リレートーク

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大久保 篤志(さぬき麺業株式会社)

大久保 篤志

私にとっての「高松」、食文化の継承と発展

「お元気で!これからも頑張ってくださいね!」と、卒業した私を駅まで見送ってくれたクラブの後輩たちの顔を思い出しながら岡山駅で新幹線を降り、マリンライナーに乗り替える。ガタンゴトンと懐かしい列車にしばらく揺られトンネルを抜けると・・・「海だ!」・・・陽光の反射で眩しい海の彼方に大小の島々が見える。海上から60mもの高さを走る列車は「走る」と言うより「飛んでいる」と言う方が正しいのかも知れない。

瀬戸大橋も中盤を過ぎると左手の彼方に大槌・小槌が見える・・・「キレイやなぁ、やっぱり四国はええなぁ・・・」 そんなこと思いながら美しい景色と晴れた空が、これから始まる自身の新しい世界と重なり背筋がピンと伸び武者震いがした。 やがて空飛ぶ列車が空から着地し大きく左にカーブすると 次は終点の高松駅を目指す。田園から街並みに風景が変わるといよいよシンボルタワーが見えてきた、終点の高松駅だ。列車にとっては終点であるが、私にとってはスタート地点なのだ。
高校時代、剣道に明け暮れ その後、日本一を目指し大学も剣道強豪大学を選び 引き続き剣道に没頭、その甲斐があってか日本一は逃したものの全国ベスト8に入賞、段位も指導者レベルの4段まで昇段することが出来た。卒業後、更に高みを目指し社会人としても剣道を続ける事が出来る地方公務員への就職に挑んだものの、残念ながら「一本!」取ることが出来なかった。そこで、気持ちを切り替えて方向転換、家業であるうどん屋(曾祖父の時代から九十余年続く老舗店舗)に就職する事となり 竹刀を麺棒に持ち替えて次は日本一の手打うどん職人になるべく修行の身となったのである。

以上が20年前の思い出ですが、今でもサンポート高松のシンボルタワーを見るとあの時の事を思い出します。剣道を諦めることは非常に残念ではありましたが、挫けずに前向きな考えを持ち努力し続けたことで 今となっては「うどん」を通して香川県の食文化の継承と発展の為に仕事が出来ている事に充実感を感じております。その様に思えるようになった最大のキッカケは就職して数年後、ようやく半人前程度に手打うどんが作れるようになった時、「年明けうどん大会」で1万人近い観衆を前に(手打ちうどん作り→麺切り→試食)までの工程を披露できたことです。
ヨチヨチ歩きの私の麺打ち所作に対して、お客様は異口同音に「素晴らしい」と褒めてくださり、試食用に提供した麺を「美味しい」と笑顔で喜んで召し上がって下さりました。この日が私にとって最高に嬉しかった日であり、「もっと上手になって更にお客様喜んで貰えるようになろう」と決意した日になりました。
話は脱線しますが、この機会に「年明けうどん」についても説明をさせて頂きますと 年明けうどんとは、うどんの活性化、消費拡大を目的に 我々うどん業界(さぬきうどん振興協議会)が2009年のお正月から始めた新習慣で 年始~15日の間に白いうどんに紅色の具材を乗せて食すると縁起が良いとするもので最近では着実に世間の認知度があがってきました。この調子で「新しい食文化」として定着して欲しいと思っております。未体験の皆様は是非、来春お召し上がりください。

世界に目を向けるとウクライナや台湾問題、インフレ抑制からの景気後退懸念、金融不安など不安定要素も多くありますが 今春ようやく3年間も続いたコロナ禍からの出口が見えてきました。高松空港の航空国際便も復活し始め、栗林公園や商店街にもインバウンド客の姿が増えてきました。また、国内でも値上げはあるものの賃上げも追いつきだし、デフレ脱却→好循環への入り口が見え始めました。
皆さん、さぬきうどんの様な強いコシで この大きな波に上手く乗って頑張っていきましょう!

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