資料7−3

「産業構造転換に対応した都市政策のあり方懇談会」

報告・本文(案)


 目 次

T.検討の背景と問題意識

U.産業構造転換の動向と都市への影響

 1.産業構造転換の動向

(1)産業間の構造変化
(2)産業の質的変化

 2.産業構造転換と土地利用の関係

(1)土地利用の動向と都市計画の対応
(2)工場等の遊休化の現状

 3.産業構造転換の都市への影響

(1)長期的な影響
(2)当面の課題

V.産業構造転換に対応した都市政策のあり方

 1.基本的な視点

(1)産業構造転換に対応して求められる都市像
(2)都市政策における総合的な取り組みの必要性

 2.工場跡地等の土地利用転換への対応

(1)非計画的工業地における工場跡地等の取り扱い
(2)計画的工業地における工場跡地等の取り扱い

 3.工場跡地等の暫定利用について

(1)暫定利用の必要性
(2)暫定利用の考え方と種類ごとの特徴
(3)暫定利用の都市政策的な意義
(4)暫定利用を円滑に行うための課題

W.大都市地域における工場跡地等の活用に関し重点的に取り組むべき政策

 1.産業構造転換に対応した都市政策のあり方に関する指針の明示等

 2.工場跡地等の暫定利用を円滑に行うための方策の充実


T.検討の背景と問題意識

 これまで我が国の都市政策(都市計画)は、土地利用規制と都市基盤施設整備とを主要な政策手段としながら、基本的には、工業化の進展とそれに伴う人口・産業の都市への集中による旺盛な土地需要に対応するため、良好な住環境を備えた新市街地の形成と産業立地の受け皿整備を主要なテーマとして取り組んできた。

 しかし現在では、人口の都市集中の鈍化、少子高齢化の進展、生活者ニーズの多様化、環境問題の高まり、情報化の進展、経済のグローバル化など都市をめぐる状況は大きく変化している。

 特に産業構造については、我が国全体の就業者数や生産額に占める商業・サービス業など第三次産業の割合がますます高まる一方で、製造業など第二次産業の割合は停滞するとともに、情報・通信分野をはじめとする新たな産業の成長や、製造業における生産性の向上や先端化など、その量と質の両面において大きな構造転換が進んでいる。

 また、産業構造の転換に伴って既成市街地において工場跡地等の遊休地が大量に発生するとともに、そのような企業保有の遊休地の適切な処理を進めることが、資本の生産性向上による我が国産業の国際的な競争力回復の観点から求められている。

 以上のような状況から、都市政策(都市計画)の主たるテーマは、かつての新市街地整備から既成市街地の再整備に移ってきているが、これまで産業の発展が経済・生活の両面において都市に大きな影響を及ぼしてきたことを考慮すれば、産業構造の転換は都市のあり方そのものに大きな変容を迫るものであると考えられる。

 このため本懇談会においては、現在我が国が直面している産業構造転換の動向とそれが都市に及ぼす影響を把握し、新たな産業構造に対応しつつ、21世紀の豊かで活力ある経済社会の基盤として都市の再構築を図るための、基本的な考え方や方策を明らかにすることを目的として検討を進めてきたところである。

 なお、今回は主に東京圏をはじめとする大都市地域を念頭におき、産業構造転換に伴って遊休化が進む工業地の問題を中心に検討を進めたところであり、地方圏における都市政策のあり方等については、あらためて検討が必要であると考えている。

 

U.産業構造転換の動向と都市への影響

1.産業構造転換の動向

(1)産業間の構造変化

 近年のわが国の産業は、製造業などの第二次産業から商業・サービス業などの第三次産業に重心が移って来ており、この傾向は今後も続くと予測されている。

 まず、これまでの産業別就業者数の推移をみると、商業・サービス業等の第三次産業の割合が1950年以降一貫して高まっているのに対し、製造業等の第二次産業の割合は1970年以降微減している。同様に産業別国内総生産の構成比をみても、第三次産業の割合が徐々に高まるのに比べて、第二次産業の割合は1970年以降ほほ横ばいとなっており、製造業については、1990年代に入って生産額も横ばいとなっている。

 一方、今後の動向に関して通商産業省の産業構造審議会が行った予測では、産業別就業者数については、第三次産業に従事する者の数が引き続き増加し、なかでも情報・通信、ビジネス支援、娯楽・生活サービス、教育・医療・福祉等の分野で著しい伸びが予測されている反面、製造業に従事する者は横ばいか微減であり、建設業や第三次産業の中でも卸売・小売業への従事者は減少するとされている。また、産業別生産額については、卸売・小売業を含む第三次産業全般が著しく増加すると予測されており、製造業は、機械製造業などは比較的高い伸びを示す一方で鉄鋼・非鉄金属等は微増にとどまるなど業種によって差がでるものの、全体としては第三次産業に比べて低い伸びにとどまると予測されている。

