リレートーク

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鈴木 健大 都留文科大学教養学部地域社会学科教授(元香川大学地域連携戦略室 特命准教授)

鈴木 健大

まちへ行こう

高松には連続したアーケード商店街としては日本最長と呼び声が高い、全長約2.7kmの高松中央商店街がありますのを皆様ご存知でしょうか。
うどん、骨付き鳥、あんもち雑煮、オリーブ牛、乾物、鮮魚などといった香川のグルメや土産を扱う店だけでなく、ハイブランド品から衣類・金物など日用品を扱う店、なんといっても星の数ほどあるように思えてしまう居酒屋の数々。観光に来られて通り過ぎてしまうにはあまりにもったいない、ワンダーランドがそこには広がっているのです。

かつて高松藩の武器庫があったことが名前の由来とされる、高松兵庫町商店街 かつて高松藩の武器庫があったことが
名前の由来とされる、高松兵庫町商店街

高松中央商店街は、8つの商店街から成る商店街の総称です。
私は2014年度から2017年度まで香川大学に勤め、8つの商店街の中の一つ、高松兵庫町商店街の活性化に学生とともに取り組んでいました。
学生たちに尋ねると「商店街に来たのは初めて」と言って手を挙げる者が、例年約半数ほどになりました。商店街が近所になかったり、幼い頃から保護者の車に乗ってショッピングセンターに行っていたりするのだそうです。

商店街調査のようす(2015年当時) 商店街調査のようす(2015年当時)

調査の結果見えてきたのは、商店街を通っているのは朝夕通勤・通学で通る会社員や高校生が多く、また、買い物に来ているのは若い世代になるほど少なく、特に子どもの姿は極端に少ないといったまちの姿です。
調査結果を踏まえて、商店街案内マップの作成、商店主による教室、放課後学習支援などに取り組んでまいりましたが、なにより学生たちに商店街の文化や歴史、その魅力に気づいてほしかったのです。

ガラスのドームは「うどん鉢」を模しているとも!? ガラスのドームは
「うどん鉢」を模しているとも!?

「まちへ行こう」。
かつて、商店街へ行くのにそう言われていたそうです。
週末などに家族や友人、恋人などと訪ねるハレの日・時間だったのでしょう。
その言葉尻に高揚感やまちへの特別な想いが汲んで取れます。

「うどんだけじゃない」グルメ巡りもお楽しみの一つ 「うどんだけじゃない」
グルメ巡りもお楽しみの一つ

先日、久しぶりに商店街を訪ねました。
「コロナの3年はあまりに長かった」とある商店主は話します。
あちらこちらでタワーマンションが建設中で景色の変化に一抹の寂しさを覚えましたが、一歩路地裏を入りますと、若い世代がゲストハウスやセレクトショップ、バイク店などを始めています。
高松に住んでいた時、商店街に“本なら何でもそろう”とうたう書店でお気に入りの本を探し、喫茶店で読むのはささやかな贅沢でした。
現在私は小さな地方都市に勤務しており、そのような時間はかないません。
行き交う人々の声や地元の人の息遣い、きらめく灯りの数々、混じり合う香り、それらが雑多に混ざり合う商店街が近くにあることは、なんと贅沢なことでしょうか。

「まちへ行こう」の文化を大事にされていただきたいと思います。
“高松・香川のことなら何でもそろう”商店街にぜひ一度お出かけください。

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