平成10年版 観光白書の概要
「平成9年度観光の状況に関する年次報告」は,平成9年度の観光の状況及び政府が観光に関して講じた施策の報告であり,「平成10年度において講じようとする観光政策」は,平成9年度における観光の状況を考慮して,政府が平成10年度において講じようとする観光政策を明らかにしたものである。これら2つを併せて「観光白書」と通称されている。政府は,観光基本法第5条の規定に基づき,いわゆる観光白書を国会に提出することとなっている。
- 国民生活の動向
1) 平成9年,我が国経済は1〜3月は消費税率引上げに伴う駆け込み需要の影響等から高い成長を記録したこともあり,民間需要中心の回復過程への移行が進みつつあった。4月以降駆け込み需要の反動減が見られたものの7〜9月期にはその影響から徐々に立ち直りつつあり、景気は緩やかながら回復基調にあった。しかし,秋以降の金融機関の相次ぐ破綻等に基づく将来不安等によって家計や企業の景況感は厳しさを増し,現在景気は停滞し,国内総支出は年間で前年比 0.9%増,民間最終消費支出は 1.1%増となった。一方,消費者物価は安定的に推移し,9年の消費者物価は対前年比上昇率は 1.6%となった。
家計消費については,全国全世帯の消費支出は対前年比 0.3%減となった。旅行関連支出を見ると,9年は対前年比 4.0%増の15万 4,102円となっている。
2) 余暇活動に関係する自由時間に関しては,年次有給休暇の取得,完全週休二日制等労働時間の短縮,学校週5日制,ゆとりある休暇の拡充を推進している。総実労働時間は近年減少傾向で推移してきており,9年は 1,900時間と前年より19時間減少した。また,8年12月末現在で,完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合は59.3%(対前年比 1.5%増)と年々着実に増加している。
3) 国民の自由時間に対する意識を「国民生活に関する世論調査(9年5月)」で見ると,今後,生活に力を入れたい分野として「レジャー・余暇生活」を挙げる者(36.2 %)が最も多く,58年以来第一位を占め続けており,国民の余暇志向の根強さがうかがえる(住生活25.1%, 食生活16.3%)(表1−1)。
- 国内観光の状況
1) 9年の国内観光は,宿泊観光レクリエーションの回数はほぼ通年を通して対前年増となり,回数,宿泊数及び消費額ともに前年を上回った。
- 宿泊観光・レクリエーション旅行を行った者は延べ2億 500万人,1人当たり1.63回(対前年比 7.9%増)となっており,消費総額は全体で8兆4,500億円,1人当たり6万 7,100円(同 2.1%増)となっている(表1−2, 3)。
- 9年の国内旅客輸送は,航空を除き各輸送機関とも低調に推移した。新幹線は,秋田新幹線及び北陸新幹線高崎・長野間の新規開業もあって増加した(表1−4)。
- 9年の主要旅行業者50社の取扱高は,対前年比 1.7%増の6兆 3,569億円 であった。このうち,国内旅行は,年計では対前年比 1.4%増,海外旅行は対前年比 2.1%増であった(表1−5)。
2)阪神・淡路大震災による被害の復旧状況及び観光の状況
- 観光施設の復旧状況
観光施設では,博物館・美術館は全て現状に回復している。そのほか,劇場や遊園地などの民間の観光関係施設も復旧が進められ,神戸市においても主要観光施設,主要宿泊施設の約9割が営業を再開している。 交通施設では,鉄道が7年8月にすべて復旧し,道路についても8年9月に阪神高速3号線の供用をもって全て復旧した。また,神戸港は,9年3月すべての港湾機能が復旧した。
- 観光の振興
阪神・淡路地域は,従来より歴史的建造物や洋風文化等多様な観光資源を背景に我が国でも有数の国際観光都市神戸を中心とした一大観光地域を形成しており,震災により観光面でも大きな影響が出たが,神戸市の調査によると入り込み客数は徐々に回復に向かっており,9年は震災前の6年の93%となった。 政府においても関係会議をできる限り神戸で開催するなど努めるとともに,地元が行う観光キャンペーンやイベントに協力している。
- 国際観光の状況
9年の日本人海外旅行者数は,対前年11万人(0.6%)増の 1,680万人と伸び率は低迷したものの,史上最高を記録した。一方,訪日外国人旅行者数は,対前年38万人( 9.9%)増の 422万人となった(図1−1)。
1)国民の海外旅行
旅行者に占める比率は依然として男性(54.4%, 913万人) が女性(45.6%, 767万人) を上回っているが,伸び率では女性が男性を上回っている。男性の場合は40歳代が 201万人(男性全体の22.0%)で最も多いのに対し,女性の場合は20歳代が 282万人(女性全体の36.8%)で最も多い(図1−2,3)。
目的別では,観光を目的とした海外旅行が 1,377万人で全体の81.9%を占めている。
旅行先は,アメリカ(538万人) ,韓国(160万人),中国(104万人) ,香港(91万人) ,台湾(82万人) となっている。 海外旅行者の平均旅行日数は 7.8日となっており,ここ数年,8日程度で推移している。