(2)産業の質的変化

 産業別生産額等に表れる産業間の構造変化とは別に、それぞれの産業の内部において質的な転換や高度化が進んでいる。

 製造業の分野においても、先端技術の導入等による生産性の向上や高付加価値化、新製品開発による新たな市場の開拓、ISO14000sの認証取得等による環境対策の強化などを通じて今日の経済社会の様々なニーズに対応しようとする動きがみられる。

 また、製造業を担う企業という側面からは、競争力のある製品製造への特化、生産設備の集約や一部海外移転、分社化やアウトソーシングなどを通じて経営の効率化・低コスト化を図るとともに、製品のアフターサービスの領域において収益確保を図るような、製造業のサービス業化とも言うべき動きも出てきている。

 さらに、今日急速に成長しつつあるIT(情報通信技術)産業は、既に様々な産業活動を支える重要な基盤となっているが、それ自身はパソコン等機器の製造、通信ネットワークの提供、ソフト開発やコンテンツ制作などから構成されており、従来の産業区分にあてはまらない複合的な産業となっている。

 なお、以上のようにわが国の産業構造全体はいわゆるソフト化の傾向を強めているが、今後の世界経済の動向などにより不透明な部分はあるものの、中長期的に見て製造業全体が急速に縮小するという状況にはないと考えられる。すなわち、デザインやサービスといったソフトな付加価値は、製造業が生み出す製品の形で、あるいは製品を活用して提供される場合が多く、製造業という基盤がなければ産業全般の発展も見込めないこと、先端化・高度化して資本集約的・知識集約的な性格を強めている分野の製造業は容易に海外移転できないこと、さらには製造業が多様な雇用の確保に有効であることなどから判断すれば、今後とも我が国の産業全般の中で製造業は一定の位置を占めるものと考えられる。

2.産業構造転換と土地利用の関係

(1)土地利用の動向と都市計画の対応

 @製造業について

 各種産業の中でも、土地利用において比較的大きな面積を占める製造業の立地動向をみると、明治の殖産興業期以来、市街地から離れた田園地帯等に個々の事業者の判断により立地し、その後市街地の外延化に伴って一般市街地に包み込まれた非計画的な工業地と、第二次大戦後の高度成長期を中心に、国や地方公共団体の積極的な関与のもと、臨海部や内陸部において一般市街地と隔離する形で計画的に造成された工業地とに大別することができる。

 このうち前者の非計画的な工業地については、都市計画においてもその集積の実態に見合った用途地域等を指定し、産業の保護と住環境の保全の両立が図られてきたが、周囲との摩擦や土地価格の上昇、比較的ゆるやかな土地利用規制、比較的高い公共施設の整備水準などを背景に、また規模拡大など工場側の要請も反映する形で、これまでも土地を売って工場が転出し、跡地が他用途に転用されることが恒常的に行われてきた。特に大都市地域では、昭和30〜40年代の工場制限三法により既成市街地内の多くの工場が転出し、跡地が計画的な住宅地や大規模商業施設など地価負担力がより大きい用途に転用されている例が少なくない。都市計画ではこうした動きに対し、土地利用転換の実態に即して用途地域の変更等が行われてきた。特に1980年代には、産業構造の転換による大規模な工場跡地等の発生に対応し、再開発地区計画制度や新たな面的整備事業などが整備され、計画的な住宅地や商業施設への転換が促進された。

 一方、後者のような計画的に造成された工業地については、工業用地の造成に併せて必要な公共施設を整備し、既成市街地からの移転も含めて積極的に工場を誘致するとともに、工業専用地域指定などの土地利用規制を適用してその保護を図るということが行われてきた。こうした工業地では、厳しい転用規制、産業利用を想定した公共施設の整備水準、一般の市街地とは隔離されていることなどから、他用途への転用は必ずしも容易には行われず、工業地として比較的安定した土地利用が維持されてきた。

 しかしいずれのタイプの工業地も、1970年代から顕著になった産業構造の転換により、それまでにない規模とスピードで土地利用転換や遊休化が進んでいる。特に近年では、厳しい国際競争のもとで企業の競争力回復の観点から過剰生産設備の整理等が行われ、結果として発生する遊休地の有効活用あるいは処分が検討されている。

 なお、近年の工業地の土地利用動向を業種別にみると、事業所あたりの敷地規模が大きく工業用地全体に占める割合も大きい鉄鋼、化学が、1970年代以降敷地面積がほぼ横ばいであるのに対し、電気機械、輸送用機械はほぼ一貫して敷地面積を伸ばしてきている。また、新規工場立地のための用地取得の動向をみると、多少の変動はあるものの、1970年代半ば以降は敷地面積・事業所数ともにおおむね増加傾向にあったが、1990年代に入っていずれも減少が続いている。

