第5回 JAPANコンストラクション国際賞

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建設プロジェクト部門

東西道路改修事業(国道70号線)[パキスタン]

プロジェクトの概要

  • パキスタン山岳地帯の数少ない幹線道路である国道70号線は、つづら折りの隘路が続き、落石や土砂崩れが多発し、通行の支障となっていました。本プロジェクトは、一般車両の通行を妨げず道路機能を維持したまま施工し、自然災害に対する強靭化と輸送力強化を同時に実現しました。
  • 高低差600mの急峻な山間部において、2個所の九十九折を含む土工区間と橋梁区間からなる全長11.5kmの道路を整備。道路線形を抜本的に修正して走行性を向上。平均縦断勾配を4.6%に抑え、全区間において制限速度40km/h(急カーブ区間のみ30km/h)での両側通行を可能にしました。急カーブ地点では最小半径30mの4径間連続鋼箱桁橋梁をはじめとする11橋を新設し、長尺車両の通行性を改善しました。
  • 同国初の採用となる本邦技術を積極活用して、一般車両の通行を妨げない工事を実施。急峻な隘路では既存道路と並行して「鋼製床版拡幅橋梁」を採用、盛土区間では「補強土壁工法」と「気泡混合軽量盛土工法」を導入。
  • 現地の石材資源を使った在来工法も積極的に採用。本邦技術と現地の施工方法それぞれの長所を効果的に組み合わせることで、コスト縮減と現地における雇用創出を実現。

データ

工期:2016年7月~2019年12月
発注者:パキスタン・イスラム共和国国道公団
応募者:大成建設株式会社、株式会社建設技研インターナショナル

関係企業
設計者:株式会社建設技研インターナショナル、株式会社オリエンタルコンサルタンツ
施工者:大成建設株式会社

評価のポイント

  • 鋼橋には耐候性鋼材、グラウンドアンカーにはエポキシ樹脂で被覆されたECFストランド等の本邦技術を採用することで、LCC低減を達成しました。
  • 硬質岩盤への杭打設等の高い技術力が求められる工事に対しては日系専門工事会社の協力によって対応しました。一方、維持管理については、日本人技術者が道路全般の点検方法、補修方法などをマニュアル化することで、現地技術者へのノウハウの移転を行いました。
  • 恒常的に落石、地滑り、洪水流による交通阻害が発生していた区間に落石防護壁の構築や排水路の新設などの防災対策を強化し、自然災害に対する強靭化を図りました。
  • 全工期にわたって一般車両の通行を妨げずに既存の道路機能を維持しながら施工。地域経済への負の影響を最小化し、地域住民の利便性維持に貢献しました。

MRT ダウンタウン線第三期工事;ベドックノース駅・マター駅・ベンクーレン駅及びトンネル工事

プロジェクトの概要

  • シンガポールの地下鉄建設において、市街地での大深度掘削・複雑な土質条件下でのシールドトンネル掘削・住宅街での大規模開削工事など、技術的難易度の高い3工区を安全かつ工期内に完成させ、日系企業としての技術力を示すとともに、公共交通インフラの発展に貢献しました。
  • ベンクーレン駅工区は地下6階構造で延べ床面積24,000m2であり、シンガポールにおける最大深度、最大床面積の駅である。巨大転石混じりの地盤を掘削する難工事で、商業ビルが林立する狭隘な場所でステークホルダーの意向を尊重しながら工事を遂行しました。
  • マター駅工区は地下駅と上下線で計2.7kmのシールドトンネルを建設。マター駅から掘進するトンネルは、軟弱地盤が支配する複雑な地盤を掘り進む中、上下線の線形が1D以下と接近する区間や既設の下水幹線トンネルを近接で通過する難工事でした。
  • ベドックノース駅工区は地下駅と1.4kmのシールドトンネルを建設。地下駅は駅構築物随所に特別な防爆設計がされており、有事の際には駅全体がシェルターの役目を果たします。外壁が通常よりも厚くて鉄筋量も多い構造で国民の安全を守る機能が備えられています。

データ

工期:2011年2月~2016年12月
発注者:シンガポール陸上交通庁
応募者:佐藤工業株式会社

関係企業
設計者:ARUP, T.Y. Lin International / Aedas, ONG & ONG
施工者:SATO KOGYO (S) PTE. LTD.

評価のポイント

  • 転石対策には日系建機メーカーと特別仕様の機械を開発・導入、トンネル工事には日系シールドメーカーのマシンを導入し、ハード・ソフト両面で日本の技術を取り入れた上で、現地の協力会社との協業で完工させました。
  • シンガポールでMRT路線工事を継続受注しており、当地で育成したローカル職員の配置提案も受注獲得の重要な要素となりました。本件実績での評価も得て、チャンギ国際空港新第5ターミナルのシンガポール初となる大口径トンネル工事も受注しました。
  • 建築建設庁優秀建設表彰の土木事業部門最優秀賞や、陸上交通庁インフラストラクチャーベストパートナー賞、労働省・職場安全衛生評議会の安全表彰等の多くの現地表彰を受賞。また、その成 果を新聞広告に掲載する等、シンガポールにおいて積極的な広報を展開し、日本の技術力をアピールしました。