2)外国人旅行者の訪日
訪日外国人旅行者数を国籍・地域別に見ると,韓国が 101万人と最も多く,以下,台湾82万人,アメリカ62万人,中国26万人,イギリス(香港)24万人の順となっている。なお,対前年伸び率では,イギリス(香港)(65.5%増),ノルウェー(21.2%増),メキシコ(20.4%増)の増加が目立っている。
州別構成比は,アジア州59.7%,ヨーロッパ州18.2%,北アメリカ州17.3%の順となっており,近年,アジア州が主流となっている(図1−4)。 訪日外国人の平均滞在日数は,9年は 8.6日となっており,回復傾向にある。
3)国際旅客輸送状況
我が国と諸外国との間の国際旅客輸送は,大半が航空輸送により行われており,9年の日本人海外旅行者,入国外国人の98.7%が航空機を利用している。 航空機を利用して我が国から出国した日本人海外旅行者及び入国外国人の77. 4%が成田空港及び関西国際空港からの発着である。
4)国際旅行収支
9年の我が国の国際旅行収支(旅客運賃を含む。)は,受取が 7,405億円(対前年比17.7%増),支払は4兆 9,929億円(同 1.9%減)で,収支は赤字が前年に比べ 2,105億円減の4兆2,525 億円となった。
以上の我が国における国際旅行収支の赤字は,相手国においては,外需の一部として経済に寄与しており,また,国際貿易の不均衡を調整することにつながっている。
II 近年の観光レクリエーションの動向及びそれに対する対応 |
- 近年の日本人観光レクリエーションの動向
国民の観光レクリエーション活動は日帰りの観光レクリエーション,国内の宿泊観光旅行(以下、国内観光旅行という。),海外旅行等様々な形で展開されており,今や国民生活に欠くことのできないものとして定着し,その重要性を増大させてきている。
政府では,5年ごとに「全国旅行動態調査」を実施し,国民の宿泊観光旅行等の目的,回数,日数等の実態を把握しているが,これらの調査結果等をもとに,経済,社会構造の変化に伴う近年(約15年)の国民の観光レクリエーション活動の変化とその特徴を明らかにすることとする。
1) 海外旅行が大きく伸び,国内観光旅行市場は停滞傾向
海外旅行者数と国内観光旅行者数の推移を56年からの伸び率で見ると,海外旅行者数は順調に増加を続け,9年には 4.2倍となっている。一方,国内観光旅行は,3年までは海外旅行者数に比べ伸び率は低いものの順調に増加してきたが,その後は停滞傾向が続いている(図2−1)。
海外旅行が国内観光旅行に比べ高い伸びを示している背景には,国際化の進展に伴う国民の根強い海外旅行志向の中で,近年の円高傾向による海外旅行商品の低廉化や航空路線網の拡大等による旅行日数の短縮等海外旅行がしやすい環境が整ってきたことが挙げられる。
また,こうした中で,海外旅行と国内旅行が競合するいわゆる同一市場化の現象も指摘されている。従来,海外旅行は手続きに手間がかかり,旅行日数も長く,さらに言語,文化の違い等外国に行くこと自体が国内観光旅行と異なることから,必ずしも国内観光旅行と競合するものとは考えられていなかったが,国内観光旅行と日数,価格等の面で競合する状況が数多く見られるようになり,旅行者がどのような旅行をするか選択する際に,国内と海外の観光地を区別せず,候補地として同様に考えるようになってきた。このような競合は同一目的の場合のみならず旅行目的が異なる場合でも見られるようになっている。
一方,国内観光旅行が停滞している背景としては,海外旅行との同一市場化が進んでいる中で,国内の旅行システム及び観光地が多様化している国民の旅行ニーズに十分対応できず,均一化・陳腐化し,新鮮な魅力を失っていることが挙げられる。また,これに加え,国内観光旅行は,性別,年齢別等に見ても従来に比べ大きな差が見られなくなってきており,国民各層にかなり浸透していることも一つの要因と考えられる。また,国内観光旅行回数と実質GDPはかなりの相関関係が認められ,我が国経済の成長率が大きな伸びを期待できない状況になっていることも一つの要因と考えられる。
2) 女性の観光旅行が増える
近年,国内の観光旅行,海外旅行ともに女性の観光旅行が増加し,8年調査では国内観光旅行はほぼ男女差が見られなくなっている(図2−2)。海外旅行については,56年は7割近くが男性であったが8年ではその差が1割以下となっている。この数値は業務等も含むものであり,海外旅行の場合,女性は男性より観光目的のものが多いことから,観光目的の海外旅行については男女差はほとんど見られなくなっているものと推測される。
年齢別で見ると,国内観光旅行は20代の女性が61年調査で男性を初めて超え,その後大きく男性を上回っている。海外旅行も20代女性が一番数多く旅行しており,国内外を問わず最も観光旅行を行っている年代と言える。20代女性はレジャー・余暇生活志向が特に強く,経済的・時間的余裕の増加等からその実現を可能としているものと考えられる。