 A新規・成長産業について

 また、これから成長が期待されている産業のうち、情報創造・提供サービス、情報ネットワーク活用型生活関連サービス等の情報・通信産業、インテリア、ファッション、音楽ソフト等の生活文化産業、コンサルティング、セキュリティサービス等のビジネス支援産業、中古住宅流通、住宅リフォーム等の住宅関連産業などの多くは、一般に広い事業用地は必要とせず、むしろ顧客や事業協力者との近接性、新しい仕事に適応した優れた労働力、創造的な都市環境などを求めて、半ば自然発生的に既成市街地内に立地する傾向がある。このため、こうした産業は都市計画や従来型の公共施設整備による直接的な立地誘導は難しく、魅力的な都市環境や快適な生活環境の形成などを通じて間接的にその成長を助けることができるのみである。

 一方、新規・成長産業の中でも、eコマース(電子商取引)の発展などに伴って成長が見込まれる物流・流通関係は、商品の保管や荷捌き等のために比較的大きな土地を必要としており、さらに廃棄物処理・リサイクル産業、バイオテクノロジー産業などは、一般的な市街地とは隔離された大規模な土地を必要とする可能性がある。

(2)工場等の遊休化の現状

 @遊休地の発生状況

 工場等の遊休化の実態を包括的に捉えた調査はほとんどないが、経団連会員企業を対象に今回実施した「遊休地実態調査」やその他の既存調査等からは、大量の遊休地の発生とその多様な実態がうかがえる。

 まず遊休地の種類についてみると、保有企業等が遊休地として捉えているものの中には、大小様々な規模の工場や資材置き場の用地のほか、比較的小規模な営業所、保養所、社宅等の敷地、大規模なリゾート開発を予定していた山林など様々な土地があり、その現況も、更地に限らず遊休化した施設が残っている場合、倉庫等として比較的低度の利用が行われている場合など多様である。

 次に遊休地の発生場所についてみると、既成市街地内、臨海部及び都市郊外に大別され、それぞれ周辺環境や開発ポテンシャルなどが異なるが、その規模については、リゾート開発予定地を除けば大規模な遊休地は主に臨海部で発生している。ただし、その中にも数ヘクタール規模のものから 300ヘクタール規模のものまで大きな幅がある。なお、既成市街地内の中にも、一部に数10ヘクタール規模の大規模な工場跡地が存在している。また、臨海部や都市郊外の計画的工業地では、遊休化した工場の隣に操業中の工場があり、当面遊休化の予定もないという例が多い。

 遊休化の時期についてみると、工場用地が遊休化するのは1970年代以降に見られる現象であるが、特に1990年代に集中している。この中には、事業拡張予定地として購入された土地が、その後の経済情勢の変化や社内事情により、未利用のまま置かれている例も少なくない。また、営業所、保養所、社宅等の敷地などが遊休資産として扱われるようになったのは最近の特徴である。

 A保有企業の対応

 こうした遊休地を保有する企業は、企業会計上の資産圧縮の観点から当該土地を売却したいという意向が一般には強いが、実際には、既成市街地内など開発条件の優れた土地については処分や土地利用転換が進んでいるものの、臨海部の工業専用地域や臨港地区にある大規模な工場跡地等については、売却先が見つからず、また自ら開発することも困難であるという例が多い。

 このため、遊休化した状態のまま置かれたり、当面は駐車場や資材置き場として暫定的に利用されているが、土地の売却や転換が進まない要因としては、工業専用地域等による厳しい土地利用規制や、非工業的土地利用に対応する都市基盤施設の不足ということに加えて、今後の人口・産業の動向のもとで、遊休地の規模や立地条件、売却希望価格等に適合する新たな土地需要が少ないという面も大きいと考えられる。

 なお、そうした遊休地を保有する企業の対応には、地元自治体とも連携を図りつつ積極的に開発構想を検討するものから、当面は模様眺めのという姿勢のものまで、それぞれの社内事情を反映してか相当の幅が見受けられる。

 

3.産業構造転換の都市への影響

(1)長期的な影響

 産業構造の転換は、例えばいわゆる企業城下町における工場閉鎖等が、地域の雇用機会の減少、消費の落ち込み、地元自治体の税収の減少などを通じて当該都市の経済基盤を脅かしかねないように、都市そのものの成長や衰退に大きな影響を及ぼすものである。

 また、近代の都市が、産業革命以降の工業化の進展と密接に関連して形成されてきたように、長期的には産業構造の変化と経済・社会システムの変化が相互に影響しあい、都市のあり方に大きな変容をもたらす可能性も考えられる。

 例えば、少子高齢化社会が進展する中では、子育てや家事をこなしながらも家庭の外で働きたいと望む女性や、持てる知識や技術を若い人に伝えながら働きたいと望む元気で経験豊かな高齢者などが働きやすい環境を整えるため、産業と居住とが調和した職住近接型の都市形成の必要性がますます高まるものと考えられる。また、短いサイクルで変化しつづける先端的な商業・サービス業は、用途や機能の変化に柔軟に対応できる建築や都市計画を必要とするであろうし、市場経済の拡大に伴って成長を続ける物流関係は、これまでの都市の交通体系や土地利用の再編を求めるものと考えられる。さらにIT革命とも呼ばれる急速な情報通信技術の発達は、産業構造だけでなく、文化やライフスタイルにも大きな変化をもたらし、そうした諸々の活動の舞台である都市のあり方に根本的な変化をもたらす可能性も否定できない。

