(7)都市交通体系及び施設整備の推進
イ 都市交通体系及び施設整備の推進
大量かつ多様な都市交通需要への対応、良好な市街地の形成、都市の適正かつ合理的な土地利用の促進等のためには、都市における総合的な都市交通計画に基づいて街路事業等の施設整備を進めることが必須であり、図2-V-8の調査体系に基づいて調査を実施している。
都市交通の実態を把握するための街路交通情勢調査について、平成12年度は京阪神都市圏等でパーソントリップ調査(
注)等を実施する。
総合都市交通体系調査については、街路交通情勢調査に基づいた都市交通体系のマスタープランの策定(マスタープラン策定調査)を推進するほか、各都市圏の多様な都市交通上の課題に対応した交通計画を策定するため、まちづくり交通計画調査において、交通需要管理施策(TDM)等の社会実験を実施する。
また、特定施設の計画に関する調査として都市モノレール等調査、大都市幹線街路調査、沿道環境計画調査、地域高規格道路調査を実施するとともに、事業実施のための調査として連続立体交差事業調査、居住環境整備街路事業調査、市街地再開発等調査、土地区画整理事業調査を実施する。
ロ 街路等の整備
街路は多様な交通需要に対応するとともに、良好な市街地を形成するための基盤施設であり、道路整備五箇年計画に基づき計画的な整備を実施している。
平成12年度は、事業費7,807億円(国費4,090億円)をもって、都市内道路、地域高規格道路、連続立体交差事業、交通結節点改善事業、都市モノレール等の整備を推進する。また、快適な都市づくりを推進するため、都市再生交通拠点整備事業、先導的都市整備事業、都市防災推進事業を推進する。
今年度は、都市の骨格を形成する主要な放射・環状道路等の整備等に重点をおき、以下の事業において計画的な整備を進める。
1) 都市の骨格の形成・物流効率化に資する主要な放射・環状道路等の整備
地域高規格道路の整備を推進するとともに、都市の主要な放射・環状道路等の整備を、特に空港、港湾、高規格幹線道路のIC、新幹線駅等へのアクセス道路、地域分断を解消する橋梁整備・立体交差等について集中的に整備し、地域経済活性化に即効性のある道路整備を推進する。
2) 都市圏の交通円滑化のための連続立体交差事業等
都市部における道路整備の一環として、鉄道の高架化・地下化を行うことにより多数の踏切を除却し、鉄道に分断された市街地での一体的なまちづくりを促進する連続立体交差事業(新規4ヶ所(東武鉄道野田線(千葉県野田市)、JR信越本線等(新潟県新潟市)、JR片町線・東西線(大阪府大阪市)、阪神電鉄本線(兵庫県西宮市))、継続59ヶ所)を推進する。また、ボトルネック踏切の重点的除却を推進するとともに、老朽橋等の架け替えに併せた鉄道高架化を支援するため、連続立体交差事業の対象を拡充する。
一方、都市内の交通渋滞を緩和し、快適な市民生活と円滑な都市活動を確保するため、「第3次渋滞対策プログラム」及び「都市圏交通円滑化総合計画」に基づく街路事業を推進する。
3) 公共交通機関を支援する道路、新交通システム等の整備
大都市ターミナル駅、地方都市中心駅等乗降客概ね5,000人以上の駅を対象に、駅周辺の歩行者・自転車・自動車交通環境、端末交通から鉄道・軌道への乗り換えの利便性・快適性、高齢者、身体障害者等の円滑な移動の視点で駅周辺総点検を実施する。総点検の結果を踏まえ、乗り継ぎの改善や歩行空間のバリアフリー化等のための「駅周辺交通環境改善計画」を策定し、計画に基づく事業を、交通結節点改善事業、都市再生交通拠点整備事業等を組み合わせて重点的・集中的に実施する。
また、総合的な都市交通対策の一環として、都市モノレール及び新交通システムの整備(8路線、内1路線着工準備)や路面電車の走行できる路面等の整備を推進する。
さらに、鉄道駅や路面電車電停等の軌道駅、バスターミナルなどの交通結節点において、円滑な乗り継ぎや乗り換えを効率的に確保するため、交通結節点改善事業を創設し、駅前広場容量の不足の解消、自由通路整備による鉄道による市街地分断の解消や歩行空間のバリアフリー化を推進する。
4) 都市の再構築と地域の活性化に資する道路整備
道路等の基盤整備の遅れや大規模小売店舗の郊外展開等により、衰退や空洞化が進行している中心市街地の活性化を図り、物流効率化を支援するため、都心環状道路等の道路ネットワークの重点的な整備を推進するとともに連続立体事業等により交通混雑を解消し、中心市街地のアクセスビリティの向上を図る。
