている。また、同社のホームページには、「環境・安全について」のコーナーを設け、これらの情報のほか、海難審判庁「マイアニュースレター」、官署からの通達等をタイムリーに掲載し、社内関係者、船主等と情報を共有することより、事故防止に取り組んでいる。
 さらに、ヒヤリ・ハット情報についても、積極的な取組みを行っており、船内にヒヤリ・ハット情報の収集箱を設置し、月間1人2件の情報提供を推進することで、全運航船舶から月間約1,000件もの情報を収集している。
 これら収集された情報は、分類、整理され、現場に展開されており、特に事故発生に至る可能性の高い事例については、予防措置が講じられ、現場に周知されている。
 
 参考事例3
 関西汽船株式会社では、数年前から船舶におけるヒヤリ・ハット報告を奨励し、個々の事象に対する原因の調査・分析及びその防止対策までを検討し、可能な予防措置を講じるとともに、これらの情報を年毎に集計し、冊子として現場に毎年配布している。
 輸送の安全上の潜在的課題の発掘に取り組み、現場から潜在的な課題となり得る情報が報告されるシステムを整備している。
 さらに、これらの情報や顕在化した現場の事故・機器類等の不具合情報をデータベース化、本社のLANで容易にアクセスできるようにし、情報共有を図っている。
 
 参考事例4
 中国ジェイアールバス株式会社では、事故を確実に減少させるため、ハード対策及びソフト対策を積極的に推進し、事故数が減少傾向にあり、事故防止に向け、以下のとおり、効果的な措置を講じている。
[1] ハード対策として、乗務員の提言によるディスチャージヘッドライトや全車両へのドライブレコーダーの導入を実施した
[2] ソフト対策として、ドライブレコーダーの解析ソフトを利用した事故、ヒヤリ・ハット情報の分析と乗務員の教育・指導及び共有すべき安全情報  の水平展開を行ない、全社的な事故防止に取り組んでいる。
[3] 社内における「事故の芽」等の報告制度として、「300X(ばってん)運動」を展開し「安全推進委員会」や「事故防止検討委員会」で対応を検討するとともに、乗務員等の関係者に情報の周知・活用を図っており、年間700件程度の報告が寄せられ、報告者全員に対して褒美を与えている。
[4] 他社の事故等を「他山の石」として自社の安全対策に活用し、事故防止に積極的に取り組んでいる。
[5] 事故件数・類型等の統計、調査・分析結果について、社内に周知し、安全意識の啓蒙と高揚を図っている。
 
 
4.現場
 ~現場第一線の社員を主役とする「安全に関する社員の声」の取り組みについて~
 
 ここでは、実際に運輸安全の確保に日夜取り組まれている皆様の取組みをご紹介しようと思います。今回は、九州旅客鉄道の取組みについて紹介いたします。
 
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○取り組みを始めた経緯
  平成17年度、弊社はわずか一ヶ月あまりの間に、3件もの重大な事故等を連続して発生させ、会社発足以来初めて国土交通省より警告を受ける事態となりました。それまでももちろん安全を第一に取り組んできたわけですが、どうもうまくいかない、何かを変えなければならない、当時はそれまでの安全に対する取り組みを大きく見直す転機を迎えていました。
 以前の安全に対する取り組みを振り返ってみますと、どちらかというと、本社や支社などの企画計画部門主導型で、その指示内容を如何に現場第一線の社員に守らせるかに力を注いでいました。しかしこのやり方では、本当に実態に即した安全対策を続けていくのは困難です。また、ヒューマンエラーを限りなく少なくしていくためには、社員の日頃からの安全意識が大切ですが、人は指示されたことを守っているだけでは、意識の向上は望めません。
 そのような背景から弊社はそれまでの発想を変えて、「安全の主役は現場第一線の社員である」との認識に立ち、平成17年9月から現場第一線の社員が積極的に安全マネジメントに参加することで、安全意識を高めていくための取り組み、「安全に関する社員の声」を開始したのです。
   【安全に関する社員の声フロー図】
 
 
○開始当初は?
 取り組みを始めるまでは、一体どれくらいの「声」が寄せられるのか検討もつきませんでした。「蓋を開けてみれば、ほとんど寄せられないなんてことになったらどうしよう」との不安もありましたが、その不安は杞憂に終わりました。開始2ヶ月で早くも200件を超え、年度末までに1,022件もの「声」が寄せられたのです。
 この成功は工務・車両関係社員の努力により支えられたものでした。というのも取り組み開始当初は「信号機が見えづらい」、「車両の計器類が見えづらい」といった設備に関する要望が大半であり、これら一つひとつを調査し、速やかに信号機や計器灯のLED化などの対策を行なってきたからです。
 「声」を出した社員から見れば、自分の意見がすぐに対策として実施されるので、次もまた出そうかなという気になります。その積み重ねが、これだけの多くの「声」に繋がったのだと思います。

