(10)地域の活性化等に資する住宅施策

 多軸型国土構造の形成を図るためには、住まいそのものが地方定住の牽引力となるようなゆとりと魅力をもった居住空間を形成することが必要である。
 住宅は、地域社会を形成する重要な要素であり、その内容は、気候・風土、文化、歴史、産業など地域の特性・生活習慣の違いにより多岐にわたっている。また、住宅は、まちなみを構成する主要な要素であり、固有の環境に適合した住まいづくりは、魅力ある住環境の形成につながる。また、地域の発意と創意に基づき地域の「自主性」「多様性」を尊重した地域に根ざした住宅政策を展開することにより地域の活性化を図っていくことが求められている。
 このため、地域特性に応じた住宅整備を図るための住宅対策の目標等基本的事項と、地域特性に応じた具体的施策の展開方針等の個別的事項からなる地方公共団体による住宅マスタープランの策定を推進するとともに、住宅マスタープランに基づく住宅・住宅団地の整備を推進する。
 さらに、地域特性に応じた住宅・住環境の整備を進めるため木造公営住宅等の供給促進を図るとともに、平成11年度において複数の市町村等が広域的な連携のもと明確なテーマを定め、5年間を視野において策定する「地域戦略プラン」に位置付けられた事業の推進を図る。
イ 住宅マスタープランの策定
 住宅マスタープランの策定に当たっては、大都市地域における住宅供給促進に関する事項、地方定住促進に資する住宅供給に係る事項、地域の住文化等に係る住宅供給に係る事項(HOPE計画)、多雪地域に係る住宅供給に係る事項(克雪タウン計画)、高齢者等に係る住宅供給に係る事項(地域高齢者住宅計画)等をその地域特性に応じた具体的施策の展開方針等として個別的事項に位置付け、その推進を図る。
1) HOPE計画
 地域の自然、伝統、文化等を踏まえ、その特性を生かしながら、将来に継承しうる質の高い居住空間の整備、発意と創意による住まいづくりの実施、地域住宅文化や地域住宅生産の育成等にわたった広範囲な住宅政策の展開に取り組むHOPE計画(HOusing with Proper Environment計画)については、昭和58年度から平成11年度までに409市区町村で策定している。
2) 克雪タウン計画と克雪住宅の共同整備
 豪雪地帯において、当該地域における雪の実状を踏まえ、克雪住宅の開発・普及、整備等を通じて、雪に強い住まい・まちづくりを実施する克雪タウン計画については、昭和62年度から平成11年度までに豪雪地帯の36市区町村で策定している。また、沿道住民の屋根雪下ろしによる雪の堆積が主因となって発生する道路交通障害の解消、住民の負担と危険の軽減を解消するための克雪住宅の共同整備を実施している。
3) 地域高齢者住宅計画
 地域における高齢化の進捗状況等を踏まえ、福祉施策と連携を図りつつ、高齢者等にとっても住みやすい住宅・住環境整備を推進する地域高齢者住宅計画については、昭和61年度から平成11年度までに358市区町村で策定している。
ロ 住宅マスタープランに基づく住宅供給の促進
 住宅マスタープランに基づく事業については、地方公共団体等が実施する地域特性に応じた住宅の整備・普及促進等に対する助成のほか、次の支援策を講じることにより促進を図る。
1) 地域優良分譲住宅
 地方公共団体の定める住宅マスタープランに基づき地方住宅供給公社等の分譲住宅を供給する場合に、地方公共団体の助成と住宅金融公庫融資の優遇措置を組み合わせることによって、優良な分譲住宅の供給を促進する。
2) 地域活性化住宅
 地方拠点都市地域等における地域開発等と連携を図りつつ、良質な住宅・住宅団地を整備し、人口の地方定住化を促進するため、住宅マスタープランに基づいて地方住宅供給公社等が行う賃貸住宅、分譲住宅の供給、良好な住環境形成のための広場、緑地等の整備、大都市地域からのUJIターンの促進に資する事業に対し、国及び地方公共団体の補助、住宅金融公庫融資の優遇等を行う。
3) 地方公共団体施策に係る特別割増融資制度等
 地域の気候・風土等に対応した住宅、良好な住環境・景観の整備に資する住宅等で地方公共団体施策に位置付けられたものの供給を促進するため、住宅金融公庫による融資について融資額の加算を行う。また、まちづくり貢献型融資制度、生涯学習のむら住宅団地制度の活用により、良好な居住環境を有する住宅・住宅団地の供給等を促進する。
4) 地域活性化居住基盤総合整備事業
 UJIターン、田園居住等による地方定住、地域交流を促進し、地域活性化の促進とゆとりある豊かな居住の実現に資するため、平成11年度創設の「地域活性化居住基盤総合整備事業」を活用し、定住基盤施設や交流基盤施設の整備等の地域の魅力と特色を備えた住宅、住環境の整備を促進することにより、地域の活性化を促進している。
ハ 地方定住促進のための住宅・住環境整備の推進
 優良田園住宅をはじめ、地方定住、地域間交流、多様な選択可能性の確保による住生活空間の拡大等に資する優良な住宅の建設を促進するため、特定優良賃貸住宅、住宅宅地関連公共施設の整備等を推進するとともに、優良な木造住宅団地(フォレストタウン)の整備や木造公営住宅の供給を積極的に行い、良質な木造住宅・住環境の整備を推進する。
 特に、優良田園住宅については、その整備の推進を図るため、一層の体制整備につとめるとともに、融資、関公制度等の積極的活用を図る。