第2部 海上交通をめぐる現状・課題と政策的対応 第2章 内航貨物輸送

第2章のポイント
<現状分析>
・平成9年度の内航海運の貨物輸送量は低調であり、荷主側の交錯輸送の排除や製品の相互融通などによる輸送の効率化の進展予想等により、船腹の過剰感は増している。
・内航海運業者は使用船腹量が増大しているが、依然として小規模事業者が多い。

<政策>
・内航海運の活性化を図るため、スクラップ・アンド・ビルド方式による船腹調整事業を解消し、これまで財産的価値を有することとなっていた自己所有船の引当資格につき、自己所有船を解撤する転廃業者に、その補償として、日本内航海運組合総連合会が交付金を交付すること等を内容とした内航海運暫定措置事業を平成10年5月に導入した。
・内航船の建造需要の拡大、内航海運へのモーダルシフトの推進を図るため、平成10年度第1次補正予算において、運輸施設整備事業団が内航海運暫定措置事業に係る必要な資金について日本内航海運組合総連合会に融資すること、運輸施設整備事業団の船舶共有業務を弾力化すること等の支援措置を講じた。
・内航海運の運賃協定は、内航海運の活性化を図るため、現在残っている内航タンカー運賃協定及び内航ケミカルタンカー運賃協定を、平成10年度末までに廃止するとの閣議決定がなされた。
・近年の国民の需要の高度化、多様化等に的確に対応した輸送体系の確立を図る等の観点から、平成9年10月1日船舶整備公団と鉄道整備基金が統合され、運輸施設整備事業団が設立された。

第1節 内航貨物輸送の現状
1.市場環境 〜景気低迷等に伴う内航船腹の過剰等〜
(1)輸送活動の概況

 国内の輸送機関別輸送量に占める内航海運のシェアは、平成8年度で、トンベースで約8%であり、トンキロベースでは約42%(図表2-2-1)に及んでいる。特に石油、鉄鋼、セメント等の産業基幹物資に係る輸送の分野においては、その大部分を内航海運が支えている。また、内航海運の中でもこれらの産業基幹物資が主たる貨物となっている(図表2-2-2)。
 平成8年度の内航貨物輸送量は、景気が一時的に回復の動きをみせた中で、トンベースでは前年度比0.3%の減少となったものの、トンキロベースについては前年度比1.4%の増加となった。9年度については、景気低迷の影響等により、第1〜第3四半期の合計の輸送量は、トンベース、トンキロベースとも低調に推移している(図表2-2-3)。


図表2-2-1 輸送機関別輸送量の推移
年度 輸送トン数(百万トン) 輸送トンキロ(億トンキロ) 平均輸送距離(km)
内航 自動車 鉄道 内航 自動車 鉄道 内航 自動車 鉄道
昭和45 377
(7.2)
4,626
(88.0)
250
(4.8)
5,253
(100)
1,512
(43.2)
1,359
(38.8)
630
(18.0)
3,501
(100)
401 29 252
50 452
(9.0)
4,393
(87.4)
181
(3.6)
5,026
(100)
1,836
(50.9)
1,297
(36.0)
471
(13.1)
3,604
(100)
406 30 261
55 500
(8.4)
5,318
(88.9)
163
(2.7)
5,981
(100)
2,222
(50.7)
1,789
(40.8)
374
(8.5)
4,385
(100)
444 34 230
60 452
(8.1)
5,048
(90.2)
96
(1.7)
5,597
(100)
2,058
(47.4)
2,059
(47.5)
219
(5.1)
4,336
(100)
455 41 227
平成2 575
(8.5)
6,114
(90.2)
87
(1.3)
6,775
(100)
2,445
(44.8)
2,742
(50.2)
272
(5.0)
5,459
(100)
425 45 314
4 540
(8.1)
6,102
(90.7)
82
(1.2)
6,725
(100)
2,480
(44.6)
2,816
(50.6)
267
(4.8)
5,563
(100)
459 46 324
5 529
(8.2)
5,822
(90.6)
79
(1.2)
6,430
(100)
2,335
(43.7)
2,759
(51.6)
254
(4.7)
5,348
(100)
442 47 321
6 556
(8.6)
5,810
(90.1)
79
(1.2)
6,445
(100)
2,385
(43.9)
2,806
(51.6)
245
(4.5)
5,436
(100)
429 48 310
7 549
(8.3)
6,017
(90.6)
77
(1.1)
6,643
(100)
2,383
(42.7)
2,946
(52.8)
251
(4.5)
5,580
(100)
434 49 326
8 547
(8.0)
6,177
(90.9)
74
(1.1)
6,798
(100)
2,418
(42.2)
3,055
(53.4)
250
(4.4)
5,723
(100)
442 50 340
○運輸省「内航船舶輸送統計年報」及び「陸運統計年報」(昭和62年度より「自動車輸送統計年報」及び「鉄道輸送統計年報」)による。
(注) 1. ( )内は輸送機関別のシェア(%)である。
  2. 輸送量の計は、航空を含まない。
  3. 自動車は、62年度より軽自動車を含む数字である。
  4. 単位未満の端数については四捨五入した。そのため、合計と内計が一致しない場合がある。