また,30代,50代女性の国内観光旅行も,8年調査では3年調査に比べ大きな伸びを示し初めて男性を上回っており,海外旅行でも 100万人を超え,女性の中でも20代に次いで海外旅行が多い年代となっている。30代女性は,61年調査で20代女性として初めて男性を超えた世代であり,観光旅行志向が強いものと考えられる。50代女性は,子育てから手が離れ,比較的自由時間も増え,経済的にも余裕が出てくる年代であることがその要因と考えられる。
3) 若年層,中高年齢層の観光旅行が増える
56年調査と8年調査で国内観光旅行の男女とも高い伸び率の年齢層を見ると,15歳までの層と50代となっている。また、60代も3年調査から高い伸び率を示している(60代の年齢区分を3年調査から設けた。)。
15歳までの層については,家族旅行が中心と考えられ,家族旅行の増加がその要因と考えられる。また,50代,60代が増加している要因としては,他の年代に比べ時間的・経済的余裕等も生まれるなど旅行しやすい環境にあることに加え,以前に比べ健康面等で活力があることも影響しているものと思われる。
4) 郡部に居住する人の観光旅行が増える
人口規模別に国内観光旅行回数の伸び率を56年調査と8年調査で見ると,大都市 1.3倍,15万人以上の都市 1.5倍,15万人未満の都市 1.4倍,郡部 1.7倍と郡部が大きく伸び,大都市との差は 0.283回と縮まっており,15万人以上の都市及び15万人未満の都市との差はほぼなくなっている。一方,海外旅行は8年調査においては大都市 0.188回,15万人以上の都市 0.136回,15万人未満の都市 0.093回,郡部 0.088回と人口規模での差が依然として存在している。
5) 団体旅行から家族旅行,小グループ旅行へ
国内観光旅行の同行者の種類を見ると,家族の同行者があるものが増えてきており,8年調査では過半数を超え,反面,職場,学校,地域等の団体旅行は減少している。同行者の人数で見ても,15人以上の団体旅行は減少しており,団体旅行から家族旅行,少人数のグループ旅行への変化が見受けられる。
家族旅行について見ると,30代の女性と15歳以下(特に6歳以下)の年齢層の旅行量が増加していることから小さな子供を連れた観光旅行を楽しむ国民が増えていることがうかがわれる。これは,こうした国民のニーズの高まりがその要因と考えられるが,近年,国内観光旅行の利用交通機関として自家用車の比率が高まってきており(特に9歳以下81.1%,30代72.4%),自家用車の普及,道路網の整備等の環境整備が進められたことも一つの要因と考えられる。
また,海外旅行についても数は少ないものの9歳以下が大きく伸びてきていることから小さな子供を連れた海外旅行も増えてきていることをうかがわせる。
6) 多様化する観光旅行の目的
国内観光の目的地での行動を見ると,8年調査では「温泉などでの休養」,「自然・風景鑑賞」,「特産品などの買物・飲食」,「ドライブ」の順となっている(図2−3)。また,旅行目的を世代別に見ると,家族旅行が多い世代では「遊園地・レジャーランド」など家族がまとまって楽しめる活動が多く,若者は「ドライブ」や多様なスポーツ等を好み,年齢が高くなるにつれ,鑑賞,休養等の割合が高くなるなど,年代や性別,また,同行者の種類等により目的地での活動も多種多様化してきている。
- 外国人旅行者の訪日の動向
1) 訪日外国人旅行者数は増加傾向ながらも依然低水準
外国人旅行者受入数について,我が国は依然国際的に見て著しく低水準にとどまっている。訪日外国人旅行者数は,9年に初めて 400万人を突破するなど増加傾向にあるが,日本人海外旅行者とのアンバランスは非常に大きなものとなっており,また,円相場の影響を受けやすくその足取りは不安定なものであった。
我が国の外国人受入数が低い水準になっている原因については,地理的な特性として欧米州から離れているという不利性を抱えていることが挙げられるが,地理的条件を同じくする他のアジア諸国と比べても香港,マレーシア,シンガポール等を下回っており,アジア地域への外国旅行市場においても国際競争力に乏しいことが明らかとなっている(図2−4)。
また,近年,アジアの近隣諸国における外国旅行者の急増の影響もあり訪日外客数は増加傾向にあるものの,近隣諸国の外国旅行者の訪問国として日本のシェアは縮小してきている(図2−5)。
2) 訪日外国人旅行者におけるアジア客の比重の増大
訪日外国人旅行者は,地域別ではアジア客の,目的別では観光目的の割合が大きいが,これらはいずれも円相場の動向に左右されやすく,訪日外客数が円相場に影響されやすい体質となっている。
アジア諸国は地域による差はあるものの,経済成長と外国旅行自由化を背景に1970年代以降急速に外国旅行者数を増加させた。それに伴いアジアから日本を訪れる旅行者も増加し,現在では約6割がアジア客となっている。
3) 訪日旅行の内容は旅行者の居住地域による傾向の違いが鮮明に
訪日旅行の滞在日数と1人1日当たりの消費額(円ベース)はともに減少傾向にあるが,中でもアジア客の滞在日数の低下が目立っており,特に滞在日数5日以内の旅行者の割合が非常に高くなってきている。
