第4回 JAPANコンストラクション国際賞

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建設プロジェクト部門

最優秀賞
ポートモレスビー下水道整備事業[パプアニューギニア]

プロジェクトの概要

  • 太平洋島嶼国で初となる本格的な大型下水処理施設と下水配管網を整備しました。本プロジェクトの整備により未処理下水の海洋流出が抑制され、深刻な社会問題となっていた環境破壊が改善されるとともに、地域住民の水系疾病の予防にもつながりました。
  • 沿岸部に処理能力14,800m3/日の下水処理施設と1.6kmの海中放流管、合計約21kmの下水配管網(幹線12km、枝線9km)を整備、13カ所のポンプ場を改修・新設するプロジェクト。日本の施工技術と管理手法によって、低コストで高品質の施設を安全に工期内に完成しました。
  • ポートモレスビー市沿岸部人口過密地域に住む約9万人分の下水処理ができるようになり、海洋環境及び住民衛生環境の改善が可能となりました。比較的低コストでの運転・維持管理が可能な活性汚泥法/オキシデーションディッチ法(酸化溝法)を採用し、下水道施設として初の本邦技術活用条件(STEP)適用案件です。

データ

工期:2016年4月~2019年11月
発注者:Kumul Consolidated Holdings:KCH(クムル公共事業公社)
応募者:大日本土木株式会社

関係企業
設計者:株式会社 NJS
施工者:Dai Nippon ‒ Hitachi JV(大日本土木株式会社・株式会社日立製作所 共同体)

評価のポイント

  • 海洋汚染の改善により沿岸部での水系疾病の蔓延にも対応。また、処理水は塩素ではなく紫外線で処理した上で海中配管により沖合に放流することで海洋環境への影響にも配慮しています。
  • 建設・運営コストを低減するため、処理方式に活性汚泥法(オキシデーションディッチ法)を採用するとともに、処理場施設内に高低差を設けて重力を利用した自然流下方式を活用することで省エネルギー化を図りました。
  • 既存配管とポンプ施設を積極的に活用したネットワークを構築し、新設の総延長12kmに渡る下水道幹線は、管材に耐久性・耐食性の高い高密度ポリエチレン管(HDPE管)を採用し、運営コストを低減しました。
  • 運転開始後1年間は、日本人指導員による人材育成・技術移転を実施し、安定的運営を実現します。

アラハバード・サロリ下水処理場及び関連施設設計・建設・運転維持管理[インド]

プロジェクトの概要

  • 水問題が極めて深刻なインドにおいて、国家プロジェクトであるガンジス川浄化計画の中心をなす下水道整備に取り組みました。日本、インド双方の技術者が協力してインフラを完成させ、現地政府から評価を獲得、継続的なプロジェクト参画への礎を築きました。
  • インド政府が推進するガンジス川浄化計画の一環として、世界銀行資金によるウッタル・プラデーシュ州アラハバードにおけるサロリ下水処理場(処理能力14,000m3/日)及びポンプ場の設計施工、10年間のO&Mを受注。
  • 処理方式には必要敷地面積・工期・運営コストの面で優れた回分式活性汚泥法(SBR法)を提案。インド政府が設定した放流水質を確保しつつ、事業遅延リスクの低減、ライフサイクルコストの最適化を図りました。
  • プラント設計・建設においては、インドで入手しやすくメンテナンスも容易な機器を選定・採用することで、ライフサイクルコストを抑えました。適切な設計施工ならびにO&Mにより、2016年の運用開始以来、安定稼働しています。

データ

工期:2014年11月~2016年9月
発注者:ウッタル・プラデーシュ州 アラハバード水道公社 ガンジス川公害管理部
応募者:東芝インフラシステムズ株式会社

関係者
設計、建設、運転、維持管理:東芝ウォーターソリューションズ社
設計審査コンサル:IIT-R(Indian Institute of Technology Roorke)

評価のポイント

  • 特に水問題が深刻なインドにおいて、処理場の建設を通じて対象地域の住居へ貧富の差を問わず下水道へのアクセスを提供し、地域全体の公衆衛生改善に貢献しました。
  • 日本人技術者をインドに駐在させ、現地エンジニアへ技術・ノウハウ等の指導を通じて継続的な人材育成に取り組んでいます。養成した現地エンジニアと駐在日本人技術者が協働して品質・コスト・工程を徹底して管理することで、コストオーバーランを生じさせることなくプロジェクトを完了させました。
  • インド企業への出資を通じて戦略的にインド市場を開拓。本プロジェクトの完工により、インド国政府や州政府からの評価を獲得し、ガンジス川浄化計画を含むインドでの継続的なプロジェクト参画への礎を築きました。

国立伝染病センター新築工事[シンガポール]

プロジェクトの概要

  • BIMをフル活用して建物の気密区画要件を検討し、関係者と一体になった安全管理を実現。シンガポールおよび英国機関から安全管理をはじめとした複数の賞を受賞し、施主と地域社会から優れたプロジェクトとして認識されています。また日本人のみならず多国籍スタッフの人材育成に寄与しました。
  • このプロジェクトは、Health City Novena内の医療施設であり、シンガポールにおける感染症の管理と予防の能力強化を目的として設計されました。大規模な感染症発生時の臨床・治療施設として、また研究・訓練施設としての機能を併せ持ちます。
  • 法定床面積10万m2に上る複合医療施設であり、専門病棟には負圧気密性能を備えた病室が設置されています。建物は4層の地下構造物上に建てられ、また複数の連絡橋、トンネルが設置されています。

データ

工期:2015年2月~2018年8月
発注者:シンガポール保健省
応募者:鹿島建設株式会社

関係者
設計者:CPG Consultants Pte. Ltd.
施工者:Kajima Overseas Asia (Singapore) Pte. Ltd.

