(4)都市再開発の推進
イ 都市再開発方針の策定
都市再開発を推進する手法としては、市街地再開発事業、土地区画整理事業等の各種の事業のほか、特定街区、地区計画等の計画手法による規制・誘導策定等の種々の施策がある。
これらの手法の利点を十分に活用するため、都市計画に都市再開発のマスタープランである「都市再開発方針」を定め、再開発構想を明確にすることで再開発の積極的かつ計画的な推進を図り、再開発についての公共、民間の役割分担を明確にした上で民間建築活動を適正に誘導することとしている。
都市再開発方針には、東京都区部、大阪市等22の大都市においては、1)都市計画区域内にある計画的な再開発が必要な市街地(一号市街地)及び2)一号市街地のうち特に一体的かつ総合的に再開発を促進すべき地区(二号地区)を、その他の線引き都市においては、特に一体的かつ総合的に再開発を促進すべき地区(二項地区)を定めることとしている。
ロ 市街地再開発事業の役割と施行状況
市街地再開発事業は、都市再開発法に基づき、低層の木造住宅等が密集する市街地等において、耐火建築物と駅前広場、幹線街路等の公共施設とを一体的に整備することにより、土地の有効・高度利用、市街地環境の抜本的改善、良好な都市住宅の供給等を実現する事業である(図2-V-5)。
平成12年3月31日現在、703地区、1,073.2haで事業が実施されており、このうち464地区、692.5haで事業が完了している。
ハ 社会経済情勢の変化に対応した再開発の推進
これまで市街地再開発事業は、都市の不燃化・防災性の向上、良好な都市住宅の供給、中心市街地の活性化等に大きな役割を果たしてきた。
しかしながら、市街地再開発事業は必要な資金を事業完了後の床処分等により賄う事業となっており、今日の社会経済情勢の変化の中で、不動産価格の下落などにより事業成立の鍵となる床処分計画に見通しが立ちにくくなっているなど、事業の推進が厳しい状況であり、市民ホール、図書館等公益施設の導入や処分から床賃貸経営への転換、特定建築者制度等民間事業者の活用など、現在の経済情勢に的確に対応した再開発手法を推進している。
ニ 都市再開発法の改正
平成10年に、任意の再開発・建設事業を優良な再開発事業に誘導するため、都市再開発方針の策定対象区域を拡大し、優良な事業に関し都道府県知事が認定を行う認定再開発事業を創設するとともに、地方公共団体等施行において初期段階での事業リスク軽減等を図る特定事業参加者制度を創設する改正を行った。また、認定再開発事業が創設されたことに伴い、同制度に関する税制上の特別措置が講じられた。
平成11年には、1)準備段階の事業立上げを促進するため、事業計画の決定前に設立認可される市街地再開発組合を法律に位置付ける。2)民間活力の一層の活用を図るため、保留床からなる施設建築物以外の施設建築物においても特定建築者制度の活用を可能とする。3)施行者の負担を軽減し、事業の迅速な推進を図るため、地区外転出者に対する補償金の利率算定方式を合理的なものにする。4)土地区画整理事業と市街地再開発事業を一体的に施行できるよう措置を講じる等の改正を行ったところである。
ホ 市街地再開発事業に対する助成
市街地再開発事業に関する国の助成には、調査設計計画費、土地整備費、共同施設整備費等、再開発ビルの整備に要する費用の一部に対する地方公共団体の補助に対する補助(一般会計補助)と、事業で整備される公共施設を管理することとなる地方公共団体が施行者に支払う負担金に対する補助(道路整備特別会計補助)がある。平成12年度予算については、一般会計補助は事業費95,272百万円(国費31,799百万円)、道路整備特別会計補助は事業費52,313百万円(国費26,809百万円)をもって、約240地区で事業を推進することとしており、福祉空間の形成、中心市街地の活性化等各種の都市問題の解決に資する事業に係る支援の強化を図る。
ヘ 環境・福祉・安全市街地形成に配慮した再開発の促進
環境負荷の低減や福祉空間の形成、さらには安全市街地の形成に関し、関連法規上の基準に適合する施設建築物を整備する等、特に公益性の高い市街地再開発事業等に対して、国が特別の助成を行う再開発緊急促進事業を推進し、各種政策課題への対応に資する事業の促進を図る。平成12年度は事業費107,600百万円(国費3,228百万円)をもって事業を推進することとしている。
ト 被災市街地の復興に資する市街地再開発事業の推進
阪神・淡路大震災による被災市街地の早期復興と被災者の生活再建を図りつつ、災害に強いまちづくりを実現するため、阪神・淡路大震災に関連して、被災市街地復興特別措置法に定める被災市街地復興推進地域等において行われる市街地再開発事業について補助対象の拡充等を実施している。平成12年度予算については、非常災害時補助率(2/5)の適用期限を平成13年3月31日まで延長する措置を講じている。