また、豊かさを実感できる身近な生活空間の整備に対するニーズの高まりに応えるため、歴史的環境整備地区、居住環境整備地区等において、幹線街路の整備や地区レベルの街路の再整備を面的・体系的に実施する身近なまちづくり支援街路事業を推進するとともに、郷土色豊かな並木の形成、広幅員歩道の整備、電線類の地中化を必要に応じて組み合わせながら都市の顔にふさわしい質の高い街路空間を実現するシンボルロード整備事業を推進する。
情報通信の高度化、都市景観の向上、安全で快適な歩行空間の確保、災害に強いまちづくり、路上工事の縮減による渋滞の減少等を図るため、「新電線類地中化計画」に基づき、電線共同溝等の整備を推進する。さらに、道路の掘り返し防止や地下空間の秩序ある利用を図るとともに、情報通信網、電力線等の都市のライフライン確保に資する収容空間として共同溝の整備を推進する。
地域社会の活性化等を目的とした情報提供ニーズに対応するため、「都市再生交通拠点整備事業」及び「ITS関連施設整備事業」により、都市において道路情報、駐車場情報等を収集・処理・伝達・提供するための情報インフラの整備を推進する。
5) 安全で安心できる市街地形成のための道路整備
安全で安心して生活できる市街地の形成のため、災害時に住民が歩いて安全に広域避難地等に到達することができるよう十分な幅員を有する避難路の整備を推進する。
また、災害時における都市住民の安全を確保するため、住宅密集市街地等で消防自動車の進入できない消防活動困難区域の解消に資する道路整備を推進する。
さらに、兵庫県南部地震で被災した阪神・淡路地域の復興を図り、防災性の高い市街地の形成を図るため、緊急輸送道路や広域迂回路の一部を形成する幹線道路等を整備する。
6) 豊かな住生活実現のための道路整備
住宅・宅地の供給の促進と良好な市街地の計画的整備を推進する住宅・宅地開発の関連街路の整備を推進する。
また、歩行者・自転車交通の安全と良好な都市環境の形成を図るため、歩行者専用道等の整備を推進する。
豪雪地帯の都市においては、積雪堆雪に配慮した体系的な市街地内道路整備を行うとともに、消融雪施設、流雪溝等の整備を行うスノートピア道路事業(11都市)を推進する。
さらに、幹線道路の沿道において、自動車交通に起因する騒音、振動等から沿道環境を保全するとともに、良好な都市環境の形成を図るため、環境施設帯・遮音壁の整備、緩衝建築物に対する助成、植樹帯の設置等の道路沿道環境対策を推進する。
地元住民の現地残留希望が強い地区においては、沿道市街地の機能保全・更新等を図りつつ、幹線街路の整備を図るため、沿道区画整理型街路事業(26地区)、沿道再開発型街路事業(1地区)を推進するとともに、沿道地権者との合意形成により、土地の有効・高度利用を図りながら経済的な街路整備を図る沿道市街地整備促進街路事業を推進する。
また、これらの事業を行うことが困難な地区で、一部の地権者に残留希望や代替地希望があり直買方式で行うことが難しい場合には、敷地レベルの区画整理手法を活用した沿道整備街路事業(1地区)を導入していく。
7) 都市に活力をもたらす街路整備等
開発利益を吸収し、良好な都市基盤整備を進めるため、NTT株式売払収入を活用した収益回収型公共事業(NTT-A型事業)により、街路、歩行者専用道、連続立体交差事業を推進する。
また、先導的都市整備事業として、ごみの集積・収集による都市環境への悪影響の防止やごみ収集の効率化を図るため、道路下に敷設する管路によりごみ輸送を行う都市廃棄物処理新システムの整備を行い、さらに、大都市における既成市街地の都市環境の改善と、未利用エネルギーの活用を図り、熱エネルギー利用を効率化するため都市熱源ネットワーク整備を行う。
既成市街地における防災上危険な密集市街地等においては、重点的かつ緊急に安全性の向上等を図り、安全で安心なまちづくりを効果的に推進するため、都市防災推進事業の一環として、地方公共団体等による道路等地区公共施設の整備を推進する。
ハ 都市高速道路の整備
首都高速道路・阪神高速道路は、首都圏及び京阪神圏において自動車専用道路網を構成して交通の円滑化を図り、もって都市機能の維持・増進に資することを目的として、その整備が進められている。
