(2)今後の道路政策の方向性
戦後我が国では、モータリゼーションが飛躍的に進展し、増大する需要に追随する形で道路整備が進められてきたが、これにより、人々の自由度は格段に向上し生活・交流圏の広がり等に大きく寄与してきた。
しかしながら、クルマ社会の成立による問題として、都市部を中心とした慢性的な交通渋滞、依然として年間1万人規模の死者を生じている交通事故、沿道における騒音や大気汚染等の環境問題などの「負の遺産」が顕在化している。
また、現在我が国では、生産年齢人口が減少に転じ、総人口が減少する本格的な少子高齢社会を迎えつつあり、経済・社会の活力の低下が懸念されている。
さらに、地球温暖化、沿道環境問題の深刻化や、自然環境破壊やゴミ問題への取組みなど、環境問題への認識が非常に高まっているほか、携帯電話やインターネットの急速な広まりなど、情報通信技術は飛躍的な進展をみせ、こうした情報分野の進展等により、国境、圏域を超えての人、もの、情報の広域的な交流も活発化している。
また、戦後の高度経済成長期に構築された既存の社会資本ストックが今後次々と更新期を迎えることから、これに対応した計画的な更新・再構築が必要であるほか、制約ある国土のもと効率的な道路空間の利用を通じ国土の有効活用・適正管理を図ることが求められている。
このように、現在は、社会・経済において大きな潮流の転換が生じている。道路政策としても、こうした転換期を的確にとらえ、クルマ中心の発想から脱却し「負の遺産」を早期に解決する政策を展開するとともに、既存の制度・枠組みを適切に見直し、グローバル化するライフスタイルや価値観に対応した、個人・地域の選択の幅を広げる社会装置として、くらし・生き方から見た道路サービスを展開していく必要がある。