2 建設産業における労働生産性の向上
(建設産業の生産性向上策)
現下の厳しい建設市場環境の下では、元請、下請を問わず、現状のまま全ての建設業者が生き残ることは不可能である。今後は建設市場における競争が一層激化すると予想され、1)コストダウン、2)品質・商品開発能力・提案力による差別化、の2つの局面で競争力の強化が求められている。
特に、1)コストダウンについては、工事のコストを縮減して価格競争に耐えるためには、管理部門など(間接コスト)の合理化とともに労務費や建設資材費(直接コスト)の合理的縮減が必要である。しかしながら、一方、価格競争に耐えるにしても、ダンピング受注や買いたたき、さらには下請・資材業者への一方的な指し値によるコストの切詰めなども指摘されている。こうした行為は下請業者の施工力や経営悪化を招き、最終的には企業イメージや信頼性などにマイナスに働くことが大きい。
むしろ、中長期的にみても、建設市場におけるこのような競争の激化と、まもなく労働力人口の減少が推計されていることを踏まえると、長期的に見て有効な生産性向上策と考えられるものは、建設産業の単品受注の現場生産という性格から、現場の総合管理監督を担う技術者と、直接施工を担う建築大工、鳶、土工、塗装等の専門工事業において現場の施工管理や直接施工を担う職長や技能者の資質の向上を図ることが重要となってくる。つまり、建設産業はヒトで成り立つ産業であり、労働者の有する能力で品質やコストが大きく左右される産業としての観点からの生産性の向上を目指すべきである。