(2)当面の課題

 上記のような長期的あるいは根本的な影響のほかに、当面の課題として、産業構造の転換に伴う遊休地の発生や新規・成長産業の登場は、都市に次のような影響をもたらすものと考えられる。

 @遊休地発生の影響

 まず、産業構造転換に伴う遊休地の大量発生は、用途地域等において想定している土地利用のあり方と矛盾するほか、放置すれば市街地の荒廃や既存の都市インフラの不効率化をもたらすおそれがある。

 また、他用途への土地利用転換が行われる場合にも、例えば工場地帯への無秩序なマンション立地が、劣悪な居住環境を形成するとともに、周囲の既存工場の存立を脅かし製造業の活力を奪うおそれがあるなどの問題が生じる場合もある。

 逆に、密集市街地におけるオープンスペースの確保、面的な市街地整備の種地や都市基盤施設整備に伴う代替地としての活用、大規模性を生かした商業・業務・交流等の新たな拠点や良好な環境を備えた都心居住地の形成など、都市再構築を進めるうえでの貴重な空間資源として、あるいは大規模災害時の避難や救援活動、復興事業などの拠点として、遊休地が活用できる可能性も考えられる。

 A新規・成長産業の影響

 産業構造転換の過程で生まれる新規・成長産業の中には、既成市街地の物的・社会的・文化的なストックを基盤として半ば自然発生的に立地するものが多いことから、従来の都市政策で誘導することは難しいが、新規・成長産業が発展する環境を用意できるかどうかは、その都市の活力の維持や成長に大きく影響する可能性がある。

 また、廃棄物処理・リサイクル産業、バイオテクノロジー産業など、居住系の土地利用とは相容れない種類の新規・成長産業に対して、都市政策としてどのように対応するかも重要な課題である。

 

V.産業構造転換に対応した都市政策のあり方

1.基本的な視点

(1)産業構造転換に対応して求められる都市像

 @安全・快適で利便性と文化性の高い魅力的な都市

 現在わが国では、人口の大半が都市に居住し、経済活動の大部分が都市で営まれているが、都市をめぐる状況は、産業構造の転換をはじめ、人口の都市集中の鈍化、少子高齢化の進展、生活者ニーズの多様化、環境問題の高まり、情報化の進展、経済のグローバル化など大きく変化している。

 こうした変化に的確に対応し、21世紀の豊かで活力ある経済社会を築いていくためには、安全で快適な生活環境の整備や福祉の向上などに加え、情報通信技術を基盤とする高度に知的・感性的な産業を発展させ、あるいは伝統的な技術を再生させることを通じて特色ある都市文化・地域文化を醸成し、グローバルな交流を深めていくことが必要である。このため、優れた人材が育ち、集まり、活発に交流するような質の高い居住、労働、遊びの場と文化的環境とを備えた魅力ある都市の形成が重要である。

 すなわち、21世紀の豊かで活力ある経済社会の基盤となる安全・快適で利便性と文化性の高い魅力的な都市の創造を図るため、既成市街地の再編・整備を中心に都市の再構築を図ることが、今日の都市政策の最重要課題となっている。

 A用途混在・職住近接型のコンパクトな都市

 この際に目指すべき具体的な都市像は、今後の経済・社会の動向により不透明な部分も多く、また、それぞれの都市固有の条件に応じて異なるとも考えられるが、おおよその方向としては、経済、文化、交流等の諸活動が都市を舞台として活発に展開されるようなコンパクトで職・住・遊のバランスがとれた都市であり、かつ地域固有の歴史、文化等を反映し、市民共有の資産として世界に誇りうるような都市という姿を描くことができる。

 産業構造転換との関連においても、低公害の都市型製造業や商業・サービス業が都市における産業の過半を占めるようになり、なかでも情報、生活文化など今後の経済成長をリードする産業が魅力ある創造的な空気に充たされた都市環境を求めることや、少子高齢化社会に対応した働きやすい雇用の場の確保という問題を考えあわせれば、基本的には、これまでのような用途分離型の都市構造・土地利用から、用途混在・職住近接型のコンパクトな都市構造・土地利用への転換がより一層求められると考えられる。

 なお、従来から都市に立地してきた製造業や今後の新規・成長産業の一部には、混在型の土地利用には馴染まないものもあるため、そのような産業活動のためのスペースの確保にも留意する必要がある。

(2)都市政策における総合的な取り組みの必要性

 これからの都市政策の基本は、既に述べたように、安全性と快適性と利便性と文化性とを高いレベルで備えた魅力的な都市空間の創造に向けて、既成市街地の再編・整備を中心に都市の再構築を図ることである。

 このことは、都市における市民生活の質の向上のみならず、産業との関連においても、既成市街地の物的・社会的・文化的なストックを基盤として成立する新しい都市型産業を振興する上で重要であり、それらを通じた都市の経済基盤と競争力の維持・向上を図る上でも不可欠である。