現在、首都圏及び京阪神圏においては、特に、環状道路網やバイパスの整備が遅れていることから、都心を通過する交通が中心部に集中し、慢性的な渋滞を引き起こしている。このため、渋滞を抜本的に解消するための効率的なネットワークの整備を促進するとともに、短期的な対策として出口の増設、本線の部分拡幅等改良工事を実施する。また、防災安全対策や沿道の生活環境の保全のための環境対策、情報提供施設整備及びETC導入等の事業を進めるとともに、維持・管理体制を強化し、道路施設の安全性の一層の向上に努める。
首都高速道路については、平成11年度は2,808億円をもって事業を推進し、平成11年7月には湾岸線(5期)の一部区間を開通させた。平成11年度末現在の供用延長は、263.4kmである。平成12年度は、2,872億円をもって引き続き中央環状新宿線他9路線の事業等の推進を図る。
阪神高速道路については、平成11年度は、1,685億円をもって事業を進めており、平成12年度には、1,741億円をもって、平成11年度に新たに基本計画指示を行った京都高速道路(油小路線)の他14路線の事業等を推進する。平成12年度末現在の供用延長は、221.2kmである。
ニ 駐車場の整備
駐車場の絶対的不足・違法路上駐車の蔓延は、交通渋滞の激化や交通事故の増大、さらに、都市における中心商業市街地の活力低下等を招いており、駐車場整備の促進が急務となっている。そこで、総合的かつ計画的な駐車場整備を促進するため、市町村による駐車施設整備に関する基本計画の策定、駐車場整備地区の都市計画決定、駐車場法に基づく駐車場整備計画の策定及び地方公共団体による附置義務条例の制定を指導・促進するとともに、補助、融資、税制面での特例措置等により駐車場の整備を積極的に推進するため、以下のような施策を展開する。
1) 駐車場整備に関する基本計画策定の推進
都市計画行政の観点から、総合的な駐車対策及び駐車施設の計画的な整備促進を図るため、市町村における駐車対策の基本方針等を内容とする「駐車施設整備に関する基本計画」の策定を推進する。
2) 駐車場整備計画策定の促進
駐車場整備地区は平成11年3月末現在、全国127都市において指定されており、これらの都市においては早急に駐車場整備計画の策定を推進する。
3) 駐車場附置義務条例の制定促進
平成11年3月末現在の附置義務条例制定都市数は、全国で196都市であるが、近年の荷さばき駐車問題の深刻化を背景として、全国17都市で荷さばき駐車施設の附置義務条例化が図られており、今後とも駐車場附置義務条例の策定を推進する。
4) 特定交通安全施設等整備事業による駐車場整備
路上駐車が多いため、交通機能の阻害が著しく、その原因である駐車場不足に緊急に対応すべき道路においては、地方公共団体等の道路管理者が特定交通安全施設等整備事業により公共駐車場の整備を実施する。
5) 民間等の共同駐車場の整備促進
大都市ターミナル駅などにおいて、都市施設や土地利用の再編による都市再生を推進するため、都市再生交通拠点整備事業を創設し、駐車場整備を推進する。また市街地再開発事業等面的整備事業における駐車場整備の促進を図る。
6) 駐車場の有効利用
駐車場の満空表示を行うことで、駐車場の効率的な運用を図り円滑な道路交通を確保するため、従来より駐車場案内システムの整備(平成12年度は17都市で整備中)を図ってきた。さらに、銀行や官公庁施設等の専用駐車場の一般開放を含む駐車場の統合運用により駐車場の有効利用を促進する駐車場有効利用システムの整備を推進する。
7) 駐車場整備に対する融資事業
都市計画駐車場等の整備については、有料道路融資事業、NTT-C型等の無利子融資、民間が行う駐車場整備については、民間都市開発推進機構、道路開発資金、日本政策投資銀行等からの低利子融資により整備を促進する。
8) 駐車場整備を促進する税制の特例措置
民間による駐車場整備を促進するため、所得税、法人税、不動産取得税及び固定資産税等の特例措置を講じているところである。
(注)パーソントリップ調査とは交通の主体である人(パーソン)に着目し、発着地、移動の目的、手段、移動した時間帯等について調査日1日のすべての動きを把握する調査である。この調査の結果に基づき、交通の現況分析、将来予測を行い、都市交通体系のマスタープランを策定する。