リレートーク

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小松 玲子(サヌカイト・打楽器奏者)

小松 玲子 カメラマン:森澤正光

地球の声、故郷の音、サヌカイトと共に

18歳で故郷の高松を離れ、東京での生活の方が長くなりました。私という人間を形成した基礎は高松で過ごした日々です。海に囲まれた穏やかな風景と新鮮な海の幸、明るい人々に囲まれて育った笑顔いっぱいの日々、伸び伸びと生活した記憶が肌感覚として残っています。当時の高松は、街中のあちこちにいらっしゃった「いただきさん」。

祖母の家の前で新鮮なお魚を捌く様子を幼い頃から側で見て食べ、活気あるセルフうどん屋さんでは勢いよくうどんをすすりました。週末には長いアーケードを両親や祖母と手を繋ぎ三越へお買い物に、高松祭りではブラスバンド出演でドラムを叩いたり、屋島から瓦投げをし、金毘羅さんには2歳の時に這って上がったこと、四国村の水車、屋島水族館、栗林動物園、高松市民会館や県民ホールへ家族で数々のコンサートに行ったこと、、鮮やかな色彩と共に豊かな時間を思い出します。

四国村のカンカン石と 四国村のカンカン石と

高松第一高校音楽科へ進学してからは、東京と地方の情報の格差に唖然としました。まだ当時はインターネットも無くレッスンで東京へ上京するたびに見たこともないほどの数多くのコンサートの種類、楽譜の数々、選びきれないほどのスティックの種類に驚くばかり。現在はネットのお陰で情報は溢れるほどになりクリック一つで世界と繋がるほど世の中は狭くなりましたが、逆に実際に「見る」「聴く」「味わう」という体験の世界が益々貴重になってきました。

雲と海の境目が 雲と海の境目が

昨年立ち上げた「小松玲子・サヌカイト後援会」は返済不要奨学金給付制度(今年からスタートしました)と共に若手アーティスト支援、サヌカイト関連活動支援として動き出しました。地元出身のアーティスト卵たちに届きますよう、そして彼らがまた文化面で地元に彩りを与えてくれるよう願っております。

金山けいのさと 金山けいのさと

いまだ続く戦争、コロナ禍による人間同士の分断で世界中の人々が疲弊しています。1300万年前に生まれ、約40年前に楽器としてできた「サヌカイト」は、世界中を探してもここ香川県にしか無い楽器です。国の無い時代、人間のいない時代から存在する石の音色と日々対話していると、雑音を忘れてシンプルな思考になります。世界中の人がデジタルを使ってサヌカイト音を聴いてくださり、生音を求めてコンサートへご来場くださり「心落ち着く」とリラックスして聴いてくださる姿は、生きる為に日々鎧を着ている大人たちがスッと脱いだ、人間本来のお姿なのではないでしょうか。
2016年に続き、7月のG7香川・高松都市大臣会合では、香川県高松市の豊かな風景と食、そして音を楽しんでいただけたら幸いです。世界中の普遍的な素材が、ここ高松にあると感じます。

テクノロジーは人間を遥かに超えて更なる進化を求めて進むでしょう。しかし、この高松の穏やかで美しい自然は、いつまでも平和な情景として残して欲しいと願います。

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