 また、都市の再構築を進めること自体が、「都市づくり産業」とも呼ぶべき新たな産業クラスターを成長させる可能性も期待できる。これは、従来の建設業や不動産業の枠にととどまらず、都市の魅力づくりに関する総合的な企画・調整や、民間資金を都市開発に誘導するためのファイナンス、新しい建設材料や建築物のリニューアル技術、移動・エネルギー・ゴミ処理等に関する高度なシステム、都市型観光サービスなどに関連する非常に裾野の広い産業クラスターである。

 このような認識のもとに都市の再構築を進めるためには、従来の都市政策の枠組みにとらわれず、産業政策、福祉政策、文化政策等と一体化した総合的な取り組みが重要であり、特に都市の再構築において中心的な役割を担う地方公共団体において、こうした総合的観点からの取り組みが求められる。

 なお、都市計画の分野においても、例えば用途混在・職住近接型のまちづくりを進めるためには、従来行われてきた用途規制にとどまらず、地区計画や特別用途地区の活用を含めて、よりきめ細かな土地利用のコントロールが必要になるものと考えられる。また、比較的短いサイクルで変化する産業活動と、長期的なストックとなる土地・建物との関係を調整するためには、建築物の形態や街並み、あるいは環境面のコントロールを中心とする手法を導入することなども視野に入れながら、検討を進めることが必要である。

2.工場跡地等の土地利用転換への対応

 産業構造転換の過程で大量に発生している工場跡地等の取り扱いは、遊休資産の処理とそれによる企業経営の改善という観点においては産業政策の問題であるが、こうした土地の利用のあり方が都市構造や都市環境にも大きな影響を与える場合があることから、都市政策においても重要な課題である。

 その際、当面は我が国における製造業全般が急速に縮小するという状況にはなく、したがって遊休地の発生は個々の事業者の事情を反映して偶発的になっている一方で、工場跡地等の転換後の土地需要が量的にはあまり多くを見込めないという状況をまず認識することが必要である。また、地方公共団体にとっても、急激な土地利用転換は地域の雇用確保や安定的な都市環境の維持の観点から必ずしも歓迎される状況にはなく、さらに従前の土地利用の状況によっては、土壌汚染の可能性を考慮することが必要になる場合も考えられる。

 こうしたことから、工場跡地等については、いたずらに転換を促進するのではなく、将来の都市構造や土地需要の動向などを見据えて、土地利用の変化に要する時間を考慮しながら、適切に対応することが重要である。特に、既成市街地内に非計画的に立地した工業地と、臨海部や都市郊外で計画的に造成された工業地とでは、それぞれの形成経緯や置かれている状況が異なることから、そうした点を考慮した対応が必要である。

(1)非計画的工業地における工場跡地等の取り扱い

 @土地利用転換への積極的な対応

 既成市街地内にある非計画的に形成された工業地については、これまでも恒常的に転換が行われてきたところであり、一般的には産業用途と隣接する居住用途との摩擦の解消にも効果があることから、今後も具体的な土地利用転換の要請があれば、原則として、都市計画等においても積極的に対応することが適切である。

 このため地方公共団体は、次項のような点に留意した上で、土地利用転換が具体化する段階で、再開発地区計画等の活用や転換に関する手続きの迅速化をより一層進めるとともに、必要に応じて周辺市街地との一体的整備も視野に入れながら、区画整理をはじめとする面整備事業の活用、道路、公園等の公共施設の整備、都市基盤整備公団等への参画要請などを通じ、積極的に土地利用転換を促進すべきである。

 A留意すべき事項

 比較的規模が大きい工場跡地等は、既成市街地に残された貴重な空間資源であり、防災性の向上など周辺市街地の整備・改善のために活用できる可能性があることから、そうした工場跡地等の転換の動きがある場合には、必要に応じて土地の先行取得等を行い、当該土地の公的利用を優先的に検討すべきである。

 また、公的利用の必要がない場合にも、転換後の新たな土地利用が都市構造や周囲の市街地環境にどのような影響を及ぼすかを個別に評価し、必要に応じて望ましい土地利用形態を示し、開発事業者を誘導すべきである。

 なお、中小の製造業が集積している地域においては、技術力を持った中小製造業がわが国製造業の生産活動や技術開発を支えている側面があるとともに、当該地域において産業と生活とが一体になったコミュニティを形成し、一定の雇用を生み出している場合があることを考慮し、産業政策等との連携のもとに、そのような中小製造業の操業環境の保護に配慮することが必要な場合もある。

(2)計画的工業地における工場跡地等の取り扱い

 @マスタープランにおける概ねの土地利用方針の明確化

 計画的工業地については、工場跡地等が大規模に発生する場合が比較的多く、その転換は将来の都市構造に大きなインパクトを与えうるものである。このため地方公共団体は、工業地の立地の広域的な位置付けに応じて、都市計画のマスタープランにおいて土地利用の概ねの方針を明らかにした上で、個々の転換の要請に対応することが適切である。

