国土交通省
 航空障害灯等の規制のあり方に関する検討会報告(概要)
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 本検討会は、平成14年6月に設置され、航空障害灯等の規制緩和の方向性について検討を行ってきたところであり、平成15年5月14日の第4回検討会において、その結果を以下のとおりとりまとめた。

1.航空障害灯等を巡るこれまでの経緯
 航空障害灯等に関する規制は、昭和35年の法制化以降、これまでに昭和55年、平成12年及び平成13年の省令改正でそれぞれの設置基準の見直しが行われ、昼間障害標識又は航空障害灯の削減が図られている。

2.諸外国との比較及びわが国の現状

  1. 諸外国との基準比較
     ICAO(国連の専門機関である国際民間航空機関)基準・諸外国とわが国との間で、航空障害灯の設置基準について見られる主な差異は、以下のとおりであった。
     (1)物件群の“群”としての扱い
    • ICAO基準や欧米諸国では、複数物件を一つの集合物件として捉えられる場合、これらの最も高い点や辺等に航空障害灯を設置するとの規定がある。

     (2)中光度航空障害灯の使用要件
    • ICAO基準やアメリカ等では、中光度航空障害灯について、早期又は特別に警戒が必要な場合等に使用するとの規定がある。

     (3)ライトアップ等による代替措置
    • アメリカ、カナダ、フランス、ドイツにおいてライトアップによる代替(航空障害灯の消灯)事例がみられ、特にアメリカ、カナダには具体的な基準も存在する。

  2. わが国の現状
     わが国おける航空障害灯設置物件に関する特徴として、以下の点があげられる。
     (1)設置物件のうち、鉄塔、煙突・柱類が約8割に相当。ビル、建物は約1割。
     (2)設置物件は沿岸部や平野部に多く分布。特に大都市部(三大都市圏)に集中。
     (3)都市部では、都心部にビル、建物が多く、これを鉄塔類が取り囲むように分布。
     その他の地域では、海岸線に沿って煙突・柱が、内陸部には鉄塔が分布。

3.規制緩和に関する意見・要望(主なもの)

  1. ビル及び景観関係者
    • ビル群の群としての扱いによる障害灯の削減、必要光度等の緩和(特に明滅光)。
    • ビル中間段の障害灯の撤廃又は設置間隔の拡大。
    • 断面が大きい等一定条件を満たす塔状工作物の昼間障害標識を不要とする。
    • ライトアップされたビル、長大橋等が十分視認可能であれば消灯を認める。
    • 改正措置内容の既存ビルへの積極的適用を推進する。

  2. 運航者
    • 設置基準高の引き上げ、地域区分等による設置基準高の区分化には否定的。
    • ビル、特にビル群に対する設置基準(個数、光度)の緩和には概ね理解。ただし、免除(一切設置しない)範囲の拡大、鉄塔等に対する設置基準の緩和には否定的。
    • 一定の条件下、大きく太い煙突等の昼間障害標識を不要とすることには概ね理解。
    • 一定の条件下、ライトアップを障害灯の代替と認めることには概ね理解。

  3. 一般意見募集
    • 建物に設置する障害灯は、100cd低光度灯を頂部に1灯のみ設置とする等更に削減。
    • 送電鉄塔等に対しても緩和措置を適用する(ビルと同様に扱う等)。
    • 送電線・ケーブル等は視認が困難で、事故に直結しやすい物件。

4.規制緩和の方向性

  1. 規制緩和に対する基本的考え方
    (1)諸外国の基準類を参考にしつつ、VFR(有視界飛行方式)機の飛行実態、地域特性を考慮するとともに、近年の都市再開発や都心高度化に伴う高層物件の増加、群立化の進展に応じた基準を導入すべき。
    (2)規制緩和の方向性の検討はもとより、今後の基準改正・策定に当たっては、運航の安全確保を大前提として、運航者の意見も十分尊重し、反映すべき。

