(11)住宅における環境対策の推進
民生部門で消費されるエネルギーは、全エネルギー消費量の約7分の1を占め、今後とも居住面積の拡大、住宅設備の機能向上など居住水準の向上により大きく需要が伸びるものと思われる。一方、地球規模での環境問題への対応が強く求められており、とりわけ二酸化炭素等の温室効果ガス濃度の上昇に伴う地球温暖化に関しては、平成9年12月に京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」において採択された「京都議定書」で一定の削減目標が設定されており、住宅においても相当の対策が求められると考えられる。このため、住宅においても省エネルギー化の推進により石油、石炭等の化石燃料の使用量の削減に取り組むことは喫緊の課題である。
さらに、我が国の活発な建築活動を背景として増加の傾向にある建設廃棄物問題への対応、また自然環境との調和についても従来以上に積極的に取り組む必要があり、環境共生住宅の普及をはじめとして総合的な環境対策を行っていくこととしている。
イ 住宅の省エネルギー化の推進
1) 施策の概要
住宅の省エネルギー化を推進するため、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネルギー法)」に基づく「建築主の判断基準」及び「設計及び施工の指針」(省エネルギー基準)を昭和55年に策定・公表し、さらに、平成4年2月と平成11年3月には省エネルギー基準を改正し、基準を強化するとともに、住宅金融公庫融資を活用するなど、高い省エネルギー性能を備えた住宅の普及を強力に推進している。
また、平成11年3月の改正においては、年間暖冷房負荷の基準の新設や、蓄熱効果の導入など多様な技術に対応できるよう基準の構成を見直すほか、従来の基準と比較して、暖冷房エネルギー消費量を約20%削減できるよう基準の強化を行った。
2) 助成措置等
住宅の省エネルギー化を推進するための助成措置として、住宅金融公庫により断熱構造化工事、省エネルギー型の暖冷房設備や給湯設備の設置工事等を対象として割増融資を行っている。さらに、平成11年4月より、改正後の省エネルギー基準に適合する住宅について割増融資額の引き上げを行うなど、改正後の基準の普及を促進することとしている。
また、(財)住宅・建築省エネルギー機構では、優良省エネルギー建築技術等認定事業において、住宅に適用するソーラーシステムの認定を行うなど新たな省エネルギー技術の普及のための活動を行っている。
ロ 環境共生住宅の建設の推進
単に、省エネルギーだけでなく、自然・未利用エネルギーの活用、リサイクル等による省資源、自然環境との調和など地域の特性を活かしつつ環境への負荷を低減する住宅として環境共生住宅の普及を推進している。
1) 環境共生住宅市街地モデル事業
周辺環境と調和を保ちつつ住宅市街地全体の省エネルギーを図るため、平成5年度より実施しており、民間事業者、地方公共団体等がモデル的な住宅団地の建設を行う場合に、調査設計費、緑化人工地盤及び屋上緑化、ゴミ処理システム、水有効利用システム、太陽エネルギー活用システム等の整備費を対象として補助を行っている。
2) 環境共生住宅建設推進事業
平成4年度より、市区町村が環境共生住宅建設に関する計画策定を行う場合に補助を行っている。
3) 住宅金融公庫による環境共生住宅割増融資
住宅の省エネルギー化、自然エネルギーの活用を推進するため、住宅金融公庫による環境共生住宅割増融資を行っている。
ハ リサイクル、廃棄物対策の推進
建設副産物対策問題の抜本的解決を図るため、平成3年度より「住宅建設工事に伴い発生する副産物の処理・再利用の安全性に関するガイドライン」の普及を図るとともに、主に廃棄物の焼却に伴い発生するとされるダイオキシン類の問題についても、建築解体廃棄物の適正な処理方法、リサイクル技術の開発・活用等の検討を行っているところである。
ニ 住宅生産活動における環境対策
環境問題への対応は、これからの住宅・建築産業にとって重要な課題である。平成8年には環境マネジメントに関わる様々な規格(ISO 14000シリーズ)のうち、中心となるISO14001が国際規格化され、我が国においても、これらの国際規格と整合性のとれたJIS(JIS Q 14000's)が制定されており、住宅・建築分野においても、これらの国際規格への本格的な取り組みが求められる。そこで平成9年度には学識経験者、関連業界、関係省庁からなる研究会(EMS研究会)において、住宅・建築分野の環境マネジメントシステムの導入に関する検討を行った。
また、(社)住宅生産団体連合会においては、住宅産業分野における環境対策の行動計画(「住宅産業の自主的環境行動計画」)の策定を進め、平成10年6月には同計画が取りまとめられた。
廃棄物対策についても、(社)住宅生産団体連合会において、平成9年3月に「低層住宅建設系廃棄物処理ガイドライン」を策定し、その普及を進めている。
ホ 住宅室内の化学物質対策
近年、住宅の気密性能の向上等を背景に、住宅に使用される内装材等から住宅室内に発散する化学物質によって、人の健康への影響を疑わせる事例が問題化しており、学識経験者、業界団体、関係省庁(建設省、通産省、厚生省、林野庁)等からなる、健康住宅研究会において、住宅の室内空間に発散される化学物質が人の健康に与える影響を低減するための方策について検討を行い、平成10年3月に、住宅の設計・施工ガイドライン及びユーザーズ・マニュアルを策定した。