2 平成11年度、12年度の主要施策
(1)地球温暖化問題への対応
地球温暖化問題とは、人の活動によって発生する「温室効果ガス」により、地球全体として、地表及び大気の温度が上昇し、自然の生態系及び人類に悪影響を及ぼすものであり、人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つである。
地球温暖化のメカニズムは複雑であり、今後の研究の進展に委ねられている部分もあるが、大雑把には、二酸化炭素等の「温室効果ガス」が人の活動によって大気中に過剰に蓄積された結果、日射を吸収して加熱された地表面からの赤外線放射を、増えすぎた「温室効果ガス」が吸収してしまい、宇宙への熱の放出が過剰に妨げられることにより、地球規模で気候が温暖化するというものである。これにより、気温上昇による海水の膨張や氷河等の融解による海面の上昇、気候の変動等による、陸地の海没や生態系や農業等への悪影響が発生すると言われている。
この問題に対処するため、平成4年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロにおいて開催された国連環境開発会議(地球サミット)において我が国を含む155ヶ国が「気候変動に関する国際連合枠組条約」(気候変動枠組条約)に署名し、同条約は平成6年3月に発効した。
さらに、同条約の目的を達成するため、平成9年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)においては、地球温暖化を防止するための国際的な取組みについて、先進国の具体的な温室効果ガス排出削減目標等を定めた「京都議定書」が採択された。京都議定書においては、平成20年(2008年)から平成24年(2012年)までの期間中に先進国全体で温室効果ガスの排出を平成2年(1990年)レベルより少なくとも5%削減することが求められており(一部のガスの基準年は1995年とすることができる。)、我が国には、6%の削減が課せられた。
我が国としては、京都議定書を遅くとも平成14年(2002年)までに発効させるため、本年11月にオランダのハーグで開催される気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)において京都メカニズム等について各国の合意が得られるような交渉の進展に努めるとともに、必要な措置について検討を進めていく必要がある。
国内における対策として、COP3後の平成9年12月には、京都議定書の着実な実施に向け、地球温暖化防止に係る具体的かつ実効ある対策を総合的に推進するため、内閣に「地球温暖化対策推進本部」が設けられ、平成10年6月には温室効果ガスの着実な削減が達成されるよう、平成22年(2010年)に向けて緊急に推進すべき対策を取りまとめた「地球温暖化対策推進大綱」が決定された。
建設省としては、本大綱に従って、地球温暖化を防止するための対策を一層強力に推進することとしている。
イ 住宅・建築物の省エネルギー化等の推進
平成11年3月に住宅・建築物の断熱化等に係る省エネルギー基準の強化を行ったところであり、また、省エネルギー型住宅・建築物の整備の促進を図るとともに、消費者が、住宅・建築物の省エネルギー性能等に関して的確な判断ができるよう情報提供体制の整備を図る。
・平成11年度より、省エネルギー基準に適合する住宅等に対する割増融資額の引上げ等を行う。
・省エネルギー対策を行った建築物の整備等に対して低利融資を行う。
・太陽エネルギー活用システム等を設置した住宅団地の整備等に対し補助を行う。
・環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)の整備を先導的に実施する。
・平成11年6月に成立した「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の的確な施行を図る。
ロ 自動車交通に関するエネルギー効率の向上
交通渋滞の緩和、公共交通機関の利用促進及び物流の効率化を図るため、バイパス・環状道路、交通結節点等の整備、交通需要マネジメント(TDM)施策や高度道路交通システム(ITS)の整備等を推進する。また、環境にやさしい運転方法の普及啓発を図るとともに、自転車利用促進のための環境整備を推進する。
・新道路整備五箇年計画(平成10〜14年度)に基づき、道路ネットワークの整備や交通需要マネジメント等の交通円滑化対策を推進する。
・「都市圏交通円滑化総合計画」を策定し、バイパス・環状道路等の整備や交通需要マネジメント施策、マルチモーダル施策を総合的に推進する。
・特に渋滞の著しい地区や交通結節点について、平成11年度より「都市圏交通円滑化総合対策事業」を創設し、重点的かつ総合的に対策を講じる。
・渋滞の解消等安全で円滑な道路交通の確保を図るため、ITSを統合して組み込んだスマートウェイの実現に向けた取組みを推進する。
・ノンストップ自動料金収受システム(ETC)について、平成12年4月より試行を開始したところであり、平成14年度までに整備効果の高い路線の料金所で概成することとしている。
・自転車道路ネットワークの整備に関する基本的方向を取りまとめるとともに、自転車道網の整備などによる自転車利用を促進するモデル事業を実施する。
ハ 二酸化炭素排出の少ない都市・地域構造の形成
二酸化炭素排出の抑制に資する環境と共生する都市・地域構造を形成するため、都市交通の改善、都市におけるヒートアイランド現象の緩和、都市レベルでのエネルギー利用の効率化等を促進するための施策を総合的に推進する。
・「次世代都市整備事業」により、都市レベルでの太陽光発電の導入等自然エネルギー・未利用エネルギーの活用を推進する。
・「新世代下水道支援事業」により、下水及び下水処理水の持つ熱を建築物等の冷暖房熱源として利用するための施設の整備を実施する。
・「下水道における地球温暖化防止実行計画策定の手引き」を策定し、下水道整備及び維持管理における省エネルギー対策等を総合的に推進する。
・都市公園において、補助対象施設に自然エネルギーを活用した発電施設を位置付け、その整備を促進する。
ニ 都市緑化等の推進
二酸化炭素の吸収源の確保及び都市におけるヒートアイランド現象の緩和を図るため、緑の保全・創出に係る総合的な計画の策定を推進するとともに、都市公園の整備や都市内の水面の確保、道路・河川等の緑化、既存の民有緑地の保全、新たな緑化空間の創出を促進する。
・市町村における「緑の基本計画」の策定を推進する。
・都市公園において、「平成の森」づくり事業を推進する。
・水と緑のネットワーク化を図るとともに、道路のり面の樹林化や植樹帯の整備、植生等を利用した多自然型川づくり、荒廃した山地への植樹等を推進する。
・建築物の屋上、壁面等の緑化を推進するため、技術開発、屋上緑化施設を備える建築物の整備等に対して低利融資を行う。
ホ その他
・二酸化炭素の排出抑制等に係る産業界の自主的な取組みを促進するため、平成10年に建設、不動産、住宅生産業界において自主行動計画(第2版)を策定したところであり、建設省としても、その進捗状況のフォローアップに取り組む。
・地球環境の現状と変化を正確に把握するとともに、必要な対策の検討に資するため、地球地図の整備を推進する。