(高潮)
平成11年9月24日、台風18号は、九州・中国地方に上陸し、各地に大きな爪跡を残した。なかでも熊本県の八代海(不知火海)沿岸では、台風による気圧低下と強風によって高潮・高波が発生し、湾奥部の不知火町松合地区では瞬時に1階の屋根まで冠水し、12人もの犠牲者が出た。
このような大規模な高潮災害となった原因は、1)大潮の満潮、2)南からの強風の吹き寄せ、3)気圧低下による海面上昇、4)湾奥という地形特性、といった最悪の条件が重なったためであるが、さらに、近年、高潮災害を受けておらず、住民の災害に対する意識が希薄だったことも一つの要因となっている。
建設省では、他の海岸行政所管省庁と共同で、平成11年9月に「海岸緊急点検」を実施し、不知火町松合地区と地形条件が類似する海岸の状況について調査した。この結果、湾口が南側に開く湾内に位置し、背後地の最低地盤高が既往最高潮位以下の地域は全国で1,420地区、さらにこれらのうち松合地区と同様に最低地盤高が既往最高潮位より1.5m以上低い地域は409地区、防護人口468万人、要保全海岸延長1,070kmであり、これらの地区の海岸について緊急的に整備を進めている。
また、関係7省庁合同による「高潮災害対策の強化に関する連絡会議」を平成11年10月に設置するとともに、連絡会議における関係施策の検討の一環として、有識者の参加を得て「高潮防災情報等のあり方研究会」を平成12年2月に設置し、高潮災害における避難誘導等のソフト対策の充実・強化に向けての検討を行っている。
これらにおいて、高潮観測網の整備と併せた高潮予測情報の改善、高潮危険度を考慮した地域防災体制の充実、住民に対する高潮防災知識の普及のほか、「地域防災計画における高潮防災対策強化の手引き(仮称)」の内容等を検討し、効果的な施策の立案、手引きの策定等を進めている。