 【改善事例】 背面からの光で信号機が見えづらいという声を受けて背面板をつけた事例

 
○この取り組みを始めてよかったこと
  この取り組みを開始して早くも3年が経過しました。これまでに寄せられた「声」は5,400件を超え、沢山の設備やルールの改善を行なってきました。これら目に見える改善の他にこの取り組みを始めてよかったなと感じていることを、3点述べたいと思います。
 一点目は、一人ひとりの社員の「声」を活かす仕組みが会社に定着したということです。取り組み開始当初は、「なぜ、一人の意見に対してこんなに急いで回答を返したり、対策を行なわなければならないんだ」という意見をよく聞きました。心のどこかには「これは追加の仕事」という意識があったのだと思います。しかし最近では、そういったケースはほとんどありません。寄せられた「声」をもとに調査を行ない、安全上問題があれば出来るだけ早く改善する、問題がなければ、「調査した結果、問題はありませんでした」という回答を返す、そういった当たり前のことが当たり前に出来るようになってきました。また、ヒヤリハット体験についても、以前では考えられないような、重大事故一歩手前のようなものまで「声」として寄せられるようになってきました。事象としては決して褒められるものではありませんが、それを隠さずオープンにし、みんなで共有して活かしていこうとする風土が出来つつあることは喜ばしいことだと思っています。
 二点目は、社員の安全に関する「気付き力」が上がってきたということです。開始当初は「見えるべきものが見えない」、「あるべきものがない」というような比較的単純な事象に関する「声」が多かったのですが、最近では「このルールはおかしいのではないか?」といった日頃から問題意識を持っていないと気付かないような事象に関する「声」も増えてきました。回答を返す我々としては大変なのですが、これはうれしい悲鳴だと思っています。
 三点目は、「安全」をキーワードに社内のコミュニケーションが活発になったということです。「安全に関する社員の声」は2週間以内に回答を返すとともに、対策も出来る限り速やかに行なうという非常にスピードが要求される仕事です。一つの「声」が入力されると、本社、支社、現場とが協力し合って、その解決に向けて一斉に動きます。この取り組みは「ネットワークで共有している」といっても、打ち合わせは直接会って話をするか、電話をするかしかありませんので、必然的に担当者同士は普段からお互いに連絡を取り合う機会が多くなります。
  コミュニケーションを活発に取っているのは我々担当者だけではありません。国土交通省から警告を受けた際、「安全に関する社員の声」の取り組みと併せて、駅運転、車掌、運転士の現場指導を中心に行なう3人のベテラン指導者を担当部長として配置しましたが、その担当部長と社長、安全統括管理者を始めとする本社経営幹部、現場長らによる始業前のミーティング、「セーフティーアップミーティング」を毎月2回行ない、安全について自由闊達な議論を行なっています。このように、安全を通して社内の安全に関するコミュニケーションが活発になったこともよかった点だと思います。

   【セーフティーアップミーティング】

 
○課題と今後
 もちろん、課題も残っています。最大の課題は、職場によって取り組みに温度差があるということでしょう。積極的に取り組んでいる職場は沢山の「声」が挙がってきますし、ヒヤリハット情報を社員にうまく伝えるために掲示なども工夫が凝らされていますが、九州全体を見渡せば、まだまだ浸透しきっていない職場があるのも事実です。ただ、本社でやり方を決めて押し付けても、意味はありません。現場が自発的に取り組むことに意味があるので、これからも我々事務局のほうからよい職場の取り組み事例を積極的に紹介するなど、コミュニケーションを活発に取りながら、全体の底上げを図って行きたいと考えています。
 日頃から、安全を第一に考えて行動出来るようになるためには、「安全」が常に頭のどこかにある、そのレベルまで安全意識を高めていく必要があります。全社員がそのレベルまで意識を高めて安全が社風として定着するまで、これからも一人ひとりの「声」を大切にし、愚直に、そして粘り強くこの取り組みを続けて行きたいと考えています。
 
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  いかがでしたでしょうか?これからも、運輸安全に取り組まれている皆様の取組み事例等をご紹介させていただければと思います。
 
 
 
 
~~~~~【メルマガ「運輸安全」】~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
発行            国土交通省大臣官房運輸安全監理官室
電話            03-5253-8111 (内線 22-053 )
メールアドレス       g_MST_UAK@mlit.go.jp
運輸安全ホームページ http://www.mlit.go.jp/unyuanzen/
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メルマガの読者の方からの運輸安全マネジメント制度に関する相談をお受けしております。
お気軽に上記問い合わせ先までご連絡ください。お待ちしております!
また、運輸安全について積極的に取り組まれている事例がございましたら、お近くの運輸局等にご連絡ください。
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