 A一般市街地に隣接する地区についての方針

 基本的には、臨海部の工業地等のうち一般の市街地に隣接する地区については、当該地区に対する広域的な土地需要、当該地区内での土地利用の混在状況、公共施設の整備状況や将来の整備構想を考慮した上で、地区内の従来からの土地利用と著しい齟齬がない場合には、原則としてプロジェクトごとの部分的な転換を認めるべきである。

 B一般市街地から隔離された地区についての方針

 一方、臨海部において港湾機能、運河、広幅員道路等に接続し、一般市街地からは隔離され、工業または流通の機能に特化している地区や、内陸部の計画的な工業団地や流通団地については、当面、既成市街地内の非計画的工業地からの移転の受け入れも含め、原則として工業または流通の機能の中での転換を図るべきである。特に、今後は一般市街地から隔離された大規模な産業用地を新規に確保することが困難であることから、将来において廃棄物の処理・再生、バイオテクノロジーなど一般市街地とは相容れない産業への転換も視野に入れることが必要である。

 ただし、複数の工場等が集積する一体的にまとまった地区において、少なくとも地区の過半が遊休化し、あるいは遊休化することが確実であり、かつ地区内の土地所有者の合意に基づく他用途への転換の事業的な目途が立った段階では、当該地区の一体的な土地利用転換に柔軟に対応することが適切である。

 C土地利用転換に際しての留意事項

 計画的工業地においても、工場跡地等の他用途への転換を進めることとなった場合には、非計画的工業地の場合と同様に、公的利用の可能性や転換が及ぼす影響を検討するとともに、必要に応じて土地利用規制の緩和、関連する手続きの迅速化、面整備事業の活用や関連公共施設の整備、都市基盤整備公団等の参画など、転換が円滑に進むような措置を積極的に講じるべきである。

 また、工業利用から工業利用への転換を進める場合にも、最近の企業経営合理化の下で、従来は同じ工場敷地内で用意されていた福利厚生等の機能が外部化される傾向にあることを考慮すれば、就業者に対する快適な労働環境の提供の観点から、工業地への比較的小規模な商業施設やサービス施設、交流施設等の限定的な立地に対して、その内容を個別に判断して柔軟に対応すべきである。

3.工場跡地等の暫定利用について

(1)暫定利用の必要性

 工場施設等の遊休化は、それぞれの企業固有の事情によって発生するため、都市計画においてその時期や場所をあらかじめ想定することは困難である一方で、工場跡地等を保有する企業は、できるだけ早い処分や土地利用転換を希望しているところもあれば、その決断ができずに様子見のところもある。また、無秩序な土地利用転換は周辺との摩擦など土地利用の混乱を招くおそれがある。

 さらには、立地条件や売却希望価格にもよるが、最近の経済情勢のもとでは工場跡地等に対する本格的な需要は限定的であり、また、本格的な利用には道路等のインフラが対応していない場合もある。加えて、大規模な土地に関する将来需要については、都市整備と産業振興のいずれの観点からも不透明な部分が多い

 以上のような状況から、計画的工業地を中心として工場跡地等の発生と本格的利用との間に「需給のずれ」が生じている場合が多いが、こうした「需給のずれ」を調整し、産業競争力回復のための過剰生産設備の処理の促進と、将来をも見据えた望ましい土地利用の実現との両立を図るためには、既にある程度行われているように、工場跡地等の暫定利用を積極的に行うことが有効である。

 すなわち、本格的な転換需要に対しては、再開発地区計画や各種の面整備事業など土地利用転換を進めるための制度の整備がかなり進んでいることから、当面本格的な転換が見込めない工場跡地等を、その規模、周辺の土地利用や交通アクセスの状況、当該土地に対する需要等に応じて、駐車場、資材置き場、倉庫、スポーツ施設、店舗、娯楽施設、公園・緑地、防災空地等として適切に暫定利用することが効果的である。

(2)暫定利用の考え方と種類ごとの特徴

 ここで想定する工場跡地等の暫定利用は、原則として利用期間が数年から10数年程度にあらかじめ限定されており、建築物は無いか、ある場合にも利用期間終了後の解体や移動を予定したものである。また、用途については、将来の土地利用構想には必ずしも制約されないが、周辺市街地の環境の保全や周辺工場の操業環境の保護、暫定利用した場合の利用者の安全確保等の観点から、実態上支障がない範囲で考えるものとする。

 具体的には、次のようなグループが想定され、それぞれ政策的意義や対応の方向が異なるものと考えられる。

 @駐車場、資材置き場、倉庫等

 周辺に既存工場がある場合でもその操業環境の悪化を招くことなく、むしろ産業活動を支える土地利用であり、従来から多く行われている暫定利用の形態である。

 こうした土地利用の収益性は必ずしも高くないが、初期投資は比較的少なく、需要も比較的安定している。

 Aスポーツ施設、店舗、娯楽施設等

 既成市街地内にある工場の跡地利用として比較的よく見られる暫定利用の形態であるが、広く集客を行う施設であることから、工場地帯にある場合や住宅地に近接している場合には、周辺との摩擦等の問題を引き起こすおそれがある。特に近年、大規模ショッピングモールなどが10年〜15年といった期間を区切って暫定的土地利用として計画されることが少なくないが、このような施設の立地は暫定的であっても都市全体の土地利用に大きな影響を与えることが考えられるので、より慎重な対応が必要である。