図表2-2-2 内航主要品目別輸送量の推移


図表2-2-3 内航貨物輸送量の推移
(2)内航船と船腹需給の現状

 内航海運業者の所有する内航船(営業船)の船腹量については、平成10年3月31日現在、総計8,216隻(対前年比2.7%減)、約403万総トン(対前年比増減なし)となっている(図表2-2-4)。
 船齢別にみると、老朽船の割合がこの10年間で減少傾向にあるものの未だ44%(昨年は44%、一昨年は46%)と高い水準となっている(図表2-2-5)。
 船型別にみると、総トン数100〜200トンと総トン数400〜500トンが多く、いわゆる199型、 499型 が標準的な内航船の船型となっていることがうかがえる。また、平均総トン数は、10年前に比べ28.6%増、昨年に比べ1.0%増の490トンとなっており、船舶の大型化が進んでいることがうかがえる(図表2-2-6)。


図表2-2-4 内航船の船種別船腹量
船種 昭和63年3月31日 平成10年3月31日
隻数 総トン数 隻数 総トン数
貨物船 5,870 1,606,640
(274)
4,851 1,663,839
(343)
土・砂利・
石材専用船
1,092 393,900
(361)
1,013 473,719
(468)
セメント専用船 188 376,050
(2,000)
204 450,544
(2,209)
自動車専用船 63 133,836
(2,124)
62 233,657
(3,769)
油送船 1,826 875,084
(479)
1,600 950,727
(594)
特殊タンク船 602 291,342
(484)
486 254,060
(523)
合計 9,641 3,676,852
(381)
8,216 4,026,546
(490)
○運輸省海上交通局資料による。
(注) 1. 内外航供用船及び港運供用船を含み、塩の二次輸送、原油の二次輸送及び沖縄復帰に係る石油製品用許認可船は含まない。
  2. ( )は、平均総トン数である。


図表2-2-5 内航船の船齢別船腹量


図表2-2-6 内航船の船型別船腹量
船型
(総トン)
昭和63年3月31日 平成10年3月31日
隻(構成比%) 総トン(構成比%) 隻(構成比%) 総トン(構成比%)
100トン未満
100トン以上 200トン未満
200トン以上 300トン未満
300トン以上 400トン未満
400トン以上 500トン未満
500トン以上 700トン未満
700トン以上 1,000トン未満
1,000トン以上 2,000トン未満
2,000トン以上 3,000トン未満
3,000トン以上 4,500トン未満
4,500トン以上 6,500トン未満
6,500トン以上
2,589(26.9)
3,351(34.8)
434( 4.5)
300( 3.1)
1,588(16.5)
606( 6.3)
264( 2.7)
246( 2.6)
122( 1.2)
91( 0.9)
36( 0.4)
14( 0.1)
103,453( 2.8)
589,761(16.0)
114,062( 3.1)
105,444( 2.9)
767,121(20.9)
407,059(11.1)
253,709( 6.9)
361,015( 9.8)
320,522( 8.7)
325,197( 8.8)
196,725( 5.4)
132,784( 3.6)
2,217(27.0)
2,127(25.9)
369( 4.5)
350( 4.3)
1,644(20.0)
584( 7.1)
296( 3.6)
255( 3.1)
145( 1.8)
128( 1.6)
70( 0.9)
31( 0.4)
77,148( 1.9)
374,976( 9.3)
96,800( 2.4)
123,318( 3.1)
796,112(19.8)
391,570( 9.7)
257,579( 6.4)
377,150( 9.4)
396,490( 9.8)
469,739(11.7)
369,388( 9.2)
296,276( 7.3)
合計 9,641(100) 3,676,852(100) 8,216(100) 4,026,546(100)
平均総トン数 381 490
○運輸省海上交通局資料による。
(注) 内外航供用船及び港運供用船を含み、塩の二次輸送船、原油の二次輸送船及び沖縄復帰に係る石油製品用許認可船は含まない。
 平成9年度の 適正船腹量 (図表2-2-7)によれば、特に貨物船、自動車専用船、土・砂利・石材専用船、油送船において、前年度に比べて船腹の過剰感はさらに増している。
 代表的な船種についてみると、貨物船については、今後5年間において、輸送需要の漸増に伴い適正船腹量も漸増が見込まれるものの、今後も船腹過剰は続くものと見込まれている。
 油送船については、石油業界における物流提携の動きなど荷主の物流削減の動きを受けて、輸送需要は減少傾向となることが予想されるため、平成13年度まで過剰船腹量が増加を続けることが見込まれる。


図表2-2-7 平成9〜13年度の内航適正船腹量
(単位:1,000総トン)
船種 現有船腹量
(平成9年6月30日現在)
適正船腹量
9年度 10年度 11年度 12年度 13年度
貨物船 1,684 1,611
( 73)
1,608
( 76)
1,617
( 67)
1,633
( 51)
1,650
( 34)
セメント専用船 430 430
( 0)
426
( 4)
425
( 5)
428
( 2)
432
(△2)
自動車専用船 171 149
( 22)
154
( 17)
156
( 15)
158
( 13)
161
( 10)
土・砂利・
石材専用船
449 377
( 72)
377
( 72)
422
( 27)
432
( 17)
449
( 0)
油送船 966 863
(103)
833
(133)
821
(145)
819
(147)
815
(151)
特殊タンク船 254 254
( 0)
252
( 2)
249
( 5)
249
( 5)
249
( 5)
○平成10年運輸省告示第45号(平成10年2月6日)による。
(注) 1. ( )内は、平成9年6月30日現在の船腹量に対する過剰船腹量である。
  2. 内外航併用船を含み、塩の二次輸送船、原油の二次輸送船及び沖縄復帰に係る石油製品用許認可船は含まない。


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