評価のポイント

  • 日本の医療施設専門設計チームが原設計に対する評価・提言と施工部門への助言、気密区画の変更提案を実施し採用されたことで、気密性テストの迅速化と信頼性の向上に貢献しました。
  • 入札時に工期短縮のための構造代案を技術検証とともに提言。同代案の採用を条件に総工期4.5ヵ月の短縮を提案し、工期通り竣工しました。
  • 安全管理、品質管理、工程管理、BIM等各分野で関係者との調整を実施し、安全管理優秀賞、優秀建築賞、BIMなどの生産性向上に関する賞を受賞しました。
  • 医療機器を含めたデジタル・モックアップを使用して、医療従事者も交えた関係者との調整を行い、彼らの要望を予め取り入れることで竣工のみならず施設開業時期の遅延も防ぎました。

ジャカルタ都市高速鉄道南北線フェーズ1[インドネシア]

プロジェクトの概要

  • 日本政府とインドネシア政府間で決定された本邦活用条件(STEP)適用円借款案件として、我が国の優れた技術やノウハウを活用し、現地へ日本の技術を移転することを考慮しながら実施されたインドネシアで初めての地下鉄建設事業であり、ジャカルタ首都圏の渋滞を緩和し、同国の経済発展に大きく貢献しました。
  • インドネシア初の都市高速鉄道(MRT)として、交通渋滞の悪化が著しいジャカルタの中心部ブンデランハイ駅と南部レバックブルス駅との間15.7kmを結ぶ鉄道路線。
  • 本邦技術活用条件(STEP)を活用してマスタープランから施工、O&M支援までオールジャパンで組成された円借款案件であり、高架橋(約9.8㎞)とトンネル(約5.9㎞)、全13駅、車両基地からなる土木・建築部分の工事、96両の車両調達や鉄道システム導入は、全工区本邦企業を主とするJVが担いました。通常6両編成の10分間隔での運転が行われますが、朝夕の通勤時間帯には、5分間隔での運行を行うことができるシステムが構築されています。

データ

工期:2013年8月~2019年3月
発注者:PT.MRT JAKARTA
応募者:
株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル(OCG)、日本コンサルタンツ株式会社(JIC)、東急建設株式会社、株式会社大林組、清水建設株式会社、三井住友建設株式会社

関係者
施工監理:OCG・JIC・パシフィックコンサルタンツJV
施工:東急建設 JO, 大林組JV, 清水建設JV, 三井住友建設JV
その他:
OCG・アルメックVPIJV(マスタープラン)、日本工営・長大・電気技術開発・交建 JV(基本設計)、JIC・日本工営・OCG・PADECO JV(O&M支援)、住友商事、日本車両(車両納入)等

評価のポイント

  • インドネシアで初めての地下鉄建設事業を日本企業が結集してオールジャパンで実施。首都ジャカルタの渋滞を緩和し、経済発展に大きく貢献しました。鉄道整備を軸とした交通体系への転換、鉄道整備と沿線開発という日本の成功モデルを海外で実現する好事例として位置づけられます。
  • 地下駅には、我が国の防災対策を参照して、地震、火災、水害に万全の対策が取られています。
  • 車両は、日本が強みとする軽量車両の採用により土木構造物の設計を最適化しコストを削減するなど、システム全体としての日本の高品質の鉄道インフラ技術を輸出しました。
  • 工事には現地人材を多用し、技術移転を積極的に実施。O&Mについても日本からの技術指導・移転によりトラブル対応も含めて安定した運営を実現しました。

第1・第2ボスポラス橋 大規模修繕プロジェクト[トルコ]

プロジェクトの概要

  • トルコのアジア側とヨーロッパ側を結ぶ第1ボスポラス橋(支間長1,074m、1973年完成、英企業施工)、第2ボスポラス橋(支間長1,090m、1988年完成、応募者施工)の大規模修繕工事。世界初の試みとなる難易度の高い技術を用いて、最小限の交通規制で安全に実現しました。
  • 第1ボスポラス橋では、老朽化した吊橋の大規模修繕工事で、世界初となる全240本の斜めハンガーから鉛直ハンガーへの取替えを交通開放した状態で実施しました。これは斜めハンガーの方が桁の損傷への影響が大きいとの最近の知見によるものです。
  • 世界的にもほとんど例のない補強ストランドによる吊橋主ケーブルの補強方法を採用し、除湿装置および湿度自動制御システム設置による予防保全を組み合わせることにより、コストを抑えて吊橋の延命化を図りました。