訪問地については,旅行者の居住地域による傾向の違いが鮮明になってきており,総じて欧米州からの旅行者は東京,大阪及びそれらの周辺の訪問率が高く,アジアの旅行者には東京ディズニーランド等のテーマパークや台湾を中心として九州の人気が高い。また,滞在中の活動内容についても欧米州からの旅行者は日本料理や生活文化などに関心を持つ者が多いのに対し,アジアからの旅行者には温泉やテーマパークなどの人気が高くなってきている。
特にアジアの近隣諸国からの旅行者にとって日本は近くて,短期間で旅行できる,比較的手軽な旅行先という位置付けが強まっており,訪問地や活動内容も個性化の傾向が見られるようになってきている。
- 観光の状況変化への対応
国内観光の振興と外国人旅行者の来訪促進を図ることが我が国の観光政策上の重要な課題となっているが,我が国をめぐる観光の状況は大きく変化してきており,これらの重要課題について今後の政策の方向性を考えるに当たっては,これらの状況の変化を十分踏まえる必要がある。
まず第一に考慮すべきことは,我が国観光地間の競争の激化である。我が国の国内観光旅行は国民の各層に浸透しつつあるとともに,今後右肩上がりの成長が望めない状況の中で,国民の観光地を選択する目はますます厳しくなってきており,我が国の観光地はそれぞれ生き残りをかけた競争を展開していく時代に突入したということである。
第二に,観光のボーダレス化に注目していく必要がある。国内旅行と海外旅行との同一市場化が進行する中で,国内の観光地は単に他の国内の観光地との競争関係にあるのみでなく,海外の観光地とも競争する時代となっている。一方、国内の観光地は外国人観光客との関係においても,近隣の海外の観光地と競争しているが,今後外国人観光客の増加が見込まれる中で,国内観光地の活性化の大きなチャンスが生まれている。
国内観光地の活性化や外国人旅行者の来訪促進を図っていくためには,観光地の個性化等を通じた競争力の強化を図っていくことが重要となっている。今後,外国人旅行者も含めた旅行者ニーズの多種多様化に対応して,地域独自の魅力をいかした観光地づくりにそれぞれの観光地に係る関係者がいち早く取り組むことが必要となっており,政府としてもこうした地域の活動を支援していくため,以下のような施策を推進している。
1) 国内旅行システムの変革に向けた取組
7年6月の観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」を受け,7年9月,国,観光関係事業者からなる国内観光促進協議会が設置され,高齢者・障害者の旅行促進,滞在型・拠点型旅行の促進,国内旅行低廉化などの環境変化に対応した具体的取組について検討を行っている。同協議会エコツーリズムWGでの検討結果を踏まえ,9年7月に「飛騨エコパスポート」が発売されるなど同協議会による具体的成果が上がりつつある。
2) 魅力ある観光地づくりに向けた取組
都道府県,市町村では,観光を核とした地域活性化へのニーズが高まってきており,これに応えるべく官民の総力を結集しかつ一体となって,日本人観光客のみならず外国人観光客にとっても魅力ある観光地づくりを行っていく「観光地づくり推進モデル事業」が9年度に着手された。
この事業は, 1モデル地域における観光地評価, 2 1を踏まえた「観光地づくりプログラム」の策定, 3 2に基づく事業の実施からなるもので,特にプログラム策定後1年間については,観光関係業界等のイベント・PR等の事業を集中的に実施することとしている。
9年度中に5ケ所の観光地において事業に着手しており,10年度にも,さらに5ケ所以内の観光地において事業に着手する予定である。
3) 外国人旅行者の来訪促進のための取組
外国人旅行者の来訪促進については,学識経験者等からなる「観光交流における地域国際化に関する研究会」により8年4月に提言された「ウェルカムプラン21(訪日観光交流倍増計画)」に基づく施策が推進されている。この提言を具体化するため,地方圏への誘客を促進することを目的として9年6月に「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」が公布・施行された。
これらに基づき,優れた観光資源を有する地域と宿泊拠点となる地域をネットワーク化して,外国人旅行者が3〜5泊程度で周遊できる観光ルートを整備する広域的な地域である「国際観光テーマ地区」の形成が進められている。 外客誘致法により新たに創設された地域限定通訳案内業制度については,10年1月に九州地域限定の中国語及び朝鮮語の通訳案内業の研修が実施され、同研修を修了し,一定の実務経験を有する等の要件を備えた者について申請により免許が交付されることとなっている。
また,外国人旅行者の国内旅行費用の低廉化のため,博物館,宿泊施設,飲食店等を利用する際に提示することにより割引等の優遇措置を受けられる「ウェルカムカード」については、9年10月に青森県で導入され,10年6月には香川県で導入される予定となっている。