新タケタ橋建設計画

プロジェクトの概要

  • ミャンマーに対する我が国の経済協力は、1954年に着工したバルーチャン第二水力発電所建設事業以来、同国の発展に寄与する様々な支援が行われてきました。無償資金協力による新タケタ橋も、周辺の交通環境改善と安全確保並びに現地技術者への技術移転により、ミャンマーのさらなる発展に貢献しています。
  • 旧タケタ橋は、ヤンゴン市南部に位置する経済特区と市中心部を結ぶ路線に位置し、物流の主要な橋梁の一つでしたが、渋滞が激しく供用開始から60年ほど経過して老朽化が著しいため、本邦無償資金協力による架替工事で新タケタ橋が整備されました。
  • パズンダウン川の中の橋脚には、ミャンマー国で初めて鋼管矢板井筒基礎工法が導入されました。品質確保を優先し、天候に左右されずに工事工程を管理するため、工場で製作された一本物の長尺な鋼管矢板を台船で水上輸送し、基礎工事を実施しました。
  • 利用頻度の高いパズンダウン川の水運輸送を阻害しないように、橋脚同士の間隔や水面から桁下までの高さを計画し、船舶航路の空間を確保する有効な形式として、PCエクストラドーズド橋が採用されました。この形式も、ミャンマー国で初めて導入されたものです。

データ

工期:2015年4月~2018年7月
発注者:ミャンマー連邦共和国 建設省
応募者:日本工営株式会社、東急建設株式会社、東洋建設株式会社、株式会社IHIインフラ建設

関係企業
設計者:日本工営株式会社
施工者:東急建設株式会社・東洋建設株式会社・株式会社IHIインフラ建設共同企業体

評価のポイント

  • 新橋架替に伴う道路線形の改良と車道や路肩の幅員増加で安全安心な道路が整備され、重量制限の緩和や4車線化によって慢性的な渋滞の解消や物流の効率化が図られています。
  • PCエクストラドーズド橋や鋼管矢板井筒基礎など本邦技術の積極的な導入と技術移転プログラムの実施によって、ミャンマー国技術者の能力向上に寄与しました。
  • 外資規制緩和直後に実施された本事業は、開通式典でミャンマー国建設大臣から日本水準の品質管理の下で実現した素晴らしい橋梁と評価され、本邦建設産業が同国に参入する足掛かりとなりました。
  • ケーブル制振装置の導入によってメンテナンスの負担軽減を図り、維持管理マニュアルを作成してライフサイクルコストに配慮しました。

香港国際空港第三滑走路建設地盤改良工事(第1工区)

プロジェクトの概要

  • 香港で初めて採用された日本のCDM(セメント系深層混合処理)工法にて、大規模な地盤改良工事を実施。施工技術に加え、安全や環境への取組みも高く評価され、当地の空の玄関口にて、日本のインフラ整備力を諸外国に向け発信しました。
  • 当プロジェクトでは133ha(第三滑走路計画面積は全体で650ha)の施工エリアに、74,074本(改良面積4.63m2/本、形状φ1,300mm×4軸)のCDM工法による地盤改良を行いました。改良体積は約730万m3であり、大規模なCDM工法の適用事例となりました。
  • 施工エリアの一部は建設残土の処分ピットであり、施工中の建設残土からの汚染水流出や、セメントスラリーが流出した場合の水質汚濁防止対策として、全11隻のCDM改良船にリアルタイム水質計測装置、汚濁防止枠(一次バリア)、シルトフェンス(二次バリア)を装備し、周辺環境に配慮した施工を行いました。
  • 現場海域は供用中の国際空港に隣接しており、空頭制限下での施工管理が求められました。CDM改良船は櫓に低頭改造(水面から最高点までの高さが50m以下)を施した後、香港に輸送。全作業船の船体位置、高度をリアルタイムで計測しながら施工を行いました。

データ

工期:2016年8月~2019年8月
発注者:香港機場管理局
応募者:五洋建設株式会社(Penta-Ocean - China State - Dong Ah Joint Ventureの代表者)

関係企業
設計者:Atkins / Mott Macdonaid
施工者:Penta-Ocean ‒ China State ‒ Dong Ah Joint Venture

評価のポイント

  • CDM工法は軟弱地盤をセメントスラリーとの攪拌混合で原位置固化するスピーディーな地盤改良工法であり、施工完了エリアごとに後続の埋立て工事へスムーズに引き渡すことで、滑走路建設事業 の円滑な進捗に貢献しました。
  • 当プロジェクトの上流段階であるCDM試験工事(2012年および2015年)で施工を担当し、その成功に貢献しました。そこで得た知見、ノウハウ、人材を活用した体制で入札に挑み、香港初の大規模 CDM工事の受注へ繋げました。
  • シナウスイロイルカの動態観察、CDM船上の騒音低減対策、セメントサイロへの集塵機設置など、周辺環境に配慮しながら施工を行いました。また台風到来時の事前退避を徹底し、海難・走錨事故 を防止しました。これらの取組みが評価され、香港機場管理局や香港政府から複数の環境・安全表彰を受賞しました。
  • 日本の大学からのインターンを受け入れ、また香港機場管理局や香港政府の若手職員へ現場見学会を通してCDM工法の施工技術や最新機械の紹介等を行い、若手人材育成に貢献しました。

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