第4節 自由な経済活動を柔軟に支えるために

 高度成長期に定着した大量生産・大量消費型の経済活動は、現在、成熟型の経済活動へ移行しつつある。今後、行政は、以下のような取組で自由な発想を柔軟に受け止め、多様な経済活動をきめ細かく支援することが重要である。

  1. 既存ストックの基本的な機能の維持と多様な活用
  2. 官民の役割分担や規制の見直し
  3. 自由な経済活動を阻害する要因(ボトルネック)の解消


1 ストック活用等による柔軟性の増大

 今後も、住宅・社会資本の整備を進め、良好なストックを形成していく必要があることはいうまでもないが、現在既にあるストックをいかに上手に利用していくかはストックの蓄積が進むとともにますます重要な問題となっていく。今後、既存ストックが、多様化する需要に柔軟に対応するためには、

  1. 本来機能を長持ちさせる
  2. 機能を十二分に発揮させる
  3. 潜在的機能の発掘を図る
などの様々な工夫が必要となる。
 例えば、集合住宅の骨組み部分となる躯体を高耐久のものとし、これと住戸部分を構造的に完全に分離することが考えられる。これにより、住戸部分のみを更新することが容易になるため、建物全体としての長期使用と各住戸の自由なリフォームが達成できる。また、ダムの弾力的管理により、従来に比べダムに新たな水量を確保し、清流回復や流況改善に活用する試みもなされている。
 さらに、外気温に比べて夏期は低く冬期は高い下水熱の特徴を利用して、全国各地で、地域冷暖房やバス停のヒーティングなどが行われている。

ダムの弾力的管理概念図
下水道をロードヒーティングに利用した例



2 自由な企業機会の提供

 経済活動の多様な可能性を引き出していくための取組としては、官民の役割分担の見直しや社会経済情勢の変化に伴う規制の見直しが行われている。
 官民の役割分担の見直しによる企業機会の提供としては、民間活力を利用した社会資本整備手法としてのPFI、建築基準法の改正による建築確認等の民間開放があげられる。また、規制の見直しによる企業機会の提供の例としては、高速自動車国道法等の改正による道路空間を利用した民間事業機会の創出や建築基準の性能規定化による設計の自由度の拡大があげられる。

建築基準の性能規定化による効果



3 土地市場等の活性化

 我が国の都市においては、虫食い地等の低未利用地の整形・集約化等とこれらを活用した再開発を促進することにより、都市を魅力あるものに再構築していくことが重要かつ緊急な課題となっている。
 このため、金融機関の不良債権の処理という財務上の対応にとどまらず、低未利用地を拘束している債権債務関係全体を整序し、これを的確に有効需要の創出に結びつけるための調整や支援の仕組みを整備する必要がある。これを受けて、住宅・都市整備公団の再開発・街づくりへの重点化を行うとともに、民間都市開発機構に都市開発プロモート体制を構築するなどの措置をとることとしている。

土地債権流動化トータルプラン