この他にも,主要な航空会社,鉄道会社において外国人向けの割引運賃が設定されるなど,ウェルカムプラン21に基づく取組が各方面でなされており,こうした取組の中で,9年の訪日外国人旅行者数は史上初の 400万人台に達した。
政府は9年度においても前年度に引き続き,国際観光の振興,観光資源の保全・保護,公的観光レクリエーション施設等の整備,国内観光の安全の確保,観光旅行者の保護及びサービスの向上等を図ってきたが,これらのうち主な施策は,次のとおりである。
- 国際観光の振興
1) 国際観光振興会は,外国人旅行者の訪日促進のため,海外での観光展への参加・協力等を通じた広報活動等を行ったほか,7年からインターネットによる観光情報の提供を開始しており,各国から月平均 140万件のアクセスがある。
また,在外公館,日本貿易振興会の広報活動や日本放送協会の国際放送により対日理解の増進を図った。
2) 国内における国際交流の推進対策として,外国人旅行者向けのトラベルフォン等の情報提供体制の整備・充実,「i」案内所の整備・充実(9年12月現在93か所),国際観光テーマ地区外客誘致推進事業(JAPAN QUEST )等を進めるとともに,善意通訳(グッドウイル・ガイド)の普及等を推進した。
コンベンションの振興を図るため,国際観光振興会に設置したセンターによる情報の提供,諸外国における宣伝,誘致活動への支援等を行うとともに,寄付金の募集等により受入れ体制の整備を進めた。
また,長野オリンピック冬季競技大会・パラリンピック冬季競技大会の支援・協力,2002年の日韓共同開催によるサッカーのワールドカップの開催準備への支援・協力を行った。
さらに,2005年の愛知県での国際博覧会については,9年6月開催地決定を受け,博覧会の準備等のため(財)2005年日本国際博覧会の設立等を行った。
3)出入国管理,検疫,通関等において,手続の円滑化を進めた。
4) 海外旅行者の増加に伴い,病気,交通事故及び犯罪等に遭遇する日本人が増加しているため,外務省海外安全相談センター,国際観光振興会等により,パンフレット,ビデオ等を作成・配付し,広報・啓発に努めるとともに,エジプト・ルクソールでの観光客襲撃事件等を踏まえ,「渡航情報」,「退避勧奨・退避勧告」を5段階の「海外危険情報」に統合した。
5) 観光関係国際機関への協力,開発途上国に対する国際観光開発促進協力調査等の調査,専門家派遣,研修員の受入れ等の支援,協力を行った。
- 観光資源の保全・保護
1)国立公園等自然公園の整備,森林の保全管理,河川,湖沼及び海洋環境の保全,都市における緑地の保全,温泉の保護,野生生物の保護等を推進し,自然とのふれあいの要請にこたえるとともに,自然環境の保全を図った。
2) 国宝・重要文化財等の文化財の保存・活用,無形文化財の伝承者養成等を進め,また,歴史的集落・町並み・港湾施設についての保存・活用を図った。 さらに,京都市,奈良市及び鎌倉市等における歴史的風土の保存を推進した。
3) 都市,農山漁村,水辺,道路について景観の整備を促進し,景観の向上と魅力あるまちづくり等を進めた。
4) 9年12月にイタリアのナポリで行われた第21回世界遺産委員会会合において,第22回会合を我が国の京都で開催することが決定され,この会合において我が国が推薦している「古都奈良の文化財」の世界遺産一覧表への記載について審議される予定となっている。
5) 第33回観光週間(8月1日〜7日) ,みどりの週間(4月23日〜29日)等を通じ,観光資源の保全等について,広報・啓発等を行った。
- 観光レクリエーション施設等の現況と整備
1) 公的観光レクリエーション施設等
各省庁においては, 1宿泊を中心とするレクリエーション施設等, 2農山漁村地域におけるレクリエーション地区等, 3森林・公園等を活用したレクリエーション施設等, 4親水レリエーション施設を総合的・広域的に整備した。
2)民間活力の活用による総合保養地域の整備
「総合保養地域整備法」に基づき整備が進められ,多数のプロジェクトが供用され地域の活性化に貢献している。リゾート整備を長期的な観点の下に着実に整備を進めるため,アドバイザーの派遣等を行っている。
3) 民間観光レクリエーション施設
公的観光施設のほか,民間等により,レジャーランド,オートキャンプ場,一般キャンプ場,スキー場,マリーナ,クアハウス,ゴルフ場,観光牧場等様々な観光レクリーション施設が整備運営されている。
- 観光関連施設の現況と整備
1)博物館,美術館等の整備・充実を図り,所蔵品を収集,保管,展示して一般の利用に供するとともに,解説書の発行や各種講座等を開催した。
2)国立競技場等の体育・スポーツ施設や青年の家等の青少年教育施設の整備を進めた。また,パラグライダー等スカイレジャーの進展に対応し,施設の整備等を行った。
- 宿泊・休養施設の現況と整備
1) 一定規模のホテル・旅館等について,近代化を推進するため環境衛生金融公庫において設備資金等の融資を行うとともに,「国際観光ホテル整備法」に基づく登録ホテル・旅館については,政府系金融機関による融資によって施設整備を支援した。
