商業施設

• 当該遊休地を保有する企業は、現在は土地の売却が難しいという判断から、当面何らかの利用をして一定の収益を上げたいと考えているが、将来、鉄道の輸送力増強、周辺の土地利用の変化、用途地域の変更等に伴って開発ポテンシャルが上がった段階での売却等にも対応できるように、土地利用を固定化したくないとも考えている。
  　
• 一方、当該遊休地は自動車利用には便利な立地条件にあり、駐車場も十分に確保できることから、土地利用規制が緩和されるのであれば、大型ディスカウント店等の商業施設用地として借地したいという引き合いがある。

• 工業専用地域に指定されている地域で商業施設の立地を認めるためには、ａ）用途地域の変更、ｂ）再開発地区計画の活用、ｃ）建築基準法４８条ただし書きに基づく許可の方法があるが、このケースのように都市機能の更新や市街地環境の整備・改善につながるとは必ずしも言えないプロジェクトの場合、企業の個別事情を背景とする偶発的な土地利用転換の要請に対してａ）又はｂ）の都市計画手法を敷地単位で適用することは、地方公共団体によっては実態上難しい場合もあると考えられる。
  　
• また、周辺敷地を含む地区の将来の土地利用構想がない中では、ａ）又はｂ）の都市計画手法を広く適用することは難しく、仮に適用すれば、現に操業中の工場の存続を危うくするおそれもある。
  　
• ｃ）の許可についても、地区の将来の土地利用構想がない中では、特定行政庁（地元地方公共団体の建築部局）にその判断を求めることは実態上難しい場合がある。

• 事業用定期借地権（10年〜20年）を設定すれば将来の借地契約の解除が担保されるが、10年未満の利用の場合、一般の借地契約では将来の契約解除が担保されないため、土地所有者側に不安が残る。また、一時使用賃貸借（通常１年未満）では更新の担保がないため、借地人側に不安が残る。

• 商業施設を整備する事業者にとって、事業用定期借地の期間（10年〜20年）と建物の法定耐用年数（重量鉄骨造の場合で34年）が対応していないため、期間終了時に未償却資産が残る形になる。

• 10年未満の暫定利用の場合は、借地期間の円滑な終了を担保するため、第三者となる公的な機関（産業系の団体か）が土地所有者と開発者との間に入り、三者で利用期間等に関する協定を結んだ上で、公的な機関が土地所有者からは通常の借地契約で借り上げ、開発者に対しては一時使用賃貸借による転貸を行う。
  　
• なお、土地所有者自らが商業施設を整備する場合には、定期借家権が活用できるため、第三者機関は必要ない。

• 事業用定期借地権に基づく建築物であって、産業構造の転換や都市の再構築に寄与する一定のものについて割増償却（耐用年数を借地契約期間とすることなど）を認める制度を検討する。

公園、緑地等

• 当該遊休地を保有する企業は、土地の売却又は有効利用をしたいと考えているが、アクセス道路等もない中で、産業利用も含めて当面有効な利用方法が見つからない状況にある。
  　
• 一方、市民の中には水辺に親しみたいという強いニーズがあり、地元地方公共団体も、厳しい財政状況ではあるが、こうした市民ニーズにはできるだけ応えたいと考えている。
  　
• また、地方公共団体の防災担当部局は、大規模災害が起きた場合の救援活動の拠点や瓦礫処理の受け皿として、当面、当該遊休地が活用できるのではないかと考えている。
  　
• なお、公園、緑地等としての暫定利用によって地区のイメージが向上し、またアクセス道路等も整備されれば、将来は別の開発可能性が出てくるのではないかと土地所有者は期待している。

• 公園、緑地等としての利用は収益がほとんど期待できない一方で、利用に際しては公園、緑地等としての整備（親水護岸の整備を含む）のほか、アクセス道路等の整備も必要になり、これらの初期投資に加えてその後の維持管理費、固定資産税等が土地所有者にとって大きな負担となる。
  　
• また、土地所有者が自ら公園、緑地等として一般開放をした場合、事故等に対する管理責任が土地所有者に生じる。

• 一般開放される公園、緑地等の場合には、暫定利用期間終了時に市民から継続要望が出される可能性が高く、また、希少生物等が棲息した場合には、その保護の観点からも土地利用転換が難しくなる。

• 公園、緑地等に付随する店舗、飲食店等の建設は、工業専用地域及び工業港区においては認められておらず、許可等が必要になる。

• 地方公共団体において、当該遊休地の一部をその立地条件や規模などからみて、将来にわたって公共的な公園、緑地等として確保する必要があると判断できる場合であって、地方公共団体の財政状況等から直ちに土地を取得し自ら整備することができない場合には、次のような対応を想定することができる。

• 当該遊休地全体の土地利用計画、将来にわたって公共的な公園、緑地等として確保する区域、一般開放する時間その他管理の方法、整備及び管理に関する役割分担、協定の有効期間（合意に基づく更新は可能）などについて、土地所有者と地方公共団体との間で協定を結ぶ。
  　
• この場合、将来にわたって公共的に確保する区域以外は、当該区域との調和に留意しつつ、土地所有者が既存工場との間の緩衝緑地帯や有料のテニスコート、ゴルフ場等として暫定的に整備することも考えられる。

• 原則として土地所有者が、協定に基づいて当該遊休地全体の整備及び管理を行う。
  　
• なお、将来にわたって公共的な公園、緑地等として確保する区域については、地方公共団体に無償で借地させ、地方公共団体が施設の整備及び管理を行うことも考えられる。

• 地方公共団体は、土地所有者が行う整備に関連し、必要に応じて次のような支援を行う。

ａ）将来にわたって公共的な公園、緑地等として確保する区域について、借地公園制度の活用、ＰＦＩ事業の活用、無利子融資等による整備及び管理に対する支援並びに税制上の措置

ｂ）アクセス道路、親水護岸など関連する公共施設の整備（土地所有者が整備する場合の補助を含む） など

• また、地方公共団体は、将来にわたって公共的な公園、緑地等として確保する区域については、適切な時期にその管理の引継ぎを行うよう努める。

• 協定で定めた期間終了後、原則として土地所有者は、公共的に確保する公園、緑地等との調和に配慮しながら、それ以外の土地の譲渡、転換等を行うことができるものとし、その際に地方公共団体は、必要に応じて土地利用規制の見直しを行うものとする。

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