(住民協定)

 土地・建物所有者としての住民は財産権の保全の面から、最も景観による利害を被る。住民同士の自主的な取決めを定めることにより、それぞれの住民がお互い何を望んでいるのか、又は望んでいないのかについて合意形成をし、それを実行に移すための仕組みとして、建築基準法に基づく建築協定や、都市緑地保全法に基づく緑地協定等を活用することが考えられる。これらの住民の自発的な取決めは当事者として実行可能な範囲を明文で合意したものとして実効性も高く、市町村アンケートによると多くの市町村で活用されている制度である。
 しかし、「住民協定に到る過程が行政主導であったために、住民の自立意識が芽生えず、行政に依存する形となってしまった」例もある一方で、「協定締結から年月が経過し、住民の意識が風化してくるときの行政側の啓発」が不足したために、うまく機能しなかった、との回答もあり、行政側と住民側の役割分担は今後とも課題として残っている。
*緑地協定
 都市緑地保全法に基づいて、市民(土地所有者等)の自らの発意により、市街地の良好な環境を確保するため、緑地の保全又は緑化に関する事項を定める制度である。既にコミュニティが形成された市街地において土地所有者等の全員の合意により締結し、市町村長の認可を受けるものと、宅地開発を行うものが分譲前に市町村長の認可を受けて定めるものとがある。市町村長の認可を受けた緑地協定の区域内の土地については、協定が定められた後に所有者となった者についても当該協定の効力が及ぶことになっている。
*建築協定
 地域住民が、建築基準法その他の公法による規制のみではより良い地域環境の形成、保全に不十分であると考えたときに建築物についての必要な基準を民事上の協定として定めることによって、住宅地としての環境や商店街としての利便を高度に維持することを目的とした建築基準法上の制度である。建築基準法により既に当該地域の建築物に課されている基準を強化し、また範囲を広げることが可能である。