2) 宿泊施設やサービス・料理の面で高齢者が利用しやすい旅館・ホテルとして一定の基準を満たした旅館等をシルバースター旅館として認定登録し,従業員等に対し研修を実施しており,9年11月現在 454軒が認定登録されている。
3) 公的施設等として,国民宿舎,ユースホステル等の運営,整備を行った。
- 観光基盤施設の現況と整備
1) 鉄道については,整備新幹線は10月に北陸新幹線高崎・長野間が開通する等,既に着工している3線5区間の整備を着実に推進した。主要幹線鉄道では,3月に奥羽線・田沢湖線の新幹線直通運転化事業が完了した。 また,居住性の向上や移動制約者への対応等の観点から輸送サービスの改善が進められている。
2) 道路については,高規格幹線道路,地域高規格道路,一般国道及び地方道,有料道路の整備・建設を促進し,「道の駅」や「ハイウェイオアシス」の整備を進めた。高速自動車国道は,東北横断自動車道西会津〜津川の開通等により供用延長が 6,395kmとなった。 また,一般自動車道やバスターミナルの整備・運営,観光地のバス・タクシーについて標準的な行先別運賃の設定等利用者の利便の向上が進められている。
3) 空港については,航空ネットワークの拠点となる大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進するとともに,一般空港等の整備を進めた。また,国内線のダブル・トリプルトラック化,国際線の複数社化を推進した。
4) 海上交通については,運輸施設整備事業団との共有建造方式による国内旅客船の整備を進めるとともに,旅客船ターミナル等の整備を行った。
5) 観光地の環境衛生施設について,国立・国定公園等における自然保護下水道等の下水道事業を重点的に実施した。
- 国内観光の安全確保
1)鉄道,道路,航空及び海上交通の交通安全対策を推進した。
鉄道事故の防止を図るため,自動列車停止装置(ATS)の整備等を推進するとともに,乗務員等の教育訓練の充実,厳正な服務の徹底及び適正な運行管理を指導した。
道路については,交通事故が多発している道路等について,特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき交通安全施設等の整備拡充は図るとともに,交通安全思想の高揚,自動車運送事業者における適正な運行管理の確保及び整備不良車両の運行防止等により交通事故の防止を図った。
航空における安全の確保のため,航空保安施設の整備,航空機の運航の安全の確保,ハイジャック等に対する航空保安対策を行った。
海上交通の安全を確保するため,海事関係法令の励行,旅客船の運航管理制度の徹底,各種船舶への海難防止指導等により事故防止に努めた。
2)宿泊施設等における安全対策を推進した。
旅館,ホテル等の防火対策として,建築基準法,消防法による指導,防火基準適合表示制度の推進等を図った。
また,ホテル・旅館,飲食店等食品関係営業者について,食品衛生指導員の指導,食品衛生法に基づく管理運営基準の遵守の徹底を図った。
3)台風や集中豪雨などの気象条件により土砂災害の発生しやすい環境にある山地流域については,砂防工事を実施するとともに,土砂災害危険箇所の周知,点検,警戒避難体制の確立等総合的な土砂災害対策を推進した。
4)台風・集中豪雨雪対策等観測予報体制の強化,地震・火山対策の強化及び海洋・海上気象業務の強化を行い,観測体制の充実及び適時適切な予報・警報並びに情報の提供に努めた。
5)山岳遭難,水難防止を図るため,救助体制の充実,安全指導等諸施策を推進するとともに, 観光旅行者に対し災害危険箇所及び避難地・避難路等の周知徹底を図るよう地方公共団体に対し指導を行うなど,避難体制の確立に努めた。
- 観光旅行者の保護及びサービスの向上
1)旅行業等に係る施策
- コンビニエンスストア等における主催旅行商品等の販売の解禁(9.6.1),旅行業の登録及び更新の登録の有効期間の3年から5年への延長(9.12.21)等の規制緩和を進めるとともに,立入検査及び報告徴収の強化,旅行業約款等の見直し検討委員会の設置等により消費者保護の充実を図った。
- 旅行業における広告表示の適正化,過大な景品提供の規制,観光土産品の品質,規格等の表示及び包装の適正化を図った。
2)価格・サービスの多様化等
- 最近の観光客のニーズの多様化,新規の需要創出のため,新しい各種のパッケージ・ツアー等が提供されている。
- ホテル・旅館の宿泊料金については,会員向け割引制度等の拡充,レストランを併設しない低価格ホテルや低価格帯の設定などの取組が見られる。
- 鉄道運賃制度については,従来から運賃の50%までの営業割引等の設定・変更について届出制としているが,9年1月から,認可された上限運賃の範囲内であれば,路線別,季節別,曜日別などの多様な運賃の設定・変更を報告により行えることとなった。