 こうした土地利用は初期投資が多い一方で、立地条件がよければ比較的高い収益を期待できるが、必ずしも大規模な土地を必要とはしないという特徴がある。

 B公園・緑地、防災空地等

 暫定的に行われる土地利用の中でも一般的には公共性が高いと考えられる利用形態であるが、一方で地方公共団体がその必要性をあらかじめ判断し、都市計画決定等を通じて公共性を担保することは、臨海部の工業地等で土地利用転換の全般的な動向が見通せない中で実態上困難な場合もある。また、公園等の場合には一般市民の来場があるため、周辺の工場の操業環境の保護や公園利用者の安全確保に配慮が求められる。

 こうした土地利用は、ある程度の初期投資が必要になる一方で、収益性はほとんど期待できないため実例も少ないが、大規模な土地の利用にも適していると考えられる。

(3)暫定利用の都市政策的な意義

 @都市計画への寄与

 工場跡地等を暫定的に緑地等として利用する場合には、都市計画上必要な公園、防災空地等の一時的な代替施設となるばかりでなく、特に水辺へのアクセスが確保されるような緑地等の場合には、アメニティの向上を通じて将来に向けた当該地区の新しいイメージの確立にもつながる可能性がある。

 密集市街地に隣接する工場跡地等の場合には、当該密集市街地の整備改善事業に伴う一時的な移転の受け皿として暫定利用することにより、事業の促進に寄与することが期待できる。

 また、将来大きな土地利用の変動が見込まれるものの、現時点ではその内容や時期が定まらない地域においては、発生した工場跡地等を暫定的に利用することにより、将来に備えた大規模土地の留保が図れるとともに、暫定利用を通じて長期的な土地利用動向を見定める可能性も考えられる。

 さらには、暫定利用が行われている期間を活用して、地方公共団体や土地所有者が積極的に情報を開示し、将来の本格的な土地利用のあり方について幅広い市民の意見を直接・間接に聞くことにより、望ましい土地利用・都市構造の実現に向けて合意を形成していくことも期待できる。

 A現実的な要請への対応

 一般市街地に隣接する工業地など、長期的には全般的な土地利用転換の可能性がある地域で、当面は既存工場の操業環境を保護しながら具体の転換プロジェクトにも対応するためには、直ちに用途地域等の変更を行うのではなく、新しいプロジェクトを暫定的なものとして捉え、周辺との摩擦など実態上の問題がない場合に個別の許可等を柔軟に行うほうが、現実的な解決策になる場合がある。

 また、長期的な土地利用転換の方向が明らかであり、土地区画整理事業や基幹的公共施設の整備が計画されている場合であっても、事業の実施が長期間に及ぶ場合には、将来の土地利用構想には適合しない用途でも、当該地域内の土地を暫定的に利用するほうが合理的な場合がある。

 B経済活性化等への寄与

 土地利用の長期的な目標を阻害しない場合には、変動する土地利用の過程で暫定利用を行い、民間投資の機会を増大させることは、経済活性化の観点から有効である。

 また、暫定利用に際して遊休化した工場や倉庫などの既設建築物を再利用することは、建築コストの低減を通じて事業性を向上させるとともに、低廉な床の供給による新産業の苗床としての効果も期待できる。

 さらには、あらかじめ利用期間を限定して計画することで、変動する市場のニーズに迅速かつ柔軟にに対応することが可能になる。

(4)暫定利用を円滑に行うための課題

 @暫定利用に伴う土地所有者等の負担の軽減

 工場跡地等の暫定利用のなかでも、一般に収益性の高い用途は立地条件や利用できる規模が限られているため、土地所有者にとって多くの場合、土地の保有コストや暫定利用に伴う整備費及び維持管理費に見合う収益が得られないという問題がある。また、一般に開放される緑地等の場合には、通常の維持管理費に加えて事故に対する管理責任が生じる場合がある。

 一方、工場跡地等を借りて事業を行う者にとっては、10年未満の暫定利用で一時使用賃貸借を繰り返す場合には当初想定した事業期間の保証がないこと、仮設建築物の許可で建築した場合は期間延長の保証がないこと、不特定多数の人が集まる店舗、娯楽施設等の場合は、定期借地権に基づく期間限定利用であっても本格的な建築物と同等の安全性が求められるが、借地借家法と税法がリンクしていないため、利用期間終了時までに償却を終えることができないことなどの問題がある。

 工場跡地等の暫定利用を円滑に行うためには、産業政策の観点から、あるいは都市再構築を進める上で意味がある場合については都市政策の観点からも、こうした暫定利用に伴う負担やリスクの軽減について検討することが必要である。

