第2部 海上交通をめぐる現状・課題と政策的対応
3.その他

(1)外航クルーズ等の状況
 1997年に1泊以上の外航クルーズに参加した日本人利用者数は、前年比11.5%増の約8万2千人となっている(図表2-1-40)。外航クルーズの日本人利用者は、日本発着の外航クルーズ客船の利用者と、日本より海外まで飛行機で移動して現地でクルーズ客船に乗るフライ&クルーズという形態の利用者が中心となっている。前者は主に我が国のクルーズ事業者が運航しており、後者は主に外国のクルーズ事業者が運航している。


図表2-1-40 日本人外航クルーズ客船利用者数の推移
 外航クルーズの内訳についてみると、不況のため、企業や団体が船を貸り切って船内で研修等を行うチャータークルーズの利用者数は減少したものの、個人客が主体である観光目的のレジャークルーズがフライ&クルーズ利用者の増加により着実な伸びを見せた(図表2-1-41)。


図表2-1-41 外航クルーズの目的別利用者数
 次に外航クルーズの利用期間についてみると、全外航クルーズ利用者中10泊以上の利用者が占める割合が、97年には前年より6ポイント上昇して21%となるとともに、船内平均泊数が96年(6泊)より増加して6.7泊となる等、全体としてクルーズ期間の長期化が進んでいる(図表2-1-42)。
図表2-1-42 外航クルーズ泊数別客数
 我が国クルーズ事業者による一般客向けの世界一周クルーズは96年より、年1回約3ヶ月間の日程で実施されているが、キャンセル待ちができるほどの人気である。98年には新たに1隻が世界一周クルーズを実施することとなっている。
 98年4月現在、外航クルーズ客船を運航している我が国のクルーズ事業者は3社で計6隻を運航している。さらに我が国企業が投資し実質的に管理している海外子会社を加えると、4社計8隻となる(図表2-1-43)。このような中、97年6月に比較的小型の日本籍船「おせあにっくぐれいす」(5,218総トン)が海外に売船される一方で、98年4月に新たな日本籍の「ぱしふぃっくびいなす」(26,518総トン)が就航した。
図表2-1-43 我が国における外航クルーズ客船一覧
1998年4月現在
船 名 新さくら丸 ふじ丸 クリスタルハーモニー おりえんとびいなす
船 籍 日本籍 日本籍 バハマ籍 日本籍
運航会社名 商船三井客船 商船三井客船 クリスタル・クルーズ(注1) 日本クルーズ客船(注2)
総トン数 17,389 23,340 48,621 21,884
乗客(人) 558 団体 600
個人 350
960 606
速力(ノット) 21 20 23 21
乗組員(人) 87 145 480 120
就航年月 1972年7月 1989年4月 1990年7月 1990年7月

船 名 にっぽん丸 飛鳥 クリスタルシンフォニー ぱしふぃっくびいなす
船 籍 日本籍 日本籍 バハマ籍 日本籍
運航会社名 商船三井客船 郵船クルーズ(注3) クリスタル・クルーズ 日本クルーズ客船
総トン数 21,903 28,717 50,202 26,518
乗客(人) 団体 600
個人 350
610 960 720
速力(ノット) 20 21 22 21
乗組員(人) 160 243 545 180
就航年月 1990年9月 1991年11月 1995年5月 1998年4月
○運輸省海上交通局調べ
(注) 1. 日本郵船全額出資の海外子会社(米国)。
  2. SHKライン(新日本海フェリー、阪九フェリー、関釜フェリー等で構成される長距離フェリーグループ)全額出資による新会社。
  3. 日本郵船全額出資の子会社(日本)。

 1997年に我が国クルーズ事業者3社の日本籍クルーズ客船6隻を利用した日本人利用者数は外航クルーズが33,300人、内航クルーズが95,400人であり、合計128,700人となっている。また、これに外国籍のクルーズ客船を利用したフライ&クルーズの日本人利用者数と日本国内の長距離フェリーによる内航クルーズの利用者数を合計した日本のクルーズ人口は前年比4.2%減の約186,000人となっている(図表2-1-44)。
図表2-1-44 全クルーズ人口の推移
(単位:人)




<コラム> 24時間安全を見守る 〜航海当直について〜
 船舶は、航海中昼夜を通して航行し続けているため、船が安全に運航されているかを、昼夜を問わずいつも誰かが見守っていなければならない。
 こうしたことから、通常の航海中の勤務については、原則として船長、機関長を除いた乗組員が3組に分けられ、午前、午後4時間ずつ交代で航海当直に立つことになっている。
 航海当直中、船舶の運航等を担当する甲板部の船員は、船橋で船舶を安全かつ最も効率よく目的の港へ運航するための任務を遂行する。
 一方、船舶を推進させる機関の運転等を担当する機関部の船員は、その円滑な作動を維持するため、機関の監視や保守整備を行う。
 わが国は、海外からの物資の輸送のほとんどを海上輸送に依存しているが、これら貿易物資の安全かつ安定した輸送は、こうした船員によって支えられているのである。



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