第2節 創造的な活動を生み出す交流を支えるために
1 創造的な都市のための都市構造再編
(1)中心市街地の活性化
近年問題となっている中心市街地の衰退は、商店街の衰退など経済的側面だけでなく、実は都市のあり方の転換点を象徴する問題でもある。高度成長の終焉以来、我が国の人口移動は徐々に沈静化しており、現在は人口のピークが間近に迫る中、成熟した都市型社会へと転換しつつある。このような転換の時期を迎え、都市政策の方向を転換し、都市の拡大に対して効率よく対応することに追われるのではなく、都市の中へと目を向け直して「都市の再構築」を推進すべき時期に立ち至っている。ここで、住民の相互関係が生み出す創造性を尊重する考え方を政策として取り入れる方向への転換、すなわち都市文化を尊重する考え方が重要になってきている。
都市規模が小さい地方都市ほど中心市街地の衰退は著しい。中心市街地の衰退が著しいといわれている地方都市の実情をみると、九州地方の都市に例をとれば、人口規模30万人の都市を境にそれより小規模の都市で昼間人口と夜間人口双方が減少しており、業務機能の低下と同時に居住人口も大きく減少させている姿が浮かび上がる。
このような中心市街地の空洞化は、都市の持つ文化的な意味に与える影響が大きい。多様な中小都市を維持し、その創造性を活かすためには歴史と文化の蓄積装置としての中心市街地の活性化が必要である。世論調査でも、交流や地域情報取得の場や歴史や文化の蓄積装置としての中心市街地への期待が表れている。
こうした中心市街地の活性化に当たっては、「中心市街地における市街地の整備及び商業等の活性化に対する法律」が制定されるなど様々な施策が打ち出されているが、市町村と住民の主体的な取組と、さらには、NPOの活躍が期待される。
(2)都市の少子高齢化
従来、少子高齢化はどちらかというと過疎地域の問題と捉えられてきた。しかしながら、東京都においては平成7年において既に老年人口が年少人口を上回るなど(全国では平成9年)大都市においても、急速な高齢化と子供の数の減少が進みつつある。
大都市周辺には高度成長期に地方から出てきた人々が大量に居住しており、今後、それが急速な高齢化の要因として現れてくる。大都市周辺の地方公共団体は、昭和40年代に整備された周辺部の大規模ニュータウンに典型的に見られるように、今後は急速な少子高齢化への対応に迫られることとなる。
高齢者は、投資余力の観点からマクロ経済的に捉えられる場合も、住宅・社会資本の観点から機能的に捉えられる場合も、社会的弱者と位置付けられがちであるが、高齢化は必ずしもマイナスイメージで捉えるべきではない。我が国の高齢者の多くは健康で、資産や自由な時間を持っており、社会参加活動に対する意欲も強い。また、今後高齢化が進むにつれて高齢者の層が厚くなるが、現在の各年齢層の生活時間配分を前提にした場合、高齢化につれて国民の持つ可処分時間の総量は増加していくと考えられる。
このような健康で時間も意欲も兼ね備えた高齢者がいきいきと活躍できる社会を創っていくことができれば、我が国の将来についても展望が開ける可能性がある。そのため、
2 多様で豊かな地域を創るための連携
バブル経済の崩壊後、これまでの大都市指向の生活・雇用形態から、地元に根ざした「地域循環型」の経済・ライフスタイルが定着する傾向が見受けられる。我が国の人口移動について見ると、平成4年より都道府県内移動者数は増加しているのに対し、同時期に都道府県間移動者数は減少している。ちょうどこの時期、高卒者の県内就職率や分譲住宅等の着工戸数が増加しており、地元で就職し、地元で家を持とうとする地元指向の動きが起こっていると考えられる。
戦後の人口移動(移動者総数及び都道府県内・都道府県間移動者数)
県内移動者数と高卒者地元就職率
地域循環型の経済・ライフスタイルをさらに分析するため、地方圏の人口30万人以下の都市圏について分析してみよう。この分析によると、昭和50年代まではこの規模の地方都市圏の盛衰は、「高度成長」や「地方の時代」などその時代の大きな流れが概ね決定していた。しかし、昭和60年代以降、個別の都市圏で成長にバラツキが生じてきている。順調に成長している都市圏(1型)では、都市圏内の交流も活発であり、核都市と周辺部との適切な機能分担や相互補完によって都市圏全体を発展させることが重要であることを示唆している。
都市圏分析(人口30万人以下(核都市人口10万以上)の都市圏分析)
また、地方圏への公共投資は、投資のなされた地域のみならず大都市圏を含む広い範囲の地域に対して効果を及ぼしている。例えば、東京都中央卸売市場に入荷する野菜の送出地は高速道路の整備につれて近年ますます遠隔化しており、地方圏の道路整備は大都市にも大きなメリットをもたらしている。また、東京都民が使用する水の70パーセントは、他の県で建設されたダムに依存しており、東京などの大都市圏の生活の最も基本的な部分は地方圏で整備された社会資本によって支えられている。このように、大都市圏と地方圏は相互依存関係が強く、公共投資の効果を画一的に投資の場所等で分けて議論することは困難である。