チ 都心居住を推進する再開発事業
1) 住宅供給を行う市街地再開発事業の推進
これまで市街地再開発事業は、大都市都心部等の既成市街地において、良質な都市住宅を大量に供給してきた。今後も引き続き、住宅供給を行う市街地再開発事業を重点的に実施する。
2) 住宅街区整備事業の推進
住宅街区整備事業は、大都市地域に存する農地等を活用して、大量の住宅供給と良好な住宅街区の形成を一体的に行う事業である。平成12年度予算については、工場用地の集約化、土地利用転換を通じた良好な中高層住宅街区の形成を図る事業について補助対象の拡充を行い、一般会計補助(道路整備特別会計は市街地再開発事業の内数)事業費345百万円(国費115百万円)をもって事業を推進することとしている。
リ 計画的な都市整備に資する再開発の推進
都市再開発方針により計画的な再開発が必要とされた市街地等において、都市計画に定められた公共施設の用地を空地として確保するとともに、敷地等の共同化、協調化、高度化更新を図り耐火建築物を建設する地区再開発事業を推進する。平成12年度予算については、防災性向上に資する事業について補助対象の拡充を行い、一般会計補助事業費672百万円(国費224百万円)をもって事業を推進することとしている。
ヌ 再開発関連制度
1) 都市活力再生拠点整備事業
都市活力再生拠点整備事業は、地方公共団体による総合的な整備計画(地区再生計画)、街区単位の具体的な整備計画(街区整備計画)及びモデル的な権利変換計画(事業化促進計画)の策定や、連鎖的・総合的な事業展開を図るためのコーディネート業務に補助を行うことにより、同計画に従った市街地再開発事業、地区再開発事業等の計画的実施を行うものである。平成12年度予算(予算額は市街地再開発事業費補助(一般会計)の一部として計上)については、コーディネート業務への支援措置の拡充を行うこととしている。
2) 都市再開発関連公共施設整備促進事業
都市の再開発を促進するため、市街地再開発事業に関連して必要となる道路、公園、下水道等の公共施設の先行的かつ集中的な整備について通常予算とは別枠の補助を行う事業である。平成12年度予算については、補助金の統合化を行い、道路整備特別会計補助(補助率1/2)は事業費6,000百万円(国費3,000百万円)、一般会計補助(補助率1/3)は事業費248百万円(国費124百万円)をもって事業を推進することとしている。
ル 流通業務市街地の整備
都市における流通機能の向上及び道路交通の円滑化を図り、もって都市機能の維持及び増進に寄与することを目的として、「流通業務市街地の整備に関する法律」に基づき流通業務市街地の整備を推進している。
これまでに22都市において「流通業務施設の整備に関する基本方針」が定められており、これに基づき27ヶ所の流通業務市街地が整備され(一部整備中含む)、うち21ヶ所が稼働中である。今後は物流効率化による地球温暖化防止や物流コスト削減といった社会的要請にも対応していくため、引き続き流通業務市街地の整備を推進することとしている。
ヲ 都市開発資金の貸付け
計画的な都市整備を促進するため、従来より都市開発資金により次に掲げる貸付けを行っている。
1) 街路・公園等の予定地及び都市の再開発の種地等の先行取得を行う地方公共団体に対する低利融資(用地先行取得資金融資)
2) 市街地再開発事業を実施する組合等及び保留床取得を行う保留床管理法人に対する無利子融資(市街地再開発事業等資金融資)
3) 住宅宅地供給を促進するため、土地区画整理事業を実施する土地区画整理組合等、保留地取得を行う保留地管理法人に対する無利子融資、及び土地区画整理事業用地を先行取得する土地区画整理事業の業務代行者に対する低利融資(住宅宅地供給促進型土地区画整理事業資金融資)
4) 都市基盤整備公団等の行う面的整備事業に対する無利子融資(都市基盤整備公団等事業資金融資)
5) 直轄・公団事業のための事業予定地及びその代替地の先行取得を行う土地開発公社に対する低利融資(特定公共用地等先行取得資金融資)
6) 民間都市開発推進機構の業務に対する無利子融資(民間都市開発推進資金融資)
7) NTT株の売却益を活用した、第3セクター等が実施する収益回収型公共施設整備事業に対する無利子融資(都市開発資金特別貸付金)
平成12年度においては、用地先行取得資金融資における要件の緩和措置の延長、住宅宅地供給促進型土地区画整理事業資金融資における貸付単価の引上げ、及び民間都市開発推進資金の拡充措置の延長を行い、計画的な都市整備を促進する(表2-V-10)。