- 国内航空運賃については,7年に標準原価を上限とする一定幅内で航空会社が自主的に運賃を設定できる幅運賃制を導入し,6年に5割以内の営業政策的な割引運賃を届出制としており,50%の事前購入割引,特定便割引等利用者の多様なニーズを踏まえた割引運賃が出ている。
3)観光情報提供体制の整備等
- 日本観光協会によるインターネットを通じた国内観光の情報提供,国際観光振興会によるインターネットを通じた観光情報の海外提供,コミュニテイ放送局の開局,マルチメディア等を利用した各種観光情報の提供等観光情報提供体制の充実に努めた。
- 座席予約システム,移動体情報システム等各種情報システムを活用して予約の容易化・総合化,移動時間の有効活用等が図られた。
4)障害者等の円滑な移動の確保
公共交通機関,宿泊施設,文化施設その他関係施設において,高齢者・障害者等の利用の円滑化のためエレベーター等の施設の整備改善,運賃の割引措置等を講じた。 また,宿泊施設については,高齢者・障害者の利用に配慮した施設整備に対し,中小企業金融公庫による特利融資制度により支援した。
- 地方公共団体における観光の取組
1) 地方公共団体は,交流を通じた様々な地域振興の観点から観光振興に取り組んでおり,観光基本計画等を策定し,総合的な推進を図っている。
また,自然環境の保全,文化財の保護,観光地の美化等を進めるとともに,国の支援・協力を受け,また独自に,観光施設,観光基盤の整備を行っている。
さらに,全国各地で特色あるイベントやキャンペーンを実施し,観光宣伝に努めており,物産展やジャパンエキスポの開催等を進めるとともに,地元の観光従事者の接遇の向上や観光バスの整備等受入れ体制の充実にも努めている。
2) 地方公共団体,国,観光関係事業者の連携による観光の振興が強力に進められている。
「90年代観光振興行動計画(TAP 90's)」に基づき,観光立県推進運動を推進し,9年度には,2月に第14回観光立県推進地方会議を「全国大会」として兵庫県で開催し,これまで10年間の総括と21世紀に向けた展開方針について討議し,今後は地方ブロック単位で「広域連携観光振興会議」として開催していくこととされた。
5月には,松江市及び大社町において「第5回地域伝統芸能全国フェスティバル」を開催した。
地域と観光交通関連産業が連携して観光の振興と交通基盤の整備・運営を一体的・計画的に推進する観点から「観光交通地域振興アクションプラン」の策定に8年度から着手し,9年度は,北海道地域及び九州地域の2地域を対象地域として実施した。
送客側と受入側の地方公共団体や観光産業とが協力し,首都圏の消費者をターゲットに新しい国内旅行の提案,旅についての総合的な情報の発信と交流等を行う「旅フェア,97」が開催された。
11月の政府の緊急経済対策を受け,観光による地域の活性化の観点から,モデル地域における観光地評価を踏まえ対応策を検討したうえ,観光地づくりプログラムを策定し,観光関係団体による観光振興イベント支援事業を集中的に実施するなどの「観光地づくり推進モデル事業」に着手した。まず9年度は5ケ所の観光地について事業に着手した。
- 観光関係行政機関等の活動
観光政策審議会,自然環境保全審議会,文化財保護審議会及び歴史的風土審議会等において,それぞれの分野の調査審議を行った。
平成10年度においては,従来の観光関係施策の充実強化に努めるほか,以下の事項について重点的に実施することとしている。
- 国際観光の振興
1) 国際観光振興会と地方公共団体との連携により,国際観光テーマルートを前面に押し出した外客誘致活動を展開することとしており,アジアの主要都市を中心に訪日旅行を促進するための事業を実施するとともに,現地の旅行関連業者を対象とした訪日旅行促進セミナ−などを開催する。
2) 在外公館等で各種広報活動を積極的に展開するとともに,リスボン国際博覧会等国際博覧会に参加・出展を行うべく準備を進める。
また,国際コンベンションの一層の振興を図るため,誘致の促進,開催の円滑化を柱とした総合的な施策を講じるとともに,日韓共催で行われる2002年のサッカーのワールドカップについて支援協力,2005年の愛知県における国際博覧会の開催については,博覧会協会に対する必要な指導・助言等を行う。
3) 海外旅行者の安全確保のため,外務省海外安全相談センターや国際観光振興会による旅行の安全に関する情報の提供,相談・案内業務の実施,また,安全対策の啓発,旅行業者等への積極的な情報提供に努める。
4) 世界観光機関等が行う観光関係の活動について協力するとともに,開発途上国に対する技術協力の一環として,国際協力事業団を通じた観光分野の研修員の受入れ,専門家の派遣及び開発調査の充実を図る。
- 観光資源の保全・保護
1) 自然公園の公園計画について所要の見直しを進める。また,国有林野では,適切な森林の管理施業を推進するとともに,保護林の設定,世界遺産に登録された屋久島,白神山地を始めとする既存の保護林の適切な保護管理等により自然環境の保全・形成を図る。
2) 水質の保全を図るため,水生植物等の生態系を活用した水質浄化施設の整備を推進する。また,水質・底質の浄化を図る海域環境創造事業を実施する。