  2. 検討結果
     上記「3.規制緩和に関する意見・要望」等に基づき、「2.諸外国との比較及びわが国の現状」を踏まえて検討を行った。なお、高光度航空障害灯及び中光度白色航空障害灯については、便宜上、白色閃光灯と総称した。
    (1)航空障害灯及び昼間障害標識の設置に対する緩和
     1)設置基準高とその区分化
     1設置基準高(60m)の妥当性
     現行の設置基準高(60m)は、引き続き維持。

     2地域別、物件種別による設置基準高の区分化(部分的嵩上げ)の導入可能性
     線引きによる区分の設定が困難であり、また、区分化による制度を導入するとした場合の運航者側の見解も概ね否定的であることから、導入困難。

     2)免除(/設置)基準、設置方法(航空障害標識のつけ方)
     1複数のビル(都市部のビル群等)に適用可能な新たな基準の検討
     A 複数のビルが隣接して立地 イメージAPDF形式
     ICAO及び欧米諸国で規定のある「大規模物件/群立物件」の概念の活用によりビル群等への航空障害灯設置個数を削減(全ての航空障害灯が不要となるケースもあり得る)。

     B 複数のビルが近接して立地 イメージAPDF形式
     中光度赤色航空障害灯(明滅光)が設置されたビルの近傍にあり、一定の要件を満たすより低いビルについては設置簡素化。結果として、高層ビル群では、中光度赤色航空障害灯の設置箇所が群の突出部や外周部等必要箇所に限定できる。

     2個別ビル(孤立して立地)に対する従来基準の見直し
     A 高さ150m未満のビル イメージAPDF形式
     100cd(カンデラ)低光度航空障害灯の水平方向の設置間隔を拡大。

     B 高さ150m以上のビル イメージAPDF形式
     中光度赤色航空障害灯の一部を低光度航空障害灯により代替。

     3昼間障害標識の設置に対する緩和
     A 昼間障害標識の設置判断基準の見直し イメージBPDF形式
     大きく太い煙突等、ある程度の実幅がある物件で、かつ塗色等も航空機からの視認性が得られると認められる場合は、昼間障害標識の設置が不要。

     B 白色閃光灯による昼間障害標識を設置する必要のない範囲の拡大 イメージBPDF形式
     白色閃光灯(ストロボライト)が設置された物件の周辺物件に対し、昼間障害標識を設置する必要がない範囲を夜間における航空障害灯と同等の範囲まで拡大。

    (2)ライトアップ等による代替措置 イメージBPDF形式
     ライトアップ中における航空障害灯の消灯。

    (3)その他
     1灯質(光度、明滅周期等)の見直し
     灯質に係る緩和は、航空機からの視認性確保を前提とした場合、困難と判断されるため、中光度赤色航空障害灯自体の削減や低光度航空障害灯への置換え策で検討。

     2白色閃光灯の配光の見直し(近隣住民等へのグレア(眩しさ)による影響低減)
     白色閃光灯の配光特性に係る緩和は、航空機からの視認性確保を前提とした場合、困難と判断されることから、当面、遮蔽板を活用していくことが適当。

     3制度の活用
     緩和措置の実効性確保のため、行政側による改正内容の積極的周知活動。また、ビル頂部の塔屋類の扱い方等を含め、運用に係る指針も公開。

  3. 効果試算
     本措置を実施することにより、ビル群に対する効果として、仮に西新宿の高層ビル群をモデルとした場合には、以下のような効果があるものと想定。
    (1)航空障害灯の設置個数
     現行基準(想定値)と比べ、全体個数は約半数に、うち中光度赤色航空障害灯は約1/3に削減可能。
     平成13年7月の省令改正以前と比べ、全体個数は約1/3に、うち中光度赤色航空障害灯は約1/7に削減可能。

    (2)航空障害灯の設置コスト
     現行基準(想定値)と比べ、約6割減に(約3,700万円→約1,300万円)。
     平成13年7月改正以前と比べ、約8割減に(約8,300万円→約1,300万円)。

4.導入課題

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