(建設業退職金共済制度の改善)
建設業退職金共済制度(以下「建退共制度」という。)は、中小企業退職金共済法に基づき、工事現場を移動し、転々と異なる事業主に雇用される場合が多い建設労働者を対象に、建設業で就労した期間を通算して退職金を支払ういわば業界退職金制度として、昭和39年に創設されたもので、被共済者数は平成12年3月現在で約213万人に達している(なお、大まかな目安として、年間250日・期間30年の現場労働でおおむね500万円の退職金が支払われるようになっている)。
制度創設以来、建設労働者の福祉対策として、同制度への加入促進と履行の確保が進められてきた。この間、建設省も、現場で直接施工を担う労働者の雇用の安定が、生産物の品質確保や、発注者・国民の利益にもつながると考え、1)経営事項審査において建退共制度に加入している建設業者の加点評価(業行政の立場)、2)直轄工事の予定価格の積算に際して掛金相当額を現場管理費として計上(発注者の立場)、3)建設業界への加入指導、などを行ってきた。しかしながら、現在の加入状況は、建設業界全体の事業主数と比較して必ずしも満足すべきではない。また、建退共制度に加入しながら、共済手帳の交付を行わず又は共済証紙の貼付を行わない事業主が一部見られるなど、その履行状況も必ずしも十分なものとはいい難い状況にある。
このため、元請建設業界団体をはじめ建設業界の自主的な改善検討を踏まえ、労働省、建設省、勤労者退職金共済機構の三者で「建退共制度改善方策」をとりまとめ、平成11年度より1)共済手帳・共済証紙の受払い簿による管理の徹底、2)証紙共済証紙購入の「目安」について、実態に即した見直し、3)共済証紙貼付以外の方法の導入(ICカード方式等)に関する検討、4)加入促進対策の強化、制度の周知徹底、など事業主・建設労働者双方にとって合理的で透明な仕組みの改善実施・検討に取り組んでいる。
本制度については、上述したように直轄工事はじめ公共工事において、他の退職金制度や法定福利費とともに積算に反映しているが、こうした建設労働者の福祉の向上策については、コスト競争により労働者の賃金にも影響が出ている状況下で、労働者が少しでも安心して生産性の高い責任ある施工を行い品質確保を図る上で意義のある措置である。