(4)道路整備を支える道路特定財源制度、有料道路制度等
イ 着実な整備のための財源確保の必要性
道路特定財源制度は、我が国の立ち後れた道路を緊急かつ計画的に整備するため、昭和28年に「道路整備費の財源等に関する臨時措置法(現在の道路整備緊急措置法)」が制定され、受益者負担・原因者負担の基本理念に基づいて自動車利用者に道路整備費の負担を求めるものとして揮発油税が道路特定財源とされたことに始まる。以後、急増する自動車交通量や多様化する国民からのニーズに対応した道路整備を推進するため、地方道路税、軽油引取税、石油ガス税、自動車取得税、自動車重量税(
注)の創設や税率の引上げにより道路整備財源の充実が図られてきた。平成12年度予算における国及び地方のそれらの税収はそれぞれ34,537億円、23,414億円となっており、総道路投資額の半分近くを担っている。
道路特定財源制度は、道路整備に必要な財源が安定的に確保できるという「安定性」、自動車利用者の誰もが道路整備費を負担するという「公平性」、税負担が道路整備によって税負担者に還元され、その使途と負担の関係が明確であるという「合理性」を有しており、道路整備を推進していく上で非常に重要な役割を有している。
ロ 有料道路制度を活用した道路整備
1) 有料道路制度の意義・役割
わが国における本格的な有料道路制度は、財政上の制約の下で遅れていた道路整備を促進することを目的として、国又は地方公共団体が道路を整備するにあたり財政投融資金等の借入を行い、道路の利用者から料金を徴収してその返済に充てる制度として昭和27年に創設された。
昭和31年には、事業の効率的運営を図るとともに広く民間資金を活用するため日本道路公団が設立されるなど、道路整備特別措置法等による現在の制度の骨格が整えられた。以来、この制度は逐次拡充されながら、国・地方公共団体の少ない負担での幹線道路の早期整備に貢献し、道路特定財源制度と相まって、我が国の道路整備を着実に進展させてきた。
平成12年4月現在、高速自動車国道6,615km、都市高速道路606km、本州四国連絡道路164km、一般有料道路2,122kmの有料道路が供用されており、都道府県道以上の延長の5%を占めている。これらの路線を利用する交通量は1日約1,000万台(平成11年度実績)にのぼり、都道府県道以上における総走行台キロの17%(平成9年センサス)を分担している。
国土の均衡ある発展や地域の活性化等を実現する上で、わが国の道路整備の現状は不十分であり、全国的な高規格幹線道路網の整備や大都市圏等に集中する交通需要への対応等、有料道路制度を活用した幹線道路網の拡充は緊急の課題である。
2) 有料道路制度の活用等による道路整備の推進
有料道路制度を活用した、道路整備の推進に当たっては、各公団等におけるより徹底した建設・管理費の節減とともに、平成12年度は、国費助成の充実、償還期間の延長など公的助成の拡充により、適正な料金水準のもと大都市圏環状道路(首都圏中央連絡自動車道、東海環状自動車道等)の早期整備及び東京湾アクアラインの利用促進を図る。
さらに、利用者サービスの向上の観点から、渋滞区間の拡幅等のほか、環状道路等のネットワーク整備の推進やVICS・図形情報板等情報収集・提供施設を一層拡充する。また、有料道路の料金所において、自動的に料金を支払いノンストップで通過できるETC(ノンストップ自動料金収受システム)について、平成12年4月に東関東自動車道等、千葉地区を中心とする首都圏の主要な料金所でサービスを開始し、平成12年度末までに、全国約580ヶ所に整備を拡大する。
3) 有料道路の今日的課題
今日、経済の低成長、物価の安定化の中で、公共料金に対する国民の関心が高まっているほか、有料道路事業についても、一層の効率化と透明性の向上、利用者ニーズへの適切な対応が強く求められている。
一方で、現在建設中あるいは計画中の有料道路については、いずれも重要な役割を果たすものであるが、地形上の制約や環境への配慮等から、従来にも増して厳しい条件の下での建設となり、多額の事業費を必要とする状況にある。これらの有料道路が既に供用中の道路とともに国民生活、経済活動に果たす重要な役割を考えれば、今日の厳しい財政状況の下で、制度・運用の改善を図りつつ、有料道路制度を活用していくことの意義は、なお大きいものと考えられる。このため、有料道路を取り巻く状況の変化に対応しつつ、国民や利用者の理解を得ながら、適正な負担のもとでの着実な整備と利用者ニーズへの対応を進めることが必要である。なお現在、道路審議会において、今後の幹線道路網の整備・管理のあり方、ETCの導入を踏まえた料金のあり方等について審議中である。
ハ 道路の機能開発と高度利用の促進に資する道路開発資金制度
道路開発資金制度は、道路に関する公共の利益に資する事業への民間活力等の導入を促進することを目的として、昭和60年度に創設された制度である。その内容は、道路整備特別会計を原資とする道路開発資金貸付金(国費)及びこれと原則として同額の民間資金をセットにし、次に掲げる事業に対し、長期かつ低利の貸付けを行うものである。
1)特別措置法に基づく事業
特定民間都市開発参加等事業
2)安全かつ円滑な道路利用を促進する事業
駐車場等整備事業、自転車駐車場整備事業 等
3)うるおいとゆとりのある道づくりに資する事業
オープンスペース等整備事業、道路空間高度利用事業 等
4)道路の整備に係る用地の取得を行う事業
特定大規模道路用地等取得事業、街づくり促進道路整備用地取得事業 等
5)道路に関する高度技術の研究開発を推進する事業
高度道路技術開発事業
平成12年度は、国費と民間資金を合わせた道路開発資金全体で約300億円の貸付けを行うこととしており、特定大規模道路用地等取得事業(高速自動車国道関連用地取得)の拡充を予定している。
(注)自動車重量税は、税収の1/4が自動車重量譲与税として市町村の道路特定財源となっており、税収の残り3/4の8割相当額は税創設の経緯等により、実質的に使途が道路に特定されている。