3) 文化財保護の保存・活用を一層推進するとともに10年度から史跡等総合的に活用する方法の研究開発を行う「ふれあい歴史のさと事業」を新たに実施する。
4) 観光週間,自然に親しむ運動,みどりの週間,文化財保護強調週間等を通じて,観光資源の保護に関連する広報啓発活動を実施する。
- 観光レクリエーション施設等の整備
1) 公的観光レクリエーション施設等の整備
- オートキャンプ施設を自然の中に確保する自動車旅行拠点(家族キャンプ村)の整備を9地区で継続する。
- 過疎地の有する自然環境を有効に活用する過疎地域滞在施設整備モデル事業地区の整備を8地区で継続するほか,新たに9地区の整備に着手する。
- 里山林等の森林環境を保全するとともに森林レクリエーションの場などとして利用するため,地域住民等と森林所有者が協定を締結して,保全・利用活動を行うことを支援する事業を新たに実施する。
- 国立・国定公園の利用拠点である集団施設地区において,利用者が自然と十分にふれあうことができるよう園地,歩道等を重点的に整備する。
- 豊かな自然,歴史・文化的施設を連絡する歩行者専用道路を整備し,訪れた人が安全かつ快適に散策等を楽しむことができる「ウォーキング・トレイル」事業を推進する。
- 国民の健康を増進するため,周辺の砂浜の保全・復元,遊歩道の整備等健康増進のために利用しやすい海岸づくりや教育関連施設等の施策と連携し,世代間の交流の場,自然・教育活動の場等として利用しやすい海岸づくりを行う。
2) 総合保養地域の整備を中長期的視点の下に着実に進めていく。
- 観光関連施設の整備
博物館,美術館や体育・スポーツ施設の整備,充実を図るとともに,新国立劇場においては,年間を通じオペラ等の公演のほか,研修事業の実施等を行う。
- 宿泊・休養施設の整備
宿泊施設の整備に対する融資制度により,施設整備の支援を行う。
- 観光基盤施設の整備
1) 整備新幹線の建設,主要幹線鉄道の高速化,輸送力増強及び輸送サービスの向上等を促進するための都市鉄道の整備を推進する。
2) 道路整備について,新たな道路整備五箇年計画を策定し,「新たな経済構造実現に向けた支援」等4つの緊急課題に重点を置き整備推進を図る。
3) 8年度を初年度とする港整備七箇年計画に基づき,大都市圏の拠点空港の整備を優先課題として空港整備を推進する。
4) 国内旅客船の整備,旅客船ターミナル,マリーナ等の整備を図る。
5) 下水道については,8年度を初年度とする第8次下水道整備七箇年計画に基づき,公共下水道,流域下水道,特定環境保全公共下水道等の整備を図る。
- 国内観光の安全確保
1) 鉄道事故の防止を図るため,自動列車停止装置(ATS)等の整備を進める。
2) 近年の交通事故の多発傾向にかんがみ,安全かつ円滑・快適な道路交通環境の整備を図るため,特定交通安全施設等整備事業七箇年計画に基づき,交通安全施設等の一層の整備拡充を図る。
3) 航空交通の安全確保を図るため,衛星を利用した航空管制を行うための航空衛星システムの新設を推進する。
4) 海上交通の安全を確保するため,海事関係法令の励行に重点を置くとともに,航路標識の新設等を計画的に推進する。
5) 気象,地象,水象に関する観測・監視体制の強化及び予報・警報等の精度向上等的確な気象情報の提供を推進する。
- 観光旅行者の保護及びサービスの向上
1) 8年4月から施行されている旅行業法の円滑な実施を引き続き図る。
2) 各運輸事業者による各種運賃・料金施策等利用者サービスの充実を図る。
3) マルチメディア等を活用した観光情報提供体制の整備を進める。
4) 公共交通機関等における高齢者・障害者の利用の円滑化等のための改善措置を進める。
- 地方公共団体の観光施策への支援・協力
1) 観光資源の保全・保護,公的観光レクリエーション地区・施設の整備,観光関連施設の整備,宿泊・休養施設の整備,観光基盤施設の整備等に関して地方公共団体を支援・協力し,地域における観光の振興を引き続き進める。
2) 観光立県推進地方会議「全国大会」において採択された21世紀にむけての新しい展開方針に沿い「広域連携観光振興会議」を地方ブロック単位で開催するとともに,岐阜県において第6回地域伝統芸能全国フェスティバルを行う。
10年度に富山県にて開催される「ジャパン・エキスポ」に対して,各種の支援措置を講じる。
3) 国内旅行の促進と旅行を通じた交流人口の増大による地域の活性化を図るため,都道府県等と旅行関連産業が連携し開催する旅の総合見本市「旅フェア '98」を10年4月幕張メッセで開催する。
4) 関東地域及び中国地域の2地域で「観光交通地域振興アクションプラン」を策定する。
5) 9年度に着手した「観光地づくり推進モデル事業」について,9年度に着手した5ケ所の観光地について引き続き事業を実施していくとともに,さらに5ケ所以内の観光地について新たに事業に着手する
- 観光関係行政機関等の活動
1) 観光政策審議会を始め各観光関係審議会は,適宜所管の事項について調査,審議を進める。
2) 観光関係団体に対し引き続き支援,指導を行い,観光の振興を図る。