 特に、一般に公共性が高いと考えられる公園、緑地等としての暫定利用であって、将来的にも引き続きオープンスペースとして確保することが必要と認められる場合には、当面は土地所有者による整備を行うとしても、都市計画決定等を通じて公共性を担保するなど恒久的に利用することを位置づけた上で、政策的支援を検討すべきである。この場合、大規模な工場跡地等を所有している者が、その一部を公園、緑地等とすることによって、全体の土地の価値を高めることができるような場合には、負担の軽減に際してそうした点を考慮することも考えられる。

 なお、時価会計の導入によって、暫定利用をすると収益還元法による当該土地の鑑定評価額が下がり、担保価値が低下するという問題が指摘される場合があるが、これは暫定利用の有無に限らず本格的な利用の可能性が低い土地には、時価会計の導入に伴って共通する問題であると考えられる。

 A暫定利用の終了の担保

 暫定利用を目的として土地を賃貸で提供する場合、10年未満の契約では事業用定期借地権が活用できないため、通常の賃貸借契約では正当事由がない限り期間終了時の契約解除ができないおそれがある。同様に既存建築物等の賃貸についても、定期借家権の活用によらない通常の賃貸借契約の場合は、期間終了時の契約解除が円滑にできないおそれがある。

 こうした課題に対応し、暫定利用期間終了時に土地利用転換等が円滑に行えるような方策について検討する必要がある。

 なお、一般公開される公園、緑地等の場合は、利用期間終了時に市民から継続の要求が起こったり、希少生物等が棲息してその保護が求められ転換が難しくなるおそれがあるため、将来恒久的な利用とすることを見据えつつ暫定利用を行うことが必要である。

 B土地利用規制等の柔軟な対応

 工業専用地域や分区指定のある臨港地区の中の工場跡地等については、暫定利用であるなしにかかわらずその用途が非常に限定されており、このことが@で述べた収益性が低いことの一因となっている場合がある。

 しかし一方で、土地所有者の個別事情に基づく土地利用転換の要請に対する無原則な規制緩和は、例えば周辺の土地利用現況と調和しない施設等の立地を促し、既存工場の操業環境の悪化等の問題を生じさせるおそれがある。

 このため、都市計画のマスタープランにおいて長期的には非工業系土地利用への転換を容認するとされる地域では、現在の土地利用規制や将来の具体的な土地利用構想の有無には必ずしもとらわれず、実態上の問題がない場合には多様な暫定利用を柔軟に認めることが効果的である。

 すなわち、暫定利用においては利用期間が限定されているため、将来の土地利用構想との整合性を厳密に検討する必要がないことを考慮し、暫定利用に伴う都市構造や周辺の市街地環境への影響等を判断した上で支障がない場合には、現行の用途地域指定等を変更することなく、建築許可等により個別に暫定利用を認めることが適切である。

 なお、こうした個別の許可等が地方公共団体において円滑に運用されるためには、どのような地域において、どのような暫定利用であれば、どのような点に配慮した上で許可等を行うことが適切かといった内容のより具体的な指針が示されることが望ましい。

 

W.大都市地域における工場跡地等の活用に関し重点的に取り組むべき政策

1.産業構造転換に対応した都市政策のあり方に関する指針の明示等

 都市政策(都市計画)において、産業構造の転換に伴う工場跡地問題等の諸課題に的確に対応し、魅力的な都市空間の創造を推進するためには、実際の政策の担い手である地方公共団体において、それぞれの地域固有の事情を考慮しながら、産業構造転換の状況に対する正しい理解のもとに、適切な判断と柔軟かつ迅速な対応が行われることが重要である。

 このため、本懇談会で提案する産業構造転換に対応した都市政策の基本的な考え方を、地方公共団体に対する指針として明示すべきである。

 さらには、広域的に都市の再構築が必要な大都市地域においては、国、地方公共団体等による協議会など、産業構造転換に対応した都市政策を推進するための強力な連絡調整体制の整備を図るべきある。

2.工場跡地等の暫定利用を円滑に行うための方策の充実

 工場跡地等の本格的な土地利用転換に関する制度の整備がかなり進んでいる中で、産業構造の転換と都市の再構築との調和を図るためには、計画的工業地等における工場跡地等の発生と本格的な需要との間の「ずれ」を調整する仕組みとして、暫定的な土地利用を円滑に行うための方策を充実することが必要である。

 また、工場跡地等の暫定利用は、都市の防災性やアメニティの向上に寄与する緑地の確保、新産業の苗床となる低廉な事業スペースの供給など、総合的な都市政策を積極的に展開する上での有効な手段ともなるものである。

 このため、まず過剰生産設備の円滑な処理という観点からは産業政策において、工場跡地等を暫定的に他用途に転用する場合の、土地所有者等の負担を軽減するための措置について検討するとともに、都市再構築の推進という観点から都市政策においても、必要に応じて暫定的利用に対する土地利用規制の緩和等を柔軟に行うほか、都市環境の改善等に寄与する利用を行う場合の土地所有者等への支援措置について検討すべきである。

 


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