(「職」×「住」)
また、女性や高齢者を含めた多様な人々がその地域において生き生きと働くことのできる「職」環境を整えることも必要である。その効果は、地域の活性化、地域経済の向上だけにとどまらず、職住近接に伴い出産・育児のしやすい環境となることが期待される結果、まちの若年人口の増加へもつながり得る。在宅勤務・SOHOの可能性については、ITの進展による増加の可能性を前述したが、この動きに関係なく、地域に根ざした女性の出店の増加の機運が見られる。これは、女性の社会進出に対する基盤(国民意識や社会制度など)が着実に整ってきたことを背景とした女性の自己実現意識の高まりを反映した動きであり、特徴として地域に根ざし日常生活に密着した関係の出店の多いことがあげられ、特に消費者としての経験を活かした個性的な新しい業種を導入する可能性が高いことがいわれている。現在、「空き店舗のある商店街は全国で84%に上り、しかもその各商店街における平均空き店舗率は9%に達している」という調査結果(平成9年度日本商工会議所調査)にも見られるように、全国の中心市街地の空洞化が進み、地域衰退の象徴として扱われているが、逆にこのような空き店舗を活用することにより出店の支援を図っている取組みが一部の地方公共団体で見られる。具体的には、市の商工会議所が空き店舗を借り上げ、公募により良いアイデアを有する出店希望者に貸し出すといった手法である。このような取組みは、女性の労働力化や既存施設の有効利用に資すると同時に、個性ある店舗の展開により衰退した商店街を含めた地域の活性化の契機となることが期待される。この場合、地域内外を問わず消費者が訪れる「交流」を促進させるためにも、外来する人にとって利便性の高い駐車場の整備や歩道の整備など歩いて用を足せるまちづくりが必要である。
また、ベンチャーの技術に着目し、起業を支援することによって地元産業に育て上げる新たな試みも全国で広まりつつあり、次に紹介する岩手県花巻市はそのモデルケースとされている。
〈岩手県花巻市のベンチャー支援〉
岩手県花巻市はかつては他の地域と同様に工場誘致を進めていたが、バブルの崩壊に伴って誘致が困難となってきたことを契機に「地元から産業を生み出す」という方向に転換し、起業化支援に乗り出した。平成6年に市役所が空き工場を活用し「花巻起業化支援センター」を発足させ、その2年後に花巻第一工業団地に引っ越した。岩手大学等との「産学官」ネットワークの形成とともに、センターにコーディネーターを配置するなどの支援体制を整え、全国各地から起業家を集めた。現在では、着実に実績を上げている企業も出ている。