データ

工期:2013年12月~2019年3月
発注者:トルコ共和国道路庁
応募者:株式会社IHIインフラシステム

関係者
設計者:Parsons Transportation Group Inc.
施工者:株式会社IHIインフラシステム・Mak-Yol社 JV

評価のポイント

  • 工事開始時点で施工後40年(第1ボスポラス橋)/施工後25年(第2ボスポラス橋)が経過し、想定交通量を大きく上回る交通量によって大型貨物車両の通行を制限せざるを得ないまでに損傷・老朽化した橋梁の延命工事を、世界でも稀な技術力によりコストを抑えて実現しました。
  • 事前に行った第1ボスポラス橋健全性調査や第2ボスポラス橋建設及びイスタンブール大規模橋耐震補強工事等のトルコでの継続的な施工実績に裏付けされた精緻な大規模修繕工事計画等、技術力への評価を受注につなげました。
  • 本工事への参画を通して、今後国内外で案件数の増加が予想される長大橋の橋梁修繕工事に長期的に取り組むため、ノウハウの習得、若手エンジニア及び技能者の育成を図りました。

野口記念医学研究所先端感染症研究センター[ガーナ]

プロジェクトの概要

  • 野口英世博士ゆかりの地、西アフリカガーナ国における最先端の研究施設を有した医学研究所の建設プロジェクト。今般のコロナ禍においても地域の感染症対策研究の中心的な存在として、社会貢献を果たしています。
  • 1979年に我が国ODAにより設立・建設された、野口記念医学研究所に、BSL3実験室、PCR検査室、免疫・ウイルス・細菌学部門の研究室を実装した感染症に係る研究を中心とする先端感染症研究センターを無償ODA事業により建設。
  • 高温多湿や砂塵混じりの季節風といった現地の環境下のなか、施工時においては高性能HEPAフィルターの取付け手順の確立や、作業員に対する研究室内への入退場管理を重点的に行うことで、施工期間中でも質の高い管理を実施しました。
  • 新型コロナウイルス感染症に関しては、アフリカにおける感染拡大の当初において、ガーナ国内の8割、西アフリカ周辺国の約半数の検査を実施する等、西アフリカにおける感染症対策の国際的拠点として機能しました。

データ

工期:2017年3月~2018年9月
発注者:ガーナ大学野口記念医学研究所
応募者:清水建設株式会社

関係者
設計者:株式会社日本設計
施工者:清水建設株式会社

評価のポイント

  • 日本企業が国内外で培った研究所施設の設計・施工技術を適用することで、質の高いインフラの供用に貢献しました。
  • 精密な空調制御が求められるBSL3レベルの実験室において、本邦企業サプライヤーから調達するなど、日本の技術力を発揮。材料選定においては、イニシャルコストだけでなく品質の高さやメンテナンスのしやすさ、アフターケアの充実など総合的な観点から調達計画を実施。輸入から据え付けまで日本人スタッフが立ち合い、またアフターケアも継続的に実施することで、運用開始後の問題も生じないように考慮しました。

日本料理店「YAMASEN」を中心とした複合施設 Tank Hill Park 建築プロジェクト[ウガンダ]

プロジェクトの概要

  • ウガンダで初めて、日本企業が建設から運営までの全てを民間資金により行ったプロジェクト。十分な資材も人材もなく、多額の資金もかけられない状況で、工夫を凝らして日本の技術を移転し、現地の人々が称賛してやまない商業施設を完成させました。
  • 東アフリカの内陸国であるウガンダの首都カンパラでの日本料理店を中心とした複合商業施設の企画、設計、建設プロジェクト。
    敷地面積:3,371m2
    延床面積:785m2
    構造:木造、鉄筋コンクリートの混構造
  • 現地で最も安価で汎用性のあるユーカリ材を丁寧に乾燥、製材することで構造及び仕上げ材として用いることに成功しました。茅葺屋根や焼成レンガなど現地に馴染みのある材料、工法を用いました。

データ

工期:2017年1月~2018年8月
発注者:Cots Cots Ltd.
応募者:株式会社テレイン一級建築士事務所、Cots Cots Ltd.

関係者
設計者:株式会社テレイン一級建築士事務所
施工者:Cots Cots Ltd.、株式会社テレイン一級建築士事務所
協力設計:Dream Architects
写真:Timothy Latim

評価のポイント

  • 大型プロジェクトでは外国人労働力や輸入建材を重用することが多い中、日本人1名を除いて現地で雇用し、建材も可能な限り現地にて調達しました。また、現地では安価で豊富でありながら構造材としては活用されていなかったユーカリ材を、日本では一般的な木造建築の技術を転用することにより、構造材としての活用を実現しました。
  • アフリカでは分断されがちな地域住民・外国人双方が集える開かれた施設として、両者から高く評価されています。施設供用後は日本料理店・テナントにおいて現地の食材や人材を活用するとともに、施設内に託児所を設け子育て中の女性が利用・労働しやすい環境を整えるなど、エリアの持続的な発展を支えています。また、ウガンダ初の日本人料理人による日本料理店を中心に、日本文化の発信拠点としても機能しています。

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