第2章 産業基幹物質の国内輸送を担う内航貨物輸送
定期輸送においては、主に食料品、工業製品等の雑貨を、コンテナ、トレーラー等により、総トン数500トン〜8,000トン程度のコンテナ船、
RORO船
といった船舶を用いて輸送している。
また、不定期輸送においては、石油製品、鉄鋼、セメント、石灰石、石炭等の産業基幹物資や自動車、さらには砂利・石材や建設残土などを輸送しており、主として総トン数199トン〜699トンの鋼材専用船やLPG船、タンカー等の専用船、総トン数5,000トン〜10,000トン程度のセメント専用船や石灰石専用船等が用いられている。
内航海運は、トラック等他の輸送機関のもつ陸上における機動性、利便性に対しては優位性を発揮できない面があるが、一般に
499型
の船舶一隻で10トン積みのトラック160台分の輸送力に相当する約1,600トンの貨物を輸送することができる等大量輸送に特性を有しており、長距離大量輸送に適した輸送モードであるといえる。このような特性から、鉄鋼、石油、セメント等の産業基幹物資についてはその大部分が内航海運により輸送されている。一方、食料品、工業製品等の雑貨については、自動車輸送量との対比において14パーセントと低いものとなっている(図表1-2-1)。これを反映して、内航海運の大半は不定期輸送となっており、定期輸送が国内の主要港湾を結ぶ少数の限定された航路のみであるのに対し、不定期輸送は国内の港間を網の目のように結んだ無数の航路が存在している。
![]() |
![]() |
定期輸送には、旅客を輸送する形態に加え、旅客と自動車を同時に輸送する形態(いわゆるフェリー輸送)がある。
一般の旅客を対象に定期輸送を行っている航路は全国で556航路となっており、年間約1億2,500万人が利用している。また、このうち236航路がフェリー航路となっており、約2,400万台の乗用車やトラック等が輸送されている。
最近、これら定期輸送を担う旅客船の大型化・高速化が進んでおり、1万トン以上の船舶で22ノット(時速約40km)以上の速度を有する船舶も少なくない。速度に限定してみると、35ノット(時速約65km)を超える船舶も全国で30隻以上運航されている。
また、不定期輸送については、日常的な移動手段としてではなく、主にレジャーとしての輸送手段として利用されている。従来からあるいわゆる観光船に加え、近年、国民生活の向上とともに、心のやすらぎを求めて船上における時間を楽しむために旅客船を利用する人も増えており、湾内や湖等を周遊するクルーズ船も多数就航してきている。これらの航路は全国で867航路で、年間